半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

呼吸の話

管楽器の呼吸の話はいろんな人が書いている。本でも、ネット上でも、沢山の情報に接することができる。

長らく管楽器をさわっている自分は、こういう情報にとかく辟易としていて、あまり重視してなかった。呼吸に関しては漫然と行い、それでよしと考えていた。

腹式呼吸はできてるやろ、長年やってるし。それで十分やん…という態度だったのだ。

しかし、沢山の人が書いているだけあって、呼吸は大事だよな、ということを最近痛感した。

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私はどちらかといえばバップスタイルの、細かいフレーズを刻むスタイルで演奏することが多く、また好きだ。

こういうスタイルではブレスそのものは、楽器コントロールすべき技術のなかで優先度は低くなりがちだ。

反対に、メロディーを吹き伸ばし、朗々とうたいあげるような、いかにもトロンボーンらしいスタイルは苦手だった。バラードも苦手。

そういう特性を自認していたのだが、もしかしたら、こういったスタイルの好みは、本当は自分の音楽的嗜好から発生したものではなくて、そもそも呼吸(正確にはフレーズのブレス)が苦手だから、フレーズを刻んだのかもしれない、と最近思うようになった。

 無意識下なのか、認知的不協和からか、そういう理由付けをしていたのだ。つまり、バップが好きだからそういうプレイをしたというより、メロディアスな吹きのばしが苦手だから、そういうことにしたのかもしれない。ひょっとしたら因果律が逆かも。

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私もそうだが、学生時代吹きまくっていた人は社会人になると、実際楽器吹く時間が少なくて、基礎練がおろそかになる傾向がある。単純に使える時間も少なくて、スケール練習とかを優先する判断は、あながち間違いでもあるまい。

ただまあ、ものには限度というものがあって、長年ロングトーンとかを怠ると、てきめんにパフォーマンスが下がる。

音。ロングトーン

ここが、プロとアマチュアの違いの最たるものだと思う。

以前ライブ後に多田誠司さんのお話聴いたときも「セッションで一緒にやってフレーズとかで、いいなとかうまいなと思うアマはいっぱいいるけど、音で『負けた』と思わされたことは一度もないな」とおっしゃってた。本当にそうだと思う。

プロはやはりプロの堅牢な音がする。

特に一流のプロになるほど。

もちろんプロと全く同じような練習はできないけれど、そこの部分から、僕は目をそらしがちで、結果的に選択肢をせばめていたように思うのだ。

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かといって、とにかく大きい音で元気よく吹けばいいというものではない。プロの音は、大きかろうが小さかろうが、存在感があってきちんとはっきり聴こえる。Hunter×Hunterで言うところの『念』がこもってるんじゃないかと思えるくらいだ。

これは三塚知貴さんと話していて教えてくれたことだが、例えば、urbie greenの

I'm getting sentimental over youをみてみよう。

http://youtu.be/odr78mOtU8g

YouTube で見ている限り、4小節以上をワンブレスで吹いている。

実に朗々とメロディーを吹き上げており、休符にも無駄がない。

こんな風に僕はふけるかというと、今は吹けない。

でも、こうでないと、メロディーが歌えていることにはならないんだと思う。メロディーラインをしっかり意識し、可能であれば歌詞の把握した上で、息継ぎを行う。

マチュアはブレスが無駄に多い人は結構いると、僕も思う。

こういうことを意識してテーマの練習をしようと思う。