半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

どの曲からはじめる? その4:ダイアトニックとノン・ダイアトニック

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その1:どの曲から始める? その1 初学者の場合 - 半熟ドクターのジャズブログ
その2:どの曲を始めるべきか? その2 レパートリーを増やす - 半熟ドクターのジャズブログ
その3:どの曲からはじめる? その3:調性 - 半熟ドクターのジャズブログ
の続きです。

その3では曲を増やしていくときに、苦手なキーもほどほどレパートリーに含めながら苦手キーを作らないようにしたほうがいいですよ。
ということを言いました。

同じキーの曲でも、難しい曲と簡単な曲があります。
どうやってそのあたりを識別したらいいんでしょうか?

曲の中のトーナリティー

 ジャズって、たとえばキーがFだとすると、最初っから最後までFで吹けないことが多いです。
 ずっとそのキーで演奏できる曲はむしろ少数。

 そういう曲は「一発もの」と言われたりしますが、トーナリティーに強く拘束される。キーのドレミから離れない。
 一発性の曲としては、そうですね……

  • Mack the knife
  • ブルース全般*1
  • Watermelon Man
  • 聖者の行進

 くらい。これらの曲は、基本的にはそのキーのドレミファソラシドから外れない。

* * *

 話はがらりと変わるんですけれども、最近わけあって、童謡歌集というものを買ったんです。

 「さくらさくら」とか「蛙の歌」とか、そういう「童謡」。ほとんどの曲が全く転調がない。そうするとメロディーは完全にそのキーのドレミで唄えちゃうわけです。こういう曲のコードは、多くがその曲の調のトニック(Ⅰ)、ドミナント(Ⅴ)、サブドミナント(Ⅳ)で構成されている。
 もう少しいうと、そのキーの部分には「ダイアトニック・コード」が割り当てられている。

 ダイアトニック・コード?
 ジャズの教則本には大抵載っていますし、Web上にも良質のテキストが沢山あります「ダイアトニック・コード」で検索して各自調べてください。

 それ以外の曲では、もとのキーで吹ける部分=ダイアトニック・コードの部分の中に、他のキーに転調している部分(ノン・ダイアトニック・コードの部分)が点在している。
 

曲の複雑さ:

 そろそろ結論に近づいてきましたが、曲の複雑さは、ノン・ダイアトニック・コード(ダイアトニックコードではない部分)の多寡で決まる……といっちゃいます。
 上述の「一発」曲を除けば、曲中でダイアトニック・コードしか出ないことはまれです。なぜなら、ジャズではコード進行をなんやかやでわざと複雑に加工しているからです。その方がBop的にはソロをとりやすいから。

 それは、Bop-idiomの本質が、そもそもダイアトニックなコードもノン・ダイアトニックなコードも等価的に扱うことから出発しているからです。コードをわざと複雑にすることよってフレーズをトーナルの呪縛から解き放つことができたのでした。バップはダイアトニック・コンポジションのある種のアンチテーゼなんです。

 ですから、バップでアドリブするかぎりトーナリティーは重要ではありません。逆にいうとバップらしく吹くということは、ダイアトニックな音から離れることを必然的に意味します。

 そういうわけで、ジャズのコード進行では、ダイアトニック・コードとノン・ダイアトニック・コードがブレンドされた格好で存在しています。
 問題はその比率です。

 あくまで大雑把にですが、ダイアトニック・コードが全体に占める比率が、コード進行の複雑さの指標になると思います。
 ダイアトニック・コードの含有率が高い曲では、その曲の調(トーナル)の拘束率が高いわけで、理解しやすい。

 その3でも述べましたが、調性に拘束されやすい管楽器奏者にとってはそういう曲が演奏しやすいのです*2
 我々は転調に弱いからね*3

メロディー

 本質的に同じ事ですが、メロディーで判断することもできます。
 ダイアトニック・コードでは、その部位において、その調のドレミファソラシド(メジャースケール)を使える。ですからダイアトニック・コードの部分のメロディには基本臨時記号はついていません。
 逆にいうと、メロディーの音符に臨時記号があれば、その部分は必然的にダイアトニック・コードではなく、原調を離れています*4

 だから、リードシートのメロディーを追って、ざっと臨時記号の多寡で、コード進行の調から離れ具合を推定できます。
 ちなみに、逆は必ずしも真ならず。臨時記号がつかないメロディーには必ずダイアトニック・コードが割り当てられているわけではありません。*5

まとめ:
アドリブのしやすさは転調の多寡と相関する。
原調に対するダイアトニックコードの比率、メロディーの臨時符号の多寡が、転調の多寡を推測する目安になる。

 ものすごい簡単に言うと、転調が多いと、アドリブは難しくなるという話ですね。
 過去、定量的に調べてみたことがあるのですが、テーマのメロディーに含まれる臨時記号つき音符の比率が20%を超えてくるとちょっと難易度が上がる印象です。

*1:ただしトニックが7thである点で、いわゆる理論的整合性をわかりにくくしている

*2:ただし、全くダイアトニック・コードだけだと、単純すぎてバップでは演奏しにくい。

*3:逆に「そうか…転調に強くなることが必要なんだな」と思っていただければ、このページは目的を達成できたと思う

*4:勿論、経過音、装飾音符などの例外はありますし、マイナーの曲の場合はこの原則にあてはまらない場合がある

*5:例)Over the rainbowの一、二小節目とかそうですよね。この辺がジャズのリハモの真骨頂です。