半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

記譜について その2

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問い:小節数が半端な曲のコピーはどういう風に書いたらいいんでしょうか?

はい、結構微妙な問題ですね。
その1で私は「コピーの際の小節は4つ割にせよ」というアドバイスをしました*1

  • 半端っぷりにもよるし、
  • 楽譜を書く対象にもよる、

最終的にはケースバイケースに判断せざるを得ません。

例えばAlone togetherという曲がありますね。
AABA'の単純な進行なんですが、Aが少し変わっていて10小節なんです。
A(10)、A(10)、B(8)、A'(8)。
4ずつ割ればちょっと「字余り」になります。
アドリブソロのコピーを採譜する場合、この中途半端な部分をどうするか?

 僕は10小節を4-4-2と3段目の半分書いたところでその先は空白のまま次は下の段に書いてしまいます。

もちろん、これは正確な採譜方法の観点から見ると間違っています。だが、コードの流れは実際ここである種の断絶を示しているのでここで切り上げるのはそれほど間違っているとは思えません。また、そのあとコーラスの頭が中途半端なところにある弊害の方が大きいと僕は考えます。ぱっと見たときに流れがつかみにくくなるからです。


リードシートの場合は、A-Aの繰り返しを、1カッコ、2カッコと処理すると、Bメロからまた行頭にくるのでうまく処理できますね。
「黒本」はそういう風に記載されていると思います。

ちなみにこの曲のアドリブのコピー譜などの場合(アドリブのコピー譜の場合は、カッコによる繰り返し、というわけにはいきませんから、半端な小節を改行するか、それともそのまま続けるか、ということになります。この曲の場合はAAで丁度20小節。ここで4の倍数にもどりますから、4小節割で、続けて書いてもあまり弊害は生じません。

しかし、いつも運がいいとは限りません。
たとえばLike a Loverという曲があります。
AABA進行なのですが、A(14)A(14)B(13)A(14)という譜割りとなっています。
この場合は……どうでしょう?こういうやつはおとなしく、大きなセクションが終わったら改行した方が迷いにくいような気はします。

 例えば、ちょっとしたアレンジで32小節の曲のコーラスの末尾に1小節もしくは2小節のfill-inを加える場合があります。このとき、一コーラスは33(or34)小節になります。
 この場合の記譜は先程と同様にその場所で意識の断裂があってしかるべきなので、僕は1小節(もしくは2小節)書いたあと、段を切り上げてしまいます。もしくはちょっと詰めて書いて一段に6小節書いてしまいます。
 スタンダードで言えば、Smileとか、Feel Like Makin Loveとかに、微妙に後ろに「しっぽ」がついていますね。
これは最終行にこの小節だけ書くことが多いような気がしますが、そもそも譜面をきちんとみない人は、そこを見落とすところに遭遇します。見落とさないように書けるかどうかがポイントです。念を入れて書き込みましょう(笑)。

アドリブ譜の場合、最も重視されるべきなのは演者の「意識」で、文法など大した問題ではないとは思います。自分で使うものですからね。
「リードシート」は 人に見せる譜面ですから、いわゆる楽典上のルールに沿うことをおすすめしますが、それと可読性との間で衝突が起こった場合は、可読性を優先させたほうがいいと、私は思います。

ジャンルによる書き方の違い

いわゆるJazz standardは1コーラスの小節数は4の倍数であることがほとんどです。
基本的に、Jazzの楽曲構造は同じコード進行が曲の始まりから終わりまで円環状に繰り返される構造といってよいと思います。だから、4つ割を重要視した方が有利なんです。つねに二重線は段の始めに来るようにする方が、把握しやすい。
スタンダード・ジャズは逆に「リードシート」に基づいて演奏される形態であるがゆえに、わかりやすい楽曲構造なのかもしれません。この辺は原因なのか結果なのか、よくわかりませんね。

 対照的にポップスやフュージョンの楽曲構造はこれほど単純ではありません。
 始まりと終わりの対称性は低く、曲は一方向に進行します。
 従って与えられるソロスペースも不規則で、同じコード進行が繰り返しというのはむしろ少ない。
 この場合は前述したような「譜面の4つ割」にそれほどナーバスになる必要はないかもしれません。多分そういう場合は、4小節ずつだったり、改行を多く作っていると何ページにもなってしまうので、それはそれで不便だと思います。

*1:私がいっているのではなく、これは基本的なことです。念のため