半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

ソロの構成について その1

2021, 香川

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(注)私はアマチュア演奏家にすぎないので、ベストパフォーマーの発言ではないことは留意くださいね。
(プロの方に聴いた話も含まれています)。

以前に書いたエントリの、今回はもう少し具体的な話。

jazz-zammai.hatenablog.jp
jazz-zammai.hatenablog.jp

要点は、

コード進行に沿ってフレージングをする、というのも大事ですけど、ソロの起承転結というか構成も大事ですよ

という話でした。
典型的なのは後半に盛り上がりを作ること。この図のように。

後半に向けてアクセルを踏むためにはどうするか?

結論は簡単です。
後半でアクセルを踏むには、前半でアクセルを入れなければいい。

マックス10の力で吹いてるのを15にもっていくことは無理です。
でもピークが10なら、前半を3とか5とかにしてて10にもっていくことは可能。

もし仮に自分に楽器のテクニックがなく10も出せない。せいぜい5くらい。
でも前半を2や3にすればソロの流れを作ることはできる。

大事なのは、一歩引いて、俯瞰した視点でソロをコントロールする意思です。

無論、普段の練習のマックスが10で、本番でそれをさらにギアを上げる姿勢も大事です。

漫画「Blue Giant」でユキノリに対して大がさせようとしたのも多分それ。

でもそれは全身全霊の力をだしても10.5、いや11に届くのがやっと。15なんて物理的に無理。
初手から全力でぶつかって、その結果起承転結の構成美が明確なソロ……なんてのは、天才の所業。
天才でないならば、それ以外の手段で演奏をよりよいものに近づける必要がある。

三つの段階にわけてみる

というわけで、ソロの「盛り上がりぶり」をコントロールしましょう。
音の高さ、音の大きさ、フレーズの複雑さ(リズム的に、ハーモニー的に)など、さまざまな要素を複合的に組み合わせ、我々は盛り上がりを演出してゆきます。

ただ、今回はフレージングの譜面上の細かさ、に特化して語ることにします。

* * *

ソロに関するフレージングの細かさについて私個人は、三段階にわけて考えています。

  • 第一段階:休符が多く、音が連続しない状態。もしくはテーマメロディーと同じくメロディメイクに近いレベルの音列。
  • 第二段階:主に八分音符でフレーズが構成されている、いわゆる「ハードバップ」のソロっぽい状態
  • 第三段階:それからさらに音符が複雑化したような、例えば三連符や十六分音符、さらに細かいフレーズ

 厳密にいうと、基本的には第二段階のモードが「標準」。
 敢えて落とす場合には第一段階。アクセルを踏む時は第三段階と考えています。

 もちろん、速い曲では第三段階の出番はありません。
 反対に、バラードでは第三段階の比率が高く第二段階の比率は少ない。
第一段階のような空白の多いフレージングと第三段階で要求される速いフレーズが同居している状態が多いように思います。
 曲やセットリストによってもその比率は変わってくると思いますが。

なぜ三つに分けるのか

 三つの段階にわける理由。
それは、それぞれの段階でトレーニングの方法がそれぞれ異なるから。
 もちろん通底するコード理論は同じですが、発現形が異なる以上トレーニングの力点がかわります。
 どれだけ第二段階だけを練習しても第一段階や第三段階は上手にならない。
 別の練習を少しするだけでソロは劇的に変わるかもしれない。

 「ひとまずのジャズっぽさ」を得るのであれば、まずは第二段階です。
 ここの練習をみっちりやりましょう。

 ただ、それだけだと、機械的で余裕がない感じになる。
 そういう人は、第一段階のソロの手法を取り入れてみたらいいのではないかと思います。
  ぐっと自然なソロになるかもしれない。

 ある程度のレベル以上のプレイヤー同士には、第二段階は「必要条件」みたいなところがあります。
 できて当たり前、名刺がわり、挨拶がわりというところでしょうか。
 そこから、第三段階でどうハネるかの勝負。

 セッションで個性が最もでるのは、第三段階だと思います。
 しかしそのためにはその練習を行わないと絶対に出てきません。*1
 アマチュアの中級〜上級、プロにはこの辺の地力に絶対的な差がある。
(逆にいうと、丁寧に第二段階の8分音符のソロをとることはアマチュアでも不可能ではないと思います)

続く

*1:まれに、第二段階の八分音符のタイミングを徹底的にモノホンに近づけて、音数はそのままに、超絶かっこいい演奏するというスタイルもあります