半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

記譜について:

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問い:Jazz始めたんですけど、楽譜って自分で書くんですねぇ。びっくりしました。
何か注意事項ありますか?

はい。コンボやセッションで「この曲やりたいでーす」ともってくる譜面は、メロディーとコードの書いてある、いわゆる「Leadsheet」と言われるものなんです。
このリードシートですが、2018年10月現在は、日本では納浩一先生の「Jazz Standard Bible」いわゆる「黒本」シリーズがデファクト・スタンダードとなっています。でも、たとえば違うキーの曲を演奏したり、載っていないレアな佳曲をセッションでやってみたかったり、はたまた自分なりのリハモをして、独自アレンジを持ち込みたかったりする場合は、自分でリードシートを作ることになります。

フロント楽器の人たちは今では黒本が便利になりすぎちゃってて、そんなに作る機会ないですが、ボーカルの人は自分のキーというものもありますから、初学者の時点でもそれなりに譜面を用意する機会があるかと思います。

ではこの場合の注意点とはなんでしょうか?

記譜の際のちょっとしたアドバイス

  • 一段には原則として4小節、等間隔に小節割をした方がいいです。4小節ずつの進行を絶対にずらさないこと。

これは結構大事なことで、4小節のケーデンスがずれると、途端に読みづらくなります。たとえばAメロを二回繰り返したりして、1カッコ、2カッコ、みたいに書く場合は、大まかな4小節のケーデンスがずれないように書くことをすすめます。その場合はカッコのある行は縮めて入れるようにする必要がある。
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これはいわゆる「黒本」の”All the things you are”の冒頭、イントロからメロディーの部分です。
ここで大事なのは二行目の終わりを4小節目で終えていること。これが、3小節目や5小節目で終わっていると、途端に読みづらくなります*1
とはいえ、All the thingsのように、メロディーがゆったりしている場合はこのように詰めて書くこともできますが、バップとか、細かい動きをする場合もありますから、カッコの部分を詰めるとどうしても4小節を示しにくい場合などもありますよね。


手書きの場合は、1カッコ、2カッコで、このように改行しちゃう場合もあります*2
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これは僕の手書きの譜面なんですが(曲はなんでしょうね笑)、こんな感じで書くと詰まって読みにくい、という事態を避けられます。ただし、楽典的にはNGです*3

そもそもテーマとメロディーが4小節のケーデンスから余っている場合はまた別の機会を設けて説明しましょう。

これも段が変わるごとに書くのが正調です。ただ、ノイズにしかならないので省略することが多い。もちろん、ベースパートのみ記載するとか、楽譜が進むにつれて記号を変える場合は、記載してください。

  • タイトルだけではなく、作曲者の名前はどこかに記載するようにしてください。

これは、作曲者への礼儀ですかね。
LeadSheetでは書かないこともありますが、たとえばコピー譜とかだったら、右下に採譜した年・月を記載しておくと、あとで便利です。

  • 音符の書き方

いわゆる出版社の正式な譜面は、かなり黒玉が大きめにかかれてあります。それこそ線間の音符は、ちょうど上下の線に接するが如くに大きく書かれていますが、実際自分で書く時は、ちょっと小さめに書いた方が視認性のいい譜面が書けます。あと、斜めっぽい黒丸にしようとするのも、間違いのもとです。
全音符以外は、黒丸から縦に延びる線がありますね。あれは、●からちょっと離した方が読みやすいです。
シンコペーションの書き方、譜面の書き方については、読みやすいこつはもう少しあります。これもまた別の機会に。

  • コードネームは可能な限り大きく

ジャズマンの3割は老眼です*4。御大が読めるようにしておきましょう。
m7とM7は見間違える可能性があるのでM7は⊿7を推奨します。

  • 一コーラスがどこからどこまでであるか、というのを明示する

ジャズの「Leadsheet」というのは演奏の際のある種の「手順書」のようなものです。イントロ・エンディングが書いてなくて一コーラスがシンプルに示されている場合は、「イントロ・エンディングは奏者にお任せ、書いてある全体を1コーラスして繰り返す」という風に読み取れます。
ただし、ボーカル譜のようなもので、イントロが示されている場合、一コーラスがどこからどこまでかは、リピート記号かなんかで囲ってやらないと迷ってしまうことがあるので、ご注意ください。
そもそも「ジャズボーカル」やりたい人の9割は、ジャズの曲を歌いたいだけでジャズをやりたいわけではない。
セッションとかで行われるジャズの「お作法」=楽曲の構造については全く無頓着ですし、たとえばスキャットも、プロでも半分はしないし、アマチュアの9割はスキャットでアドリブとかしません。あ、いけん。愚痴になってしまいました。

最後に

個人的には自分が主役(テーマもしくはリーディングソロをとる、あるいは両方)の場合に譜面をガン見するフロント楽器奏者はあんまり好きじゃないです*5
またリードシートを常に黒本に頼るのも(コンセンサスが得られやすいというメリットはあるものの)発展性という意味ではどうかなーと思います。

だが、それ以前に、そもそも人に伝える気がないとしか思えないようなお手製の「Leadsheet」を持ってこられた場合、殺意を抱くことさえもあります。当然うまくサウンドしませんしね。黒本を多用する文化がどうかな~と思いつつ、容認されるのは、あれが現場として便利この上ないからです。

ただしそのおかげで、多くのミュージシャンがヘタクソな自作Leadsheetを持ち込んで怒られて反省しLeadsheetの書き方を学ぶ、という経験を得にくくなってしまいました。Lead Sheetを作って、自分のサウンドの志向を明確にすることは、本来とてもおもしろく、チャレンジングなことです。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

*1:読めたとしても、コードの大まかな流れとかが追いにくくなります。

*2:これは正式な楽典的にはNGです。なので譜面のソフトでこれを書くことはできません。ただし手書きのリードシートに限っていえば視認性優先の場合はありだと思っています。

*3:Blogの改行の多い文章は昔の原稿の規則からはNGでしたね。原稿用紙に埋めるそれは、書き手はあくまで文字列として書き、体裁や読みやすさは編集や校正で気を使うべきものであった。そもそもスペースや改行を多用して読みやすさを確保する、という考え方は昔の文章構成術にはなかった。それに近いと僕は思っています。

*4:もっとかも…

*5:好きじゃない、というのは優しい方で、多分NYのセッションとかだったら多分アウト。