半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

フロントが複数いる時のオブリガードは? (歌伴の時に 番外編)

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前回、歌伴の話
https://jazz-zammai.hatenablog.jp/archive/2018/11/15
を書いたわけです。
これはこれで、もう少し具体例を提示しようと思っていたんですが、一回お休み。
フロントが二、三人いる時に、どう演奏すべきか、書いてみます。
前回の歌伴の時の考えの延長なものですから。

(以前にセッションのことというのも書きました。)

フロントとは

フロント、というとわかりにくいんですが、リズムセクションではない、ソリスト楽器、ということになりましょうか。

いわゆる「管楽器」はフロント楽器と言っていいでしょう。

むずかしいのがギター。
ギターは、ピアノレスではコード楽器として振る舞うし、ピアノがバッキングで、純粋にフロント楽器のように振る舞うこともある。
もちろん、ピアノとギターでコード楽器として伴奏を分担することもあります。
このあたりの機微は非常に難しい。
ジャムセッションなど初対面でピアノとギターの役割分担がうまくでき、なおかつ、ギターもピアノもお互いにスペースを譲り合って紳士的にサウンドを形成できる人は、相当な上級者といってもいいと思うくらいです。

ギターは多様なスタイルを取りうる自由度の高い楽器だといえますが、その分、自分のスタイル、立ち位置、見識が問われる。
自分の出す音、だけではなく全体のサウンドをきちんと捉えた上で、自分のサウンドを形作れる演奏が、個人的には好みです。
*1

* * *

話がそれました。
フロントが複数いる場合、ジャムセッションなどで事前に綿密な取り決めをしない場合*2、基本的にはテーマのメロディーを吹く人が、明示しないまでも「リーダー」的な役割をになうことになり、全体の流れを指示します。
*3

この時にそれ以外のフロント楽器奏者はどうするべきか。
よくあるのが、テーマを前半・後半半分に割ってテーマを吹く人を分けるパターン。
それ以外の場合はなんとなくオブリガードを二番手の人が吹く、というやつですね。
このときですが、オブリガードを誰かが吹くと、「あ、ここは吹いていいんだ」みたいに、また別の人もオブリガードに参加する、
みたいなことがセッションではしばしばあります。*4
吹くべき、吹かないべき、ということを、他人の様子をみて日和見的に決めている人は、よくこういうことをする。

我々には「群れとして行動する」習性があります。
たとえば、信号待ちをしている時に、誰かが渡り始めたらぼんやりとみんな追随しちゃう、みたいなことが起こる。
そういう習性として、この行動には理解ができます。
ただしサウンドとしては容認できないことが多い。
オブリガードが二重になると、それぞれのフレージングが干渉して邪魔をします。
結果吹かないほうがましになります。

さらにいうと、ピアノやギターのリズムセクションがオブリガードをとることもある。
フロント楽器とピアノOrギターがオブリガードで干渉するのも、美しくない光景です。

こういうときに、サウンドを濁るのを嫌う人は吹くのをやめるわけで、結果として「悪貨は良貨を駆逐する」もしくは「言うたもん勝ち」方式で、美しくないサウンドになってしまうことが多い。
セッションという形式どうしても好きになれない人は、ここが容認できないっていう意見、根強くあります。

もちろん、すべての曲で、整合性や美しさを追求しなくてもいいんじゃないか楽しくやろうや、という考えもあります。
ジャムセッションは偶然性の音楽なので、時にはカオスがあったり、カオス、喧騒の中にある美もあるでしょう。
盛り上がる部分では、ある程度容認されると思いますし。デキシーランドの現代的な再構築、みたいな複数のオブリガードラインの錯綜を楽しむようなものもあると思います。

ただ、サウンドを美しく保つための共通認識は知っておいたほうがいいと思います。*5*6

* * *

あくまで、本日の内容は、一つの「形式」にすぎません。
こういう予定調和を、わざと無視するというのも、一つのスタイルだと思います。
確信犯でやっているのは、ありだと思う。
でも「僕マナー守ってるもんねー」と思ってマナー守れていないのは、端的にいうとダセえ。
アウトフレーズを吹くのはOKでも、音外してるのはかっこわるいじゃないですか。
それに、これはマナーという礼儀作法だけでなく、美意識という普遍的な問題でもあります。

まとめ:

  • オブリガードを吹く人は原則として一人。
  • テーマにオブリガードが入ったからといって、別のもうひとりがさらに別のオブリガードに加わるのは禁忌行為。
  • オブリガードを吹くときには、全体のサウンドをよく注意する。

ま、セッションって、基本、吹きすぎ、弾きすぎが多いよね。
自戒をこめて。

*1:ギターとピアノの関係性はまたこんど。

*2:バンドの場合は、事前にトリッキーな展開を決めておくことは十分可能で、それこそがバンドの醍醐味だとは思います

*3:歌もののようなテーマフェイクがある程度入るような場合は、この図式が成り立ちますが、問題はConfrimationとかビバップの曲。全員がテーマユニゾンするような状態は、また難しいですね。これもまた別稿で。

*4:これほんと多いんですよ!

*5:この種の衝突を避けるために、セッションホストが登壇する人数をコントロールして、そもそもフロント奏者を一曲辺り二人くらいまでしかあげないところもあります。まあ、妥当な戦略です。

*6:あとはボーカル歌伴と同様、白玉=吹き伸ばしでたとえば八段の歌ものであれば34段、78段目にちょこっと参加するとかの「オブリガード2」とでもいうべき立ち位置。これはオブリガードもメロディーも邪魔しません。トロンボーンの場合はそういうサウンドへの参加もありえると思います。