半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

コロナウイルスがジャズシーンに与える影響

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2012年 広島県、神石高原町

当初予想していたよりもコロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV-2)はおおごとになった。
最低でも半年くらいは閉鎖空間での演奏に対して下方圧力が働くのは間違いないようだ。

* * *

冷戦が終わり、21世紀になって、世の中は進歩した。
世界は一つに繋がり、国や人種の壁を超えて、富や文化を享受する時代になっていた。
しかし今回のコロナウイルス禍は、そういうグローバルな社会の在り方そのものに冷や水を浴びせる出来事のように思われる。

ジャズというジャンルにとって衝撃が大きかったのは、ジャズそのものが、出自はアフロアメリカンのリズムというローカル音楽なのに、様々な音楽と融合し進化を遂げ、コスモポリタンな要素を備えた普遍性の大きい音楽になっているからだと思う。
すこし大げさかもしれないが、グローバル社会の、そしてグローバル人材(コスモポリタン)における知的貨幣として、ジャズは膾炙していた。
コロナはそのコスモポリタニズムを、決定的に傷つけた。
我々の精神的動揺はそのせいもあると思う。

* * *

リーマンショックの時に、ミュージシャンをやめた人が多かったのと同じく、専業ミュージシャンが、収入を演奏のみに頼ることは難しくなってくる。
収入の複線化は避けられないだろう。*1
私は団塊ジュニア世代なわけで、僕らの学生卒業時には、いわゆる「就職氷河期」があった。
そのためか、この年代のミュージシャンは人口の割に数が少ない印象がある。*2

ものすごく楽観的に言えば、ジャズミュージシャンはもともとニッチで予算枠の少ないマーケットであるから、大勢に影響ないかもしれない(笑)。
いやそんなことはない。収入の絶対的下げ幅は低くても、生存可能年収のボトムラインを割り込むリスクはやはり高いだろうから。
ここ最近、国内の閉塞的な状況を打開すべく、中国や東南アジアへ進出している目端の利いたミュージシャンにとってこそ、今回のウイルス禍は打撃が大きいだろう。グローバル人材こそ、コロナの影響は大きいのだから。

しかし、実はもっとも懸念しているのが、学生のジャズミュージシャンだ。
ビッグバンドも、コンボもだ。
ミュージシャンとしては揺籃期の大事な時期にこういうショックが襲ってくると影響は大きい。
見通しが明るいなら頑張れても、見通しが不透明だったり暗い場合、頑張れる人はそう多くはない。

学生ビッグバンド

まず、学生ビッグバンドについていうと、逆風の条件が揃っている。

  • ビッグバンドはバンドの参加人数が多い。なおかつ管楽器なので、不顕性感染のエアロゾル感染のリスクが無視できない。観客動員数も多い。必然的に、ハコの人口密度は増える。

私も学生時代ジャズ研に所属し、ビッグバンドもやっていたが、一年の活動の中で、コンサートホールや野外もあるけれども、数度は少し大きめのジャズクラブとかで演奏する。そういうのは、もし感染流行地域であれば、難しいだろう。ビッグバンドの多くは地方の中核都市や大都市圏に存在しているので、そういう意味では流行地域の警告を受けやすいと思う。もっともこれは、吹奏楽部も状況は変わらない。ロックバンドなどはさらにライブハウス内の人口密度が高くなるわけだし。

  • ビッグバンドは参加人数が多いわりに、メンバーの替えが効かない。

数ヶ月間濃厚なパート練習、セクション練習、合奏を繰り返して一つのサウンドを作っていくわけだが、もし感染、感冒症状があったりした時に、そのパートが抜けるとバンドサウンドが成立しないのである。
結果として、例えば症状を隠してステージに立つという事象は、構造的に生じやすいことは認識しておいた方がよい。
山野ジャズバンドコンテストのシード校などは、今年に限っては、各パートにリザーバー(補欠)をしっかり用意しておいて、ある程度の感染にも対応できるようにしておいた方がいいと思われる。リザーバーも含めてパート練習をしておき、保険をかけておいた方がいい。

国内イベントなので、オリンピックが中止になっても国内が収束していれば可能かもしれないが、感染フェーズが遷延していると厳しいかもしれない。
学生ビッグバンドの精神的支柱である山野が開催されない場合、しかもそれが複数年に渡って、ということになると、ジャズシーンもかなり盛り下がってしまうような気もする。地方のジャズフェスも3月4月は軒並み中止になりつつある。これが5月以降どうなるかはちょっとわからない。

マチュアのビッグバンド活動の活性度は多分落ちる。
プロのビッグバンドも、Player's Musician的な意味合いも大きいので、必然的にマーケットは細ることが危惧される。

コンボ

大規模動員を必要とするビッグバンドに比べると、都会の片隅でひっそりと演奏を行うようなコンボ・セッションなどは、それほど影響がないように思える。
ただ、こちらに関しては、マーケットのパイは確実に狭まる。
消費増税不況で弱っていたところに、コロナで、インバウンドの激減、外出の自粛。
 さらにいうと、リーマンショック級の不況で、都市住民の可処分所得の減少は避けられない。
飲食業界すべてが厳しい中、ジャズクラブも例外ではない(もともと厳しいのだ)。

今すでにあるパイの奪い合いになると、ミュージシャンとして確立している、特に専業プロミュージシャンたちが、優先されるべきであるしまた、優位なのである。
今後予想される環境の中では、新規参入障壁は相当高くなる。
もちろん、トップ層のおそるべき新人たちは、そんな環境など関係ない。
ただ、100人が食えていた状況が、30人しか食えなくなるのなら、別の時代ならプロになれた人がプロを断念する、ことも大いにありうる。
特にお店でセッションホストを任されるくらいのセミプロくらいのクラス、に影響が大きいと思う。

まとめ

  • マーケットそのものがシュリンクすることはおそらく規定路線。
  • プロミュージシャンのマネタイズはよほど知恵をしぼらなければいけない。
  • 近年の動向を踏まえてグローバルマーケット開拓に舵を向けていた方々は、より影響が大きいかもしれない。
  • 私も含めてセミプロのミュージシャンは、仕事の方の厳しい下方圧力と、厳しい淘汰圧にさらされる。

個人的には、本業で食えているアマ〜セミプロのミュージシャンは進んで専業プロミュージシャンの養分にならねばいけないような気がする。
ゲストとしてプロに参加してもらうようなライブを増やすとか、レッスンを受けたりするのを増やすとか。
我々にとっては「すげえ人と一緒に演奏する」もしくは「すげえ人の演奏を目の当たりにする」喜びが、何より勝ることだ。
すげえ人が、音楽の道を折らないようにする方法を考えなければいけないだろう。
そうじゃないと我々が楽しめなくなるのだから。

ジャズの向学心に燃えている諸君について言えば、残念ながら時期が悪すぎ、楽観的な状況ではないことは認識しないといけない。
 プロを目指すには相当ハードルが高い時代になるだろう。

 しかし、それは音楽を捨てるということではないのだよ。
 世の中0か100か、ではなく、その中間の段階はいくらでもある。
 どうせ、どの時代だって、ジャズですごくお金を稼ぐなんてことは難しいという事実を受け入れよう。
 お金のためにやる音楽じゃないんだ。
 真面目に自分の音楽を練っていれば、上手い人と共演するチャンスはいくらでもある。
 その時に、自分に失望しないように練習をしておくことだ。

あとは、お店での演奏=ライブ以外の媒体とか、演奏形態の複線化も考えなければいけないようには思う。
今回のコロナ禍はYoutubeとか動画発信する人を爆発的に増やしそうな気がする。
僕もやってみようかなーなんて思う。
あとは、ストリート演奏ね。ストリートやりたいな。
 

*1:かといってこれまたグローバル社会の象徴であった投資にもしばらくは逃げられそうにない

*2:プロミュージシャンもそうだが、セッションにくるミュージシャンという観点でも、我々の世代は「生存比率」が有意に低いのである。可処分所得あっての音楽活動なのだろう。