半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

Trombonist David Gibson performs Autumn Leaves


Trombonist David Gibson performs Autumn Leaves

 

David Gibsonさんは、一枚だけリーダーアルバムもってますけど、小難しいこともでき、あまり踏み外さない感じの演奏で、トロンボーンっぽくない気がします。

私的にはかなり好きなタイプです。

このソロ、勝手に採譜してみました。動画もみずにざっくりコピーしたので、ところどころあやしいところもありますが。

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譜面と、演奏が両方みえるのでわかりやすいですね。

ツーコーラスのソロをとっていますが、最初はかなりテーマからかけ離れたフレージングから入り、むしろ2コーラス目の後半にかけてギアをだんだん落として、緩やかにエンディングにむけ興奮を減衰させているようにみえます。

混沌としてHOTな局面から秩序ある状態に遷移し、そして静止という印象でしょうか。クールですね。

フレージングとしては、大体8小節のケーデンスでわけると、最後7、8小節目のトニックのところで、トニックらしい着地点を作っていますね*1

使用する音はコードに即して、極めて忠実です。所々に半音の繋留音、もしくはPassing Toneを入れ、カラフルにしています。オルタードもところどころに入りますが、それほど派手なアウトもなく、実にキレイに吹いている印象をうけます。

ま、そりゃ独奏ですし、リズムセクションがあり、その上に乗っかるのであれば小難しくもふけるでしょうが、一人で枯れ葉っぽいコード進行を提示しているわけで、そんなに変な展開はできない、ということなんでしょう。

Available note scaleでフレージングしている、というよりは コードを想定して、そのアルペジオにのっとってフレーズをつないでいるようにみえるのは、そのためなんでしょうか。独奏ですから、ある程度コードを明示的に示す必要がある。ところどころ、メロディー的よりは、バックにあるべきサウンドを肩代わりしているように聞こえます。

例えば、一段目の1・2小節目はDominant的に吹いていますが、3・4小節目はかなり明確にコードフィギュアに忠実でTonic的ともいえます。6段目の12小節目とかもそうですね。2段目4段目の3・4小節も。

7段目の3・4小節目はEの音が印象的です。おそらく Gm-C-Fm-Bb というリハモのコード進行を想定してEはCのトライアドを強調しているのではないかと思いますが、どうでしょうか? あと、7段目、8段目は割とコードなりに吹いていて少し落ち着いた部分ですね。それに対比して、二コーラス目の前半、つまり9段~12段あたりまでは、割とコードから離れたフレージングが目立ちます。この短いソロの中で、盛り上がっているところです。この一連のフレーズはところどころ小難しい部分もあり、好きなところですね。着地点はおさえつつも、その間の流れはわりかし自由に吹いていて、色彩が豊かです。10段目の2小節目とか、4小節目とかの音使いとか。

この9~11段の3段の大きな固まりは、流れでいうとDominantに対応するのですが、そこが終わって、12段にさしかかると、リズムも、イーブンフィールから、スウィングっぽくなって、緊張感が緩和させて着地感を演出しています。ここも、すごく好きです。

12小節目はGmの終始の部分で、D-G-A-Bbのフレーズをモチーフに頭の音をD→Eb→E→D と変化させて、いわゆるクリシェ的な効果を狙っています。

二コーラス目の後半からは、割とキレイに、元のメロディーやコード進行に即したきれいな流れが続きます。

最後、11段目の3・4小節は 前コーラスと違ったパターンで、コード的にはGm-Cm-Fmとなるのでしょうか。マイナーの対称性を保って4度進行で動かしており、ここも、すごく好きなところです。

ま、そういう小難しいことは何より、あたしはこの人の音すごくすきですね。ややかすれたようなおもむきもありつつ、まっすぐのびるので。アドリブですから、上に考えている事をふまえたうえで、瞬間的に構築しているわけですから、私が同じようにやっても、ここまで色彩豊かには吹けない。こういう風に吹けたらなあ、と思います。

*1:逆に、この演奏をきいて、この78小節目で落ち着かないソロイング、というのはどうしたらいいだろうか、と考えたりもしました