半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

デタラメやるメソッド

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デタラメなんだワン!
アドリブのやり方として、
裏技的なものとして、例えば、Fのブルースとかで、デタラメ…というか、Non-Diatonicの音をたくさんだして切り抜ける、という方法をとる人が、一定数いる。

よくあるのは、

  • Tonalityを無視して、クロマチックな音列を並べる
  • Tonalityを無視して、例えばTonalityから比較的離れたキーのペンタトニックフレーズを並べる

みたいなやつだ。

過去20年くらいアマチュア・ミュージシャン界隈をみているが、数パーセントの確率でこうしたスタイルをとる人は出現する。
どの楽器にも等しく出現するが、他の楽器に比べるととりわけトロンボーンでは出現頻度が高い。

このメソッドをとる人に共通の性質として、

  • 音がでかく、トロンボーン吹きとしては優秀。
  • 速いフレーズも吹ける。
  • 譜面は相当なところまで吹ける
  • どちらかというと音感には優れていなくて、コードなどは苦手

という特徴があります。
つまり、コード感やスケールにそった演奏は苦手で盛り上がっている演奏の現れとして、こういうスタイルを選択してしまう、わけです。


力技といえば力技だし、強引といえば強引。
実際に、普通にアドリブを取る人間が聴けば「何やってんの?無茶やなあ…」と感じられてしまう。

* * *

この手のタイプは、例えば、大学の部活とか、ビッグバンドのコミュニティで醸成されることが多い。

要するに、ソロの聴き手のレベルも高くない場合、アウトフレーズを正しく解釈できない。
こういうスタイルの提供者は、そうした場において、こういうソロがなんとなく受けいられた結果として、このスタイルを選ぶようです。

率直に言ってしまえば、がっつり確信犯で「デタラメ」を吹く、ということになります。

これは「裸の王様」メソッドでもあり、クローズド・マインドでソロを評価すると、「それあかんで」という事になるけれども、オープンマインドで、いい所を拾っていこう的な観点では「なんかかっこいいことやっているかもしれん」てなるんです。

口さがなく言ってしまえば、この手のソロの出現を許すコミュニティには、一定の特徴があります。
コミュニティのアドリブソロのクオリティが低く、誰もまともにアドリブソロを評価も批評もできない。
コミュニティがあまり開放的でなく他との交流が少ない。
アドリブソロについて、他のメンバーもあまり積極的でもなく、対抗馬もいない。

ま、要するにアドリブのレベルの高いところでは、こうしたソリストは淘汰されるか、スタイルの見直しを図られることが多いんです。

デタラメメソッドの長所

ただし「デタラメメソッド」には悪いことばかりではありません。

デタラメメソッドは、フレージングについてはデタラメではありますが、アドリブの盛り上がりとか、アドリブ演奏の興奮(エキサイト)というものを正しく伝えようという姿勢に満ち満ちています。

高速のスピードでNon-Diatonicのフレーズを繰り出すことによって、ソロが盛り上がっているピーク時の演奏を、なんとなく再現できているわけです。

特にこういうソロの起承転結感とか盛り上がり感は、ビッグバンドのソロ(コンボの、少しづつ積み上げていってピークに持っていく演奏とは違って、いきなりトップギアに入れるような演奏が求められます)においては、はまりやすい。

実際、ビッグバンドのトロンボーンソロって、モノホンの人もこういう「ようわからんソロ」としかいいようがない珍妙なソロ結構いっぱいあるんですよね。
また、コンボでも、他の楽器のソロでも、最も盛り上がっているところでは「ブギョー!」だったり「ピロピロピロピロ…」だったり、要するにバーサークしているような部分が結構あるもんです。
あれを丁寧にコピーしていると、そういう感じにもなる。

対照的に、コードにそって、丁寧にフレーズを並べていても、盛り上がれないソロ、というのもあります。
楽器あんまりうまくないけど訥々とコードに沿ってフレージングするようなタイプのソロ。
アートファーマーとか、ケニードーハムを、さらに訥々としたようなソロ。*1

こういうソロは、逆に盛り上がり感を出すことは不得手で、ビッグバンドでは、むしろ「デタラメメソッド」の方が映えることさえあるわけです。

デタラメメソッドの弱点

「デタラメメソッド」には一定の強みがあり、また、ビッグバンドでのトロンボーンソロは、オリジナルにしてからそういう要素も多分にあるので、どうしてもデタラメメソッドのスタイルのトロンボニストが一定数出現するんだと思います。
トロンボニストにとっては、デタラメメソッド、ある程度しょうがないんじゃないかなと思います。ごく一部の人間を除けば、トロンボーンでアドリブソロをとる際、最初からできている人はかなり少ない。

ただ、デタラメメソッドの弱点は、

  • ソロの盛り上げしかできない。盛り上がっている曲でしかはまらない。
  • 一発ものとかならいいが、コード進行の複雑な曲だとうまくいかない。

という、致命的な弱点があります。
勢いに任せた奏法であるわけで、勢いを削いだ状態では途端に魅力を失ってしまいます。

デタラメメソッド奏法のプレイヤーの持ち味を殺したければ(例えばジャムセッションなどで)、

  • バラードをさせる。スロウな曲をさせる。
  • バラードのテーマとソロの部分をさせる。
  • 歌ものとかのオブリガードをさせる(フロント楽器にとってはもっともわかりやすいコード感が必要とされるたぐいのタスクです)

逆に、Giant StepsとかCherokeeとか、そういう曲だと、めっちゃかっこいい演奏に化けることもあります。(もちろん一発ものじゃないので、空振り三振になるかもしれません)
コードを無視できる、というのも、時と場合によって強力な武器になることもある。

* * *

デタラメメソッドを脱却するためにはどうしたらいいか?
まあ、このBlogは半分以上そのために書かれたようなもんですが、

  • きっちりAny Keyの練習をする
  • Tonalityを身に着ける練習をする

ことが必要でしょうかね。

*1:こういうソロイングはソロの出だしとかではとても有効なんですが、しかし盛り上がれず終わってしまう