半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

Any Key… どこまで?

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立ち止まって考えよう。東京ビッグサイトのロッカーコーナーから雑踏をながめる

よく「Any Key、すべての調でフレーズとか練習した方がいいよ」とか言われます。
でも、本当に使います?
そんなに沢山の調、どうせ使わないじゃん?という意見もあります。
実際のところどうなんでしょう?

はい、結論からいいますと、

  • マチュアジャズマンであれば、曲として出てくる調は多くはない。
  • しかしすべての調を同様に扱えるのがやっぱり理想。なぜなら相対音感の完成に繋がるから。
  • Short Lickをすべての調で練習する作業は絶対に損しないし、結構即効性がある。

マチュアジャズマンの使うキーは限られる

とくに管楽器に関しては、Jazzというジャンルに限ると、曲のキー(調性)はかなり偏っています。

私もアマチュアジャズマン30年くらいやってますけど、曲のキーは G, C, F, Bb, Eb, Ab, Dbがせいぜい。
DやGbの曲とかもあるけど、これはまあアマチュアの多くは、逃げます。
歌伴でボーカルが持ってきた譜面で、こんなキーだったらうげげっとなりますが、リズムセクションは逃げられない。
あと、フロント楽器であっても、プロも逃げられないとは思います。

他のジャンルの曲だと EとかAとか、F#とか(当然それのマイナーも)でてきますよね。

* * *

 あくまでその観点でみれば、Any Keyで練習する意味はない、といっても良さそうです。
逃げてもいい。
色々なところでセッションみてても、やっぱ逃げてる。
そこは安心してください。
みんなスラスラ演奏できてるわけじゃない。

ただ、結論としては、Any Keyの練習は必要です。
ギターはともかく、サックス・トランペット・トロンボーンで、フレーズをすべての調でやる練習はかーーなり大変です。
でもやる価値はあるとは思います。
だからこそ。

すべての調を同様に扱えるのが理想。

以前、「音感のトラブルシューティング」という稿を書きました。
jazz-zammai.hatenablog.jp

ここで、カラオケで音程を変えたりして、ついていけない人。
歌ではそれはできるけど、楽器ではできない人。
実は僕もそうだったんですが、そういう人は、ちょっと相対音感が弱い、ということになります。

こういう人は、音感が弱い部分を補わなくちゃいけない。
 そういう訓練を伸ばす練習って、実はAny Keyの練習が一番近道なんですよね。

 ある特定の曲のテーマを、特定の調で吹く。
 可能であれば、半音ずつ上げ下げしてみてください。
 ちょうど、カラオケのキーコントローラーで変えるように。
 で、実はこれは結構難しいんです。
半音だと、例えば Fだったら EとかF#とかだし、CでもDbとかBとか、キツいところにいきなり行くんで。
だから、最初は4度進行で上げ下げしてもかまいません。
 Fのキーだったら、Bb→Eb→Abみたいにしてゆく。最初はこっちの方がいいよね。

 曲は、セントトーマスとか、マックザナイフとか枯葉とか、調性からメロディーがあまり外れない曲がオススメです。
 ブルースもいいですね。My Little Suede Shoesもいいです。Danny Boy…最高じゃないですか。
 そういう曲ね。

 慣れていけば、AABAでBメロで転調する曲とか、歌ものとか(実は歌ものはAメロのどあたまが意外に難しい。よくあるスタンダードだからといってAll of Meから始めたら、結構泣きます)そういうものにも手を伸ばして、最終的には、Jazz Originalといわれる、旋律そのものも複雑な曲を手がけてみればいいでしょう。Confirmationとか、Billies Bounceとか。もっといえばOrnithologyとか、Donna Leeとか。

 最初はかなり苦労する、というか苦痛でさえあります。
 これは、いままで使った筋肉を使っていないトレーニングなので、仕方がありません。
 最初は泣き泣き(「でけへん…!」)と思いながらやることになるでしょう。
 しかし出来ないなりに1ヶ月くらいみっちりやったら、じわっと出来てくる。

 君からみて、音楽の才能めちゃめちゃある(僕はないのに!)先輩や同級生、小さいころからピアノ触ってて音感あって、どんな曲でもすぐ演奏しちゃえるし、転調も自然にできちゃいますよーみたいな人、との差が少しだけ埋まります。

 そう、これは天才のための特訓ではなくて、クリリンの特訓なんです。

* * *

 最初が一番しんどいです。
 でも、もし枯葉を(別にSt.Thomasでもいいけど)Any Keyで、12通りのキーで演奏できるようになったら、その次の曲はその1/3くらいの労力でできます。その次の曲はもっと労力が少なくできる。そうすると、結構自信が付いてくると思いますよ。

 たとえ本番で使わなくても、相対音感を身に着けるために、Any Keyの練習はかなり役に立つ、と思ってください。

曲の中で、調性をはずれたコードは、かなり出てくる。

以前に、「コードの理解」という項で述べました。
jazz-zammai.hatenablog.jp
バップといわれるスタイルでは、曲のキー(調性)はさておいて、コードの移り変わりを瞬間的に転調しているとみなしてコード進行を増している、というか盛っているというか、そうやって複雑化しています。
必然的に、曲の主調以外のキーの2-5は沢山でてくることになる。その2-5では、瞬間的に転調した音階を吹く、と考えればいい。

例えば、よくあるスタンダード "Just Friends"でしたら、
F, Ab (Bbm7-Eb7) , Gb(Abm7-Db7), Dm(Em7-5 A7) , Gm(Am7-5 D7), C(Dm G7)のツーファイブがでてきます。
"It Could Happen To You"でしたら、Eb (Fm7 Bb7), Fm (Gm7-5 C7), Cm (Dm7-5 G7), Bb (Cm7 F7), Gb(Abm7 Db7)がでてくる。

 重複する部分もありますが、これだけでC, F, Bb, Eb, Ab, Gb, Dm Gm Cm Fm、のツーファイブがでてきます。
 たった二曲でこれだけ多くの II-Vがでてくるわけです。

オルタード、もしくはアウトサイド:

 上記に述べた通り、リードシートに書いてあるコード進行に限っても様々な調性がでてきました。
 でも、これは、初級から中級での話です。

 もう少しアドリブを楽しむ場合、リードシートに書かれた譜面から少し離れたアプローチが有効です。

 例えば、オルタードスケールを用いたフレーズ。
 僕はどちらかというと代理コードによるリハモに基づいてLydian 7th のフレーズを吹くと考えますが、根本的には同じことです。

例えば、
Dm7- G7 - Cという II-Vを代理コードでリハモすると、
Dm7- Db7 - C になります。この場合、Db7の部分は DbのLydian 7th scaleとなりますが、もうちょっとわかりやすく言うと Gbのドレミファソラシド(厳密にいうとGbのドレミファ…のド=GbだけがG=ド#に変化したスケール:G Ab Bb B Db Eb F)を使います。
 まあ、Gbのドレミファソラシドが基調になる。

それから、例えば、Dm-G7-Cの時に、半音上の ii-vをかぶせる形のフレージングなどもあります。
Dm7- Ebm7- Ab7 - G7 -C みたいなコード進行。この場合、間に Dbのトーナリティーでフレーズをとることになる。

コンテンポラリーっぽいソロフレージングには、こういう半音上とか、半音下(下はあんまりないけど)のアプローチが結構でてきます。
コンテンポラリーの調性から離れたソロには、

  • 元の調性から離れた別の調性のフレーズを使う
  • もともと調性感の希薄なスケール(Con.Dimとか、Whole Toneとか)を使う

というふた通りのアプローチがあるわけですが、調性からかなり離れた全音階が自由に出せれば、ソロの幅が広がる。

アウトサイドに逃げるために、すべてのペンタトニックは入念に練習しておくべき

 前項と同じようなことです。
 Brecker Brothersがもっともイメージしやすいですが、拍単位で細かく調性を変えるようなフレージングもあります。
 こういう場合には、トライアド、もしくはそれを拡張したペンタトニックフレーズをインテンポで繰り出さなければいけない。
 こういうことをするのに、すべてのキーでのフレーズ練習は必須になります。

まとめ

  • 曲のメロディーの相対度数などを理解するためにも、すべての調性でメロディーを吹く練習は有効。
  • ジャズでは本質的に曲中で転調を繰り返してフレージングを行うため、すべての調でフレーズの練習をすることも、やはり大変有効。この場合は、転調に対応するために、例えばメトロノームを鳴らして、インテンポで転調する練習をしないと、役にたちません。

ジャズ検定クイズ!

drive.google.com

告知していた、Ad-libの Workshopは無事に閉会いたしました。
関係各位のみなさま、ありがとうございました。

一応「初心者向け」と銘打って開催したわけですけれども初心者の方々が集まりそうにありませんでした。
自分の人徳のなさです。結果的には色々な方々が集まる会になりました。

せっかく来てくれた中級者〜廃人の人が退屈するのもなあ…と思い、
「ジャズ中級者以上向けクイズ!福山ジャズ検定!」を同時開催。

少し問題を手直しして、ここに公開してみます。
題して、「第一回!福山ジャズ検定!」
計100点です。絶対に100点をとらさないように頑張って作ったんですが、
廃人の人はたやすく超えられると思う。でも、リスナーだけでは答えられないようになっている。
プレイヤー・リスナーのバランスの取れた人が高得点をあげやすい仕組みになっています。

告知『夏休み緊急企画! "Endemic for Jazz" Adlib Workshop 〜アドリブはじめました』

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【日時】8月4日 18:00 Open 18:30~
【場所】Grand Soul Cafe Guns'
【住所】〒720-0042 広島県 福山市御船町1-13-10
【Tel】084-927-0071
【詳細】
夏休み特別企画!
はいどうも。「半熟ドクター」の中の人です。「備後(福山・尾道)のジャムセッション情報」の中の人でもあります。
twitter.com

Endemic for Jazz Workshopではアドリブのワークショップをやっています。
実は2019年1月より月一回、我が家で4〜5人あつまってああでもないこうでもないと試行錯誤しています。
今回は、公開講座を開催してみます。

  • 楽器が吹ける方(基本的にはフロント楽器:トランペット・トロンボーン・サックスフルートクラリネットなど を想定しています)
  • ジャズのアドリブをやってみたいけどやり方がわからない、という方
  • ポップスの間奏とかにでてくるアドリブに興味のある方
  • ソロをアドリブで吹いてみたい方、ソロ演奏に興味のある方
  • ジャズのアドリブ演奏のありようを知りたい方

です!
ファシリテーターとして、
Emdemic for Jazzのトロンボーン担当の辰川、
Black Ivory Orchestraのリーダー、Frogs、Abstractでも活躍中の槇井、
備後地区を代表とするピアニスト占部、
を中心に、この地で活躍しているソリストにもご協力いただき、わかりやすく楽しくをモットーに、やってみたいと思います。

あくまで「ワークショップ」であり、ライブではありません。(デモンストレーションの演奏とか、演奏の参加はもちろんあります)
チケットは 大人2000円、学生1500円。
事前参加登録をすると 500引とします。
事前参加については、
drive.google.com
このGoogle Formのアンケートにご回答ください。

アレンジ、というほどでもない初歩のアレンジ法

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ジャズ研の二年生です。サックスをやっています。
入部して一年間は、セッションで演奏したり、お手本になるような歴史的名盤の演奏をそのまま演奏してみたりしています。
しかし、それって、極めてジャズ的ではないですよね。
自分なりにやってみたい。だからアレンジに興味があります。
どうしたらいいでしょうか?

はい、質問を仮想してみました。

最初は、精一杯ですよね。
とりあえずジャズの世界に入り、破綻なく演奏することが目標になる。
ですが、それができるようになると、やがて、自分なりのサウンドを考えてみたくなる。
これは正常な進化です。

守破離でいえば、「守」の段階を超えて、次にいくということでしょうか。

アレンジ:

ある曲の属性として(メロディーを除けば)

  • テンポ・拍子
  • 調(メジャーか、マイナーか)
  • リズムのスタイル(4 beatか、ボサノバか、スウィングか、ラテンか)
  • 編成
  • コード進行
  • サウンドフィギュア(コードに対するパターン)
  • サイズ

があります*1

結論からいいます。
アレンジとは、上述したサウンドの属性を、別のものに変えることです。
アレンジの中には、編成がオリジナルと違うので、仕方なく編成を変える、みたいな消極的なものもありますが、
曲の雰囲気を大胆に変えて、演奏そのものにオリジナリティを持たせる積極的なものもあります。

いくつかの要素をいじれば演奏は大きくかわります。

フロント楽器は、原則としてテーマのメロディーとアドリブの部分しか担当しません。
それ以外のサウンドの要素については、所与のものの上に乗っかって吹くわけです。*2
バンドを組んだりすると「どんなサウンドにする?」という相談を受けて、そういえばそういうこと全く考えたことなかったな、と思い当たる。これはフロント楽器あるあるなんですよ。

もちろん、セッションでもそれ以外のサウンドに注意を払うことは大切です。
その辺は初心者から中級者への第一歩だと思いますね。

テンポ・拍子を変える:

劇速な曲、もしくはスローな曲を、その逆にしてみましょう。

「この曲はこの速さ」という固定概念を、一旦とりさってみる。
ありとあらゆるパターンを検討してみてください。

もちろん、実際それで満足のいく結果になるわけではありません。
オリジナルよりいいテンポ、というのは滅多にないですが、中には意外なおもしろさが産まれることもあります。

* * *

拍子を変えることも、それなりに有効です。
4拍子を3拍子、もしくは 6/8に変える、もしくは3拍子を4拍子に変える。
さらに変拍子、5拍子とか 7拍子に変えるというのは、プロの作品でもしばしばみられる手法です。
誰もがワルツでやると思っているような曲を、別の拍子に変えたり、ベタな4Beatの曲も、変拍子にもっていくと、途端にスリリングになります。
この辺りの変化は、ジャムセッションでも、やろうと思えばできるものです。

調を変える

長調短調の調性そのものを変えてしまうと、別の曲になってしまいます。
したがって大事な曲の属性ではありますが、アレンジという範疇からはみだしてしまいかねません。
コード進行のリハモの一環として、トニックの Imaj 7をVImに変える、くらいはポップスでもしばしばみられます。
あと、トーナリティーが変わらない部分については、そのまま長短を変化させることも不可能ではありません。
自分のバンドで、Charlie Parkerの”My Little Suede Shoes”のAメロの部分のベースリフを"A Night in Tunisia" にして演奏したことがあります。
Cm Db7 Cm Db7 みたいなやつですね。全然雰囲気もかわりますよ。

ズムスタイルの変更

これも、アレンジの王道ですね。Bossa Nova、ラテン、スウィングなどの基本的なバリエーションを全く別のものにする。
それだけで新鮮に聞こえたりします。
新しい曲を古いスタイルで、古い曲を新しいスタイルにしたりすると、新鮮ですよ。
メロディーの歌い方が、少し変わることは注意してください。しっくりこない場合、調整する必要があります。
例えば、裏拍のシンコペーションを多用するボサノバでは、メロディーも少しそういう雰囲気に合わせた方がいいこともあります。
ラテンに関しては、2-3か3-2かを想定して、アクセントの位置を付け直す必要があったりします。

編成の変更:

主旋律をを変えるだけでも結構かわります。
私はトロンボーンですから、市販の音源にトロンボーンがメロをとっているものは少ないですから、トロンボーンでテーマをとるだけで、何らかのアレンジ然としてくるのは面白いです。
こういうのは名盤・名テイクなど、固定概念がある曲は、そのイメージを壊していく風に持っていく。
サックスの人の演奏であれば、テーマをピアノ・ベースとかにしてみるとか。
アノトリオの演奏で知られているようなものであれば、三管編成でぶ厚く攻めてみるとか。

これも大きいものを小さく、小さいものを大きく、と考えると変化をつけやすいです。

リズムセクションを変えるのももちろんいいと思います。
ドラムレス、ベースレスにするとか、ピアノのバッキングをギターにするとか。

コード進行を変える

いわゆるリハモ、リハーモナイゼーション(Reharmonization)ですね。
僕はこれかなり好きだし、アレンジの王道だとは思いますが、これはまた別に言及しましょう。

サウンドフィギュアを変える

基本的にフロント楽器の立場では、ジャズのサウンドフィギュアって重視しませんね。
バッキングはコード楽器に「お任せ」になってしまうことが多い。
自分のソロの間も、他人のソロの間も突っ立っているだけだし。

ただ、現代多様な音楽があります。
主旋律以外の人が何をしているか、バンド演奏において、ギターが、キーボードが何をしているか。
他のジャンルであれば、そこが、サウンドの「色」を決める大きな要素になってくる。

もちろん一般的なコンボジャズで、そこまで凝るのも少ないかもしれませんが、

  • フロント楽器が複数いるような場合、白玉系のバッキングにときに参加する
  • カウンターメロディーを、ソロでも必ず決まった場所に入れる
  • バッキングのパターンをいくつか決めておき、場所によって使い分けをする

などは、検討してもいいかもしれません。
例えば、ギターとピアノが両方いるような場合、サウンドの選択肢はかなりたくさんある*3

サイズを変える

たとえばテーマコーラスとソロの合間に Vampと呼ばれる間奏を入れ込むパターンなどはよくありますよね。
あとはセカンドリフ。
ビッグバンドでいうようなTuttiのようなやつ。
 こういったものを少し入れると、「アレンジしてます」感はでますね。

まとめ

ジャズは基本的には自由でオリジナリティを尊重する音楽です。
「この演奏がこの曲では絶対的にかっこいいんだ。だから、それをマネする」
 というような、名演の固定概念に囚われた演奏を目指すべきじゃない。

自分たちで曲のパラメーターを決めていいんです。
ま、いわゆるStandardと言われている曲の演奏は、もともとそうですしね。

上述した「テンポ」「拍子」「リズムスタイル」「編成」の変更などはジャムセッションなどでも試すことはできます。
もちろん、プレイヤーの実力も推し量りながら、妥当な変更である必要はあります。
速いテンポ、変拍子などは、できないのに無理にやると崩壊しますし。
そして、フロント楽器は上に乗っかるだけなので、フロント楽器が難しいアレンジをゴリ押しした結果崩壊すると、
リズムセクションの人たちは腹が立ちます。
汗をかかない人が無理難題をいうことはフェアではありません。
気をつけましょう。

僕、よくやるのは、

  • "Four"をスローなボサノバで演奏する
  • 「酒バラ」を6/8で演奏する

とかです。これくらいだったらセッションでもできます。

バラードの曲を、イマドキのポップスっぽいレゲエかAOR風のサウンド、というのもまあベタな手です。

アレンジしようという気の持ちよう

いざ、自分でサウンドを作ろうとしても、最初はうまくいきません。
特にフロント楽器であれば、はじめは自分のやっている領域の部分にしか注意は向けられていないものですしね。
アレンジをしよう、という意識をもって、初めて、全体のサウンドに意識をむけることができます。

そういう意識を持てば、音楽の聴き方もかわります。
「この曲はどうなっているんだろう」「自分だったらどうするだろう」という問題意識をもって曲を聴けば、
なんとなく聴いていた曲の細部にまで意識を向けることができるかもしれない。

そうすると、今まで聴いてきたすべての楽曲は、新鮮な存在に一変します。
聴きなれたJ-Popだって……いやポップスこそ、そういう創意工夫と時代性に満ち溢れているんです。
ポップスは、アレンジの玉手箱です。

* * *

私は昔から結構な本読みでしたが、文章を書いてWebに載せるようになったのは、2000年からです。
自分で文章を書くようになって、書き手の立ち位置としての視点を持つようになると、
書き手ならではの視点で、テキストの意味が一変しました。
今まで読んでいた本をもう一度読み返してみても、新たな気づきが得られ、世界が塗り変わった様な感さえありました。

アレンジをしよう、という意識を持つと、聴き方もかわります。
そういう聴き方をできれば、
フロント楽器でソロをとるだけのときでさえ、サウンドへの加わり方は変わってくると思います。

最後に、

  • 極端にいじるパラメーターは一つか二つまで(沢山の要素を極端に動かすと、コンセプトだおれになりやすい)
  • 曲と曲の順番(セットリスト)にも気をつけて(同じ様な要素のものが続くと、飽きやすい)

といっておきます。

*1:ほんとはもう少し気を使うところはありますが、まあこのへんで。

*2:リズム楽器はもう少し全体のサウンドに意識をむける必要が初期段階からありますから、そういう感覚が培われやすい

*3:逆にギターとピアノが両方いて、考えなしに演奏していると、ぶつかってしょうがない

「シットイン」と「ジャムセッション」の違いとは?

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ジャムセッションの一風景

ジャムセッションとシットインはどう違うんですか?
もしくは普通のライブとジャムセッションとの違いはなんでしょうか?

語義の定義:

ライブにおいて、本来の予定にない演奏者が参加したり、本来予定しなかった曲を演奏したりということは、しばしばあります。*1

ジャズではこういうことがとても多いのですが、それは

  1. 即興性を重んじる音楽であるため*2
  2. ミュージシャンと聴衆との距離感が近い
  3. もともと酒場のBGM演奏としての出自のため、演奏の(というか、セットリストの)価値が相対的に低い

ためかと思います。

あらかじめ決められていない、この偶然性に富んだ演奏形態を「ジャムセッション」「セッション」と称します。

ジャムセッション」の歴史は、ジャズの歴史と同じくらい古いものです。
20世紀前半、ジャズは「クラブミュージック」としていわゆるBGM演奏の役を担っていました。
そういう店では、プロのミュージシャンが聴衆に向けて演奏する通常のステージが終わった後、ミュージシャンが集まって仲間うちで、ソロの腕を披露しあっていました。
時には深夜から明け方までそういったジャムセッションが行われていたそうで、そうしたなかからBe-Bopなどの新しい音楽が生み出されてきた歴史があります。*3

* * *

その場でメンバーと曲を決めて演奏すれば、それはジャムセッションとなります。
だから「ジャムセッション」という言葉には、多種多様な演奏やライブの形態が含まれると思ってください。

ライブの形態としての「ジャムセッション

ジャムセッションを主体とした参加型ライブ。
このライブそのものも「ジャムセッション」と呼称されることが多いですね。

多くの場合、ホストミュージシャンが前もって用意されています。*4
参加者は、演奏者であったり観客であったりします。演奏を希望するものはホストミュージシャンと相談し、編成を決め、曲を決めて、その場で演奏を行います。それの繰り返しでライブは進行します。

参加者がほとんど演奏者を兼ねている場合もありますし*5、演奏で参加される人は一握りで、聴衆としてくる人も一定数いるようなセッションもあります*6
参加者がほぼプロレベルのようなセッションもあるし、初心者や中級者が中心のセッションもあります。混在したセッションもあります。*7
また、がっちりと司会が曲ごとに参加者を決めて進行する(参加者同士で相談して曲を決める)形もありますし*8、先に曲を決めて、そこに参加したい人がわらわらと参加するようなタイプもあります。*9

もう少し細かいことをいうと、演奏に参加する人は料金が高いようなセッションもあるし、聴き手・演奏者の料金がかわらないセッションもあります。
また、ジャムセッションの最初と(時には最後も)ホストミュージシャンだけで演奏する、というのも結構あります。*10

「シットイン」とは

このように、そもそもジャムセッションに参加して楽しむ前提のライブは「ジャムセッション」という呼称で宣伝されます。
ただ、ジャムセッションの成立する過程として「シットイン」という形態もあることは知っておいてください。

これは「飛び入り演奏」とでもいうべきものです。
通常行われるライブに、出演者の友人のミュージシャンが観に来ていたりして、ついでに参加して数曲共演したりするような場合です。シットインは、ミュージシャンの友情によって許可される形態であって、オープンな参加というのはあまりありません。
だから、一般的にライブフライヤーに「シットイン」という言葉が表示され、宣伝されることは(少なくとも2019年の時点では)ありません。
そういう経緯ですから、ミュージシャンの参加も一人か二人に止まることが多いですね。

シットインは、あくまでホストから「招かれて」参加するものです。
また、訪れるミュージシャンの特性や、セットリストの相性が悪い場合、もしくはホストミュージシャンのメンタルや体調もろもろの関係で、来られたミュージシャンにあえて声かけをしない、という場合もありうる、ということです。
あくまでホストにイニシアチブがある。

* * *
「シットイン」をもう少しオープンにしたようなものもあります。
基本は「シットイン」に近い参加なのだけれども、もう少し積極的にプレイヤーの参加(そして集客)をうながしたい時もあります。
「※セッションあり」
 みたいに書いてあるライブがそうです。

ジャムセッションとシットインの折衷案のような形態になっているものがあります。
1部はバンドで演奏、2部はセッションとか、そこまで明確にわかれていなくても
後半30%くらいはジャムセッションの形になることが多い。

フライヤーやライブスケジュールに「※セッション」あり、と書かれている場合は、原則来店する演奏希望のプレイヤーに全く参加してもらわない、というわけにはいきますまい。
ただ、この形態の場合は、参加の権利だけは認められますが、選曲や形態などの裁量権のかなりの部分はホストにイニシアチブがあると思います。
それに多くの曲に参加することは期待してはいけません。
あくまで「ライブ」の演奏が主体で、セッションはおまけです。*11

ジャムセッション」「シットイン」違い:

ジャムセッション」と「シットイン」二つの違いがわかったでしょうか?
ジャムセッションを行う、という意味では共通な部分も多いのは事実です。

違いは、

  • ホストバンドの形態を、どこまで崩していくか、という点では、シットインの方が元のホストバンドから大きく崩れない。
  • シットインでは、すべての曲で飛び入りのミュージシャンが弾くことは少ない(ないこともないのですが…)
  • シットインの方が、参加のハードルが高い。

などです。理由はすでに述べました。

ただ、最大の違いがあります。
それは、サウンドそのものが、聴衆に向けられているか、プレイヤー同士に向けられているか、
というところではないかと思います。

ジャムセッションの歴史を振り返ると、聴衆への演奏が終わった後のミュージシャン同士の切磋琢磨がルーツです。
したがって、聴きやすさとか、素人に対してのわかりやすさ、という部分はそれほど要求されません。
もちろん、すぐれたセッションは、楽曲の起承転結もしっかりできていたり、ソロの盛り上がりなども含め、聴衆をうならせるに足るものです。
プロはどんな場で演奏するにも、聴衆に向けて演奏をするものですから。
ただ、両立できない状況においては、ジャムセッションではリスナーよりはプレイヤーの都合が優先されがちです。
ジャムセッションとはそういうものです。チャレンジも歓迎されるし、演奏の最終責任が希薄になりがちです。

反対にシットインは、あくまでライブの延長線上にあります。
演奏者が、聴き手に対して演奏責任ることを第一義とした演奏の延長線上です。
したがって、あくまで聴き手が最優先される。演奏の最終責任は明確に演奏者、ひいてはホストにある。
破綻や混沌は好まれません。
要するに、ホストミュージシャンの美意識から外れ、聴衆を不快にさせかねないような演奏をするプレイヤーを、壇上にあげる義理はない、ということです。もちろん、寛容なリスナーはそういう意表を突いたケミストリーとか、ある種のハプニングも包容してくれる人もいます(ジャムセッションが好きなリスナーは、そういう人種でしょう)。ただ、それに常に許される前提で演奏はしてはいけない、ということです。

「シットイン」は基本的には一般に膾炙していない用語です。
ただ、地方のローカルジャズスポットなどでは、裏メニューとしてこの「シットイン」を良しとする文化があります。
筆者の地元で言えば、広島県福山のDuoや、愛媛県松山のグレッチなど、また、地方都市の、ピアノとベースとかでBGM演奏をしているようなユニットはシットインに対してウェルカムなところが多いですね。

  • 地元で、固定したメンバーで繰り返されているライブ、お店のホストミュージシャン、みたいな人がやっているライブ
  • ライブのセットリストも、全曲オリジナル、とかではなくてスタンダード中心
  • ホストが、それなりにキャリアがある、交友関係も広いしライブの出演頻度が高く、レパートリーの豊富なミュージシャン

であれば、シットインが許容されやすいライブであるといえます。

*1:スタンダード中心のBGM演奏であれば、始まる前にセットリストさえないような場合さえある

*2:もちろん、他のジャンルでもまれにお目にかかることはありますから、ジャズの専売特許ではありません

*3:つまりはね、このジャムセッションってやつは、結構尊いんだよ?ということがいいたいわけ。

*4:全くホストミュージシャンが用意されていないものは「オープンマイク」という名前になることが多いようです。この場合、ジャズコンボでよくあるようなカルテット・クインテット編成になることもありますが、ギター弾き語りとかピアノ弾き語りとか、少人数編成が多いと思う。

*5:スタジオセッションなんかはそうですね

*6:最近の高田馬場Introのセッションなどは外国人に認知されていて、リスナーもかなり多いですよね。Introは僕は楽器を出すスペースもないので行きませんが

*7:大都市では店ごとにレベルの棲み分けもありますが、地方ではそんな多様性は望むべくもないのでごちゃまぜです

*8:例えば錦糸町J-Flowとかそうですよね。東京のセッションはこのパターンが多いです

*9:池袋のSomethin Elseなどもどちらかといえば曲先行パターンですね

*10:やりたい盛りのセッション参加者にとってはこの最初の演奏は「加われない演奏」ととらえがちですが、最初ホストの演奏をじっくりきけるのはありがたいことです。ホストのタイム感・リズム感、音楽的なバックグラウンドを知ることは、演奏に馴染むためには必須であると言えます

*11:実際、この手の後半セッションのやつは、ライブをやって暖まったホストミュージシャンに後半から対峙するわけで、スロースターターの人は楽しめないことが多いです。いきなりギアをあげる能力も含めて、中級者以上の遊びと思った方がいいです。

テクニックと美意識

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地元駅北口。2019。
「早いフレーズの吹き方」という項では、早いフレーズの吹き方のコツなどを書きました。
jazz-zammai.hatenablog.jp
速いフレーズを吹くには? その2: - 半熟ドクターのジャズブログ
速いフレーズを吹くには? その3: - 半熟ドクターのジャズブログ
速いフレーズを吹くには? その4: - 半熟ドクターのジャズブログ

ここではトロンボーンのテクニック水準の向上ということを書いてきたわけですけれども、
その一方、テクニックだけつけてスラスラ吹くことが、いい演奏に直結するわけじゃない。
 いやむしろそうすることがよくない結果をうむ場合だってあるわけです。

バリバリと吹いて、速いフレーズ、高い音を見せつけるような演奏は、自己を顕示する意味では非常に有効なわけでありますが*1
しっとりとした部分で、音数を選んだ「清楚」でクールなフレージングを施した演奏も、やはり心地よいものです。

お金の話だと、よくわかりますね。
成金の派手な格好よりも、TPOに合っている清楚でシックな着こなしが心に迫ることもある。
清貧の思想。金閣寺よりも銀閣寺なわけですよ。

フレージングについても、同様のことは言えます。
もちろんTPOはあると思いますけど。

* * *

ライブでよくあるのは、例えば、自分の前のソリストがむちゃくちゃ盛り上げたソロをとった場合。
それを引き継いでソロをとるとき。
これは、自分のソロも、多少熱を入れて「Hotな」ソロをやった方がいいでしょうね。
「イェーイ!!」って盛り上がっている人に対しては、自分の気持ちがそこまでもりあがっていなくても、ある程度「イェーイ!」と返した方がいい。ま、これはある種、宴会のお作法のようなものです。聴衆もそれを求めている。
もちろん、あえて対比をつけて、めちゃクールで緊張感のあるソロ、そう、マイルスのように演奏する手もあります。
が、それは結構難しいです。
受け取られ方としても、技術的にも。
 その場合は、リズムセクションのうちのいくつかを止めて、例えばフロントとベースのみとか、フロントとピアノのみ、とか、そこまで風景を変えるならいいかも。
また、例えばバラードなどで、自分をフィーチャリングしたような局面。ゆったりとソロのスペースが与えられている場合などは、基調は音数をしぼった「Coolな」ソロがむしろカッコいいかなと思ったりします。

足し算より引き算

ソロをとるときに、盛り上がりに応じて足し算をしていくのは、それほど難しいことではありません。
自分のテクニックの限界まで、音量も、フレーズの細かさも、上げていけばいい。*2

だが、テクニックを最大限発揮することとは別に、音数を絞りこんできちんとメロディーメイキングを行うことも大事です。
この過程には美意識が問われるやつです。

フレーズ作りにおいて、どちらかといえば、テクニックは足し算、対して、美意識は引き算とも言えます。

* * *
足し算と引き算のバランスは、なかなか難しいものです。
そういえば、バークリーの講師であるHal Crookの” How to Improvise”の第1章は、「休符の使い方」でした。

HAL CROOK ハウ・トゥ・インプロヴァイズ インプロヴィゼイションへのアプローチ

HAL CROOK ハウ・トゥ・インプロヴァイズ インプロヴィゼイションへのアプローチ

トロンボーンは楽器的に手数を多く出すことは難しい。
 それだけに、手数に引っ張られることもよくあると思うんですよね。
貧しい人に限って、お金にふりまわされる、みたいな感じでしょうか。

その手数・テクニックへの憧憬・囚われから脱却して、次の段階にいけるかどうか。*3

無理に埋めない

一つのヒントとして、これは友人からのアドバイスなのですが、
「アイデアがなかったら吹くのをやめる」という提案があります。
吹けるから吹くというのが一番いけない。

イデアが湧いていなくてもコードや場に合ったフレーズで埋めることが出来てしまう段階。
もちろん、初学者の方はまずはそこに至るまで弾き込まなければいけません。
しかしその段階に至ったら、そうやって、美意識を涵養する練習をとりいれる必要がありそうです。

ソロの構成を想定した練習

また、一つのヒントとして、これはサックスの浜崎航さんから教えていただいたんですが、
ソロの構成を想定して練習するというやり方もあります。

例えば、3コーラスやるとしたら、 ソロの盛り上がりを10段階で表すと、3→5→10といくのが、一般的な形かなあと思います。
しかし、例えばライブで、すべての曲ですべてのソロをこのような構成でやると、金太郎飴みたいに一本調子で、ださい。

なので、いろいろな盛り上がり・盛り下がりのパターンを前もって練習にとりいれてみる。
あえて、 5→10→7とか、最後にピークアウトするパターンとか、やや非定型ですが、10→7→5とか、徐々に盛り下がるパターンとか、そういうのも一度練習してみると、構成力を考える修練になると思います。

要は、その場の感情の発露だけに任せ、虫瞰的にソロをとらえるのではなく、一歩引いて、ソロ全体を俯瞰し、練習でもそれを想定し、構成をコントロールすること。想定して練習すればある程度できるようになります。

もちろん、本番では、他者の演奏の盛り上がりや演奏者同士の相互作用、もしくは聴衆からのフィードバックなど、数々の不確定要素があります。ですから、すべての本番が、事前に決めていた構成通りにいくとは限らないし、またそうあるべきでもないとは思います。
その場で修正する余地は必ず残しておく。
でも、構成を意識して練習した場合と、していない場合では、やはり視点の持ち方は、変わってくるとは思います。

*1:日本では「自己を顕示する」というと、悪い意味に取られがちですが、いい面も当然あります。

*2:もちろん、テクニックを増やすことには、ある種の難しさもあります。ただ、それは真面目にジャズを習得する人にとってはまず達成しやすい部分でもあります

*3:しかし最近の若手トロンボニスト達は、そういう段階を早くに克服して、その先のところを考えていい段階に、早期から至っているのはうらやましいです。うまいもんね、皆んな。

コードの理解 その6:展開と圧縮2

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コードは、比較的フレキシブルであるということをいままで書いてきました。
コードの理解 その1:アベイラブル・ノートスケールの陥穽 - 半熟ドクターのジャズブログ(コード)
コードの理解 その2:圧縮・展開について - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その3:コードを複雑にする理由 - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その4:ドミナント・モーション - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その5:まとめ - 半熟ドクターのジャズブログ

すべての音楽がそうではありませんが、ジャズ、特にドミナント・モーションを基調とするバップのスタイルにおいては、コードを自由自在に展開させたり圧縮させてソロを展開する、というアプローチをとっています。

これを「この小節には、このコード記号が書かれているので、この音を選ぶ」という思考プロセスだけでフレージングを行うと、面白くありません。それでは、スピード感もないし、自由さが生まれないんです。

バップのフレージングは

「はい。このあと自由行動! 3時には集合してください!」

みたいな感じなんです。
制約を受けるのはドミナントの着地点のみ。
正直に言えば、それだけで成立してしまうアプローチ、であるとさえ言えます。

(もちろんバップスタイルにおいてさえも、すべてのフレージングはこれで説明できるわけではない。モードやモーダルインターチェンジではまた違ったアプローチをとります。しかしいずれにしろ、なんらかの展開が行われる、ということは共通していると思います。)

コードの展開・圧縮ふたたび

その2でもちらりと例示しました。
コードの理解 その2:圧縮・展開について - 半熟ドクターのジャズブログjazz-zammai.hatenablog.jp
曲のコード進行の圧縮⇔展開について、もう少し丁寧に記してみることにします。

  • 歌の構造的な基本形(A)
  • 例えばミュージカルの譜面やブルースのコード進行のような、比較的シンプルなコード進行(B)。
  • ジャズで演奏しやすいコード進行に整えた、いわゆるLead Sheetのコード進行(C)。

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簡単なシェーマ。
簡単に図示してみました。
ジャズの演奏では、このLead Sheet(C)を演奏の出発点にします。
しかし、その背後には 基本形(A)、シンプルなコード(B)が伏流として存在している。
それを理解しておく必要があります。

もちろん(A)から(B)、(B)から(C)への展開は、様々なパターンがありうる。

このことが、

「なぜ同じ曲でも、本によってコードが少しずつ違うのか」

という謎に対する答えです。
Lead Sheetとして提示されているコードは絶対的な正解ではない。
原型(A)(B)から、ジャズとして演奏しやすいコード進行(C)にどれだけ展開させているか。
それだけのことです。

* * *

複数のスタンダード・ブックをもっている人は見比べてみてください。
スタンダード曲を本ごとに見比べると、コードの書き方には、細かく違いがあることがわかります。
コードのつけかた、編者の考えとか癖とか美意識が透けてみえて面白いんです(「Real Book」の中には、バイト仕事のような統一感のない手書きの譜面の集積もあります。この場合は統一したコンセプトはやはり見えてこないですよね)
本による違いは、正解・不正解ではないことを知ってください*1
その差異も含めてコードを咀嚼できれば立体的な理解につながると思います。

* * *

アドリブ

さて、テーマが終われば、アドリブソロになります。
アドリブソロでは、このリードシートのコード進行から、さらに展開をさせようという意志をもつことが大事です。
(A)→(B)→(C)、この延長線上で、コード進行を展開させる。

その方向は様々です。
リハーモナイゼーションを行い複雑化する。(これはシェーマの、上むきの矢印、複雑化ですね)7thコードを建て増しして、Dominant Motionを増やす、なんてことはよくありますよね。
逆に、込み入ったコードをほどいてシンプルなコード進行に戻し、それを念頭においてアドリブするのもありです。下むきの矢印の方向性ですね。

それを、どう展開していくかが、自分のソロの個性、自分の文体となります。
そういう展開性なく「コードにあった音を吹く」という状態では、自分の文体を身につけているとはいえない。

ただ、それはリズムセクションとの共同歩調で行わなければいけません。
自分だけで勝手に突っ走ってもいいサウンドになりません。
だから、カラオケのバックトラックのようなことをバッキングに期待してはいけないんです。

自分のアドリブを展開させていけば、すぐれたリズムセクションは、そのLead sheetのコード進行からの乖離を理解してくれます。
理解した上で、追随するか、あえて静観するか、もしくはリズムセクション側からフロントを「誘い」新たな展開へ導くか、など、様々な選択肢を提示してくれます。
これが、ジャズが「会話」とか「Interplay」とかいうゆえんですね。

* * *

仮に、フロントがアドリブを展開させ、コードの複雑化再構成を行い、当初のテーマメロディーから離れたところに到達しても、リズムセクションがそれに全く追随せず、土台の音が反応しなければ、フロントのソロはさらなる展開をしにくいです。気持ち折られるというかね。

逆に、創意工夫あるリズム・セクションのもとで演奏しているのに、まったく発展性が感じられないフロントのソロも、つらいもんです。そういう人はそういうの気づけてない(音楽的にも)のが、一番つらい。

リズム・セクションがフロントのソロを汲み取って、反応してくれると、フロント楽器としては、さらにフレーズの展開がおこなえ、結果的に、より高く跳べるでしょう。

いささか理想論をいいましたが、こういうイメージをもつことが大事かなあと思います。

*1:ときに、不適切な例もありますけど