半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

セッションのロードマップーその4(離)

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2020, 何虫?


セッションの歩き方について、長々と述べてきました。

その1:初心者は、まずバンドのサウンドにうまく調和しましょう。アドリブソロをコントロールしましょう。
その2:中級者は、自分のパートだけではなくサウンド全体に目を配りましょう。
その3:とにかくちゃんと挨拶しましょう。

ではその次はどうでしょうか?

ジャムセッション全体をコントロールする

中級者では、自分のパートだけではなく曲全体を、バンドサウンド全体を見ましょう、と言いました。
そこからさらに視野を広げましょう。セットリスト全体をそしてお店全体を見渡せるようになりましょう。

セッションホストという形で参加しているのであれば、人数が多い場合は交通整理を行う必要があります。
皆の満足度を推し量りつつ、不公平にならないよう、選曲に無理がないように、差配をして満足度が極端に偏らないようにしましょう。この辺り別項で述べています。

セッションホストがいない状況の場合は、なかなか難しいのですが、誰かが全体の流れを見ていた方がいい。
大抵は視野の広い人が参加者の中に一人くらいはいるものです。
(誰もそういう視点を持たず「自分が、自分が…」となっているセッションもあります。いくら楽器がうまくても、幼稚園児の集まりのようなものです。引率の先生がいない幼稚園児の群は、ただのパワーゲームです)

経験が深く全体を見渡している人が他にいなければ、あなた自身が全体の情勢を見極めてください。そういう人が他にいるならば相談し、やんわりと、望ましい状況に方向づけましょう。
明示されたホストではない場合、決定権はありませんから、強制力のある指示はできません。あくまで提案です。ですから、あまりにひどい事例は見るに見かねて少し介入する、という形しかとれないでしょう。

「池の水全部抜く」じゃないすけど「出来る曲全部やる」人は、うまくその人を引き剥がして(その人の好きじゃない曲やリズムを提案するというのが上策、『ちょっと交代しましょうか』と直言するのは中策、『おめーやりすぎなんだよヘタクソ!』は下策)、初心者でなかなか輪に入れない人には、無理のない程度に勧めたり、できる曲を聞いてコールしたりして後押ししたり。
また、特定の参加者としか演奏しない人(多分好みもあるのでしょう)には、別の組み合わせになるように順番を操作したりすることも。

人の組み合わせだけでなく、セットリスト全体の流れも大事です。例えば、おんなじようなテンポの4 Beatの曲ばかりにならないように、ボサノバとか、歌物、メジャー・マイナー、一発もの、ファンク系、ワルツ・変拍子など、さまざまな要素を組み合わせ、できるだけセットリストがカラフルになるようにする。
この辺りはライブの時の選曲、配曲にもつながってくる話です。

曲だけではなく、さらに上位構造であるセットリストに視野を向けて、見えて来る世界もあります。
ただ、それ、本当に楽しいの?とも思われるかも知れない。でも誰かがそういう役を担っているのです。世界の秩序のためには。
まあ、飲み会で、他の人を介抱するような役でありますがね。

これの弊害は「遊んでいるのに、仕事しているとしか思えない感じ」になることでしょうか。
視野の広さとバランス感覚が要求されますが、これは、管理職やマネジメント能力そのものなので。

広い視野と狭い視野の切り替え(もしくは共存)

こういうマネジメントは、セッション全体にとっては大事ですが、我々はあくまで一人のプレーヤーであることも忘れてはいけません。こういうマネジメント作業はお腹いっぱいになりがちで、没入よりも醒めた目で全体を眺めがちですが、それだけでは片手落ちです。
一人の奏者として音楽に参加する瞬間は、音楽に没入し、きちんと熱量を持って自分の演奏を完結する。
この切り替えができるかどうか。逆にいうと、一瞬でプレーヤーモードに入れるか。
うまいけど、あくまでクールに「やってあげてる感」満載で自分の仕事を淡々とこなす、というのは、一見良いように見えるけど、全然よくないです。やる気ないうまい人の演奏は、これからの人の心を悪い風に冷ましてしまうことがあります。

ハートに火を付けろ!

プロとアマチュアの差、もしくは、一流のプロとそうでないプロの差は、結構このあたりに出るように思います。
プロミュージシャンの方々は、抜いたリラックスモードから、臨戦モードに入るまでが、おそろしく早い。そして、それなりにハートに火をつけたような演奏をします(たとえ、内心はうんざりしていても)。

多分アマチュアはHi-Lo程度のギアしかないのに対し、プロはいくつかのギアを持っていて、セッションとかシットインで参加するような演奏は、ギアを一段階あげる程度で対応できるから、なんでしょうけどね。
(私はプロじゃないのでわかりませんが、見ている限り、プロはその辺りの立ち上がりさえもアマとは段違いではあります。たとえベロベロでもです)

 やる気のないふりして、いざステージに上がったらばっちり温まっている。
この辺りのモードチェンジの速さ、レスポンスのよさは、必須条件ではありませんが、セッション慣れした人に共通の現象ではないかと思います。管楽器はどうしても立ち上がりに時間がかかりますが、プロはコンスタントに練習をしているのもあるとは思いますが。

まとめ:

 初心者、中級者、上級者と勝手に区別しましたが、強調しておきたいのは、これはジャズや音楽の習熟ではなく、あくまでジャムセッションに対する初級中級上級ですので、誤解のないように。

 一言でまとめましょう。

 セッション初級者に必要なのは、勇気!
 セッション中級者に必要なのは、引き算!
 セッション上級者に必要なのは、熱意!

 では、今夜もばっちりセッションを楽しみましょうぞ!

【番外編】カラオケ店での感染リスクを最小化する方法

5月末をもって、緊急事態宣言は一時終了した。しかし、感染が終わったわけではなく、みなそれぞれに注意をしながら、かつての日常生活に戻りつつある。

そんななかで、カラオケやライブハウスという、「三密空間」としてやりだまにあげられていた業態も、おそるおそる開業をはじめている。
ただ、感染のリスクはゼロではない。


ライブハウスについては、非常事態宣言前に書いたこれを参考にしていただきたい。

jazz-zammai.hatenablog.jp

今回は番外編として、カラオケ店における感染リスクを最小化する方法を考えてみよう。

1.行かない

前回も書いたが、リスクをできるだけゼロにするならば、最良の方法は、やはり行かないことだ。
うまい話は、やっぱりない。
可能な限りコロナの感染リスクを最小化するなら、行かない、という以上の解はない。

ただ、3ヶ月自粛してわかった。音楽ジャンキーの私はカラオケ好きでもある。一定期間カラオケに行かないのはまあまあ苦痛だった。
ある種の中毒のようなもんだ。黒川氏の賭けマージャンを笑えないね。
『廃カラオケ勢』は一定人口存在する。
行く行かないの二分法ではなく、行く前提で、できるだけリスクを減らす、という方法は考えられないだろうか。

2.行く場合にも

というわけで、行く場合にリスクを最小化する方法を検討しよう。

  • できれば広い部屋を用意する(ぎゅうぎゅうにしない)
  • 人数も少なめ
  • パリピ」じゃない感じ

エアロゾル感染と飛沫感染を防ぐために、相対的に広い部屋が望ましいだろう。
肩を寄せ合うようなぎゅうぎゅうの空間はあまりよくない。
また「カラオケ」で、想像する様子って、人によってかなり差があるようですね。
狭いパーティールームで密集・熱唱、タンバリン鳴らしまくり、みたいな、いわゆる盛り上がっているカラオケは、多分感染の可能性高いと思う。

私は自分のやるカラオケでは、同時に二人以上は歌わない。
マイクエコーさえオフにする。歌をしっとり楽しむ式のカラオケ。タンバリンとか鳴らすやつはブッ殺死。
盛り上がる、ではなく、歌を歌うカラオケではある。
こういう静かなカラオケの方が、おそらく感染リスクは低いだろう。
なんなら歌っている人以外はマスクしておく、くらいなら飛沫感染はかなり減らせる。

室内の工夫

室内の感染については、飛沫感染防止と、エアロゾル感染防止に分けて考えるべきだと思う。

飛沫感染

飛沫感染は、唾液の飛散、そして、その飛散したウイルスの、体内の取り込みで生じる。
リスクがあるのは、歌唱の時の唾液が
1:直接粘膜に入る、もしくは
2:食物・飲料に付着し、それを摂取する
 という事象だと思う。

1:確率的には大きくはないが、対面している場合にリスクが高いと思う。例えばソファーで隣の席とかであれば、リスクは少ない。
もし対角で、やや近いような場合はマスクをした方がいいのかもしれない。
私はメガネなので眼球結膜への付着は考えなくてよさそうだが、メガネじゃない方はメガネの方が安全ではある。
テーブル席で、歌う時にその場で立ち上がって歌唱するタイプの人の場合はその下方へ飛沫を飛ばす可能性があるので、むしろ飛散範囲が増えて危険だ。
一番いいのは、ちょっと古いタイプだが、前に歌う用のステージがあるタイプ。歌うときはそこで歌い、少し距離を置いてテーブル・ソファーなど聴く人の席があるレイアウトだ。これが一番歌唱者の飛沫感染を防げると思う。

2:まあまあ会話のある場合の会食に準じるが、カラオケの場合、歌唱という形で唾液飛散が防げないことだ。
テーブルに唾液(つまりウイルス)が飛散し、それを摂取すれば、感染するリスクはありうる。
したがって、カラオケ店では、フードは頼まない方が無難だ。長時間テーブル上に暴露された食物ほど危険度が高いと思う。
ドリンクについては、ここで取り上げたような、カップに蓋をするのが望ましいと思う。

今のところ店では用意されていないので、今度持って行こうと思った。

マイクに触れるような歌唱法であるとすれば、マイクの洗浄とか消毒をどのタイミングでするのかが難しいところだが、僕はそんなでもないのでまあいいか。マイク内部機構を痛めるので、アルコールスプレーを噴霧するのはよくない。
金属のアミアミの部分をアルコールのウェットティッシュで拭き取る、くらいだろう。
マイクの内部機構に飛散した唾液が蒸発する時にウイルスが浮いてくるのか、というのは難しい命題だが、これは僕は感染力のある形で蒸発はしないのでは、と思う。ただし、マイクを握っている手を介した感染はありうるので要注意だ。

エアロゾル感染

エアロゾル感染については、正直程度の定量的な見積もりが難しい。
これがカラオケボックスでの感染リスクについて、完全には見積もれない部分だと思う。
ただ、静かに独唱している分には、飛沫感染はともかく、エアロゾルによって、空気・空間中にウイルスが撒き散らされる可能性は相対的に低いのではないかと思う。もちろんくしゃみとか、咳をする人がいればその限りではない。
できれば、一巡するごとに一旦止めて、2-3分でも換気をしたらいいのではないかと思う。
また、エアロゾルの濃度はこれはやはり部屋の広さに反比例する。
この点でも、上記の「ステージありタイプ」が有利だ。

まとめ:

  • 相対的に広い部屋・人口密度を減らす
  • 歌う際の注意:ステージ式がベスト、囲みテーブルで立って歌わない。同時に全員で歌わない(基本独唱)歌う人以外はマスクをすれば完璧。
  • 食事は避ける。飲み物については、蓋がある方が望ましいかも
  • 一定時間ごとに換気をする。一定時間ごとにマイクの消毒、手洗いを繰り返すことができれば、かなり優秀なのでは。
  • でもやっぱり、行かないのが一番リスクが少ない。

しかし、こんな感じだと、カラオケの、薄暗く狭い部屋で肩寄せ合って歌ってドキドキする…みたいなトキメキ感ゼロですな。
本当にストイックに歌うしかない。
まあ今の僕にとってはカラオケはそういう存在なわけだが。
もー最近若い人のカラオケのレパートリーがわかんなくて、結構きずつく昨今である。

ちなみに

このコロナ自粛あけにカラオケにいってみたのだが、システムが進化していた。
最近のはアプリから予約できる。
受付を通さず、直接部屋に入るのだ。
そして、ドリンクバーでもいいし、デンモクみたいなやつで食事やドリンクを頼む。
昔は店員が運んできてくれたが、合図があったら、食品出し口にでてくるのをセルフで取りに行くシステムに変わっていた。
終了10分前のお知らせもデンモクでやるし、延長もそこから操作できる。
会計もセルフレジだ。
なんと、入店から退店まで、店員の姿を一度も見ずに済ませることができるのだ。

なるほど、ここまでシステムを変えたら、確かに店員と客が接触することは原則ないので、ウィズコロナでもなんとかなるという確信はあるな。
このシステムは強い。

しかし、この人に出会わないという使用感、なんか味わったことがあるなーなんだろう…と思ったけど。
わかった。
ラブホテルだ。

トランスクライブのすすめーその3

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紅一点。
その1
その2
の続きです。

その2では、コピーしやすいトロンボーンを紹介しましたが、実はトロンボーンのソロ初心者には難しい。音域高いし。ヘタに同じ楽器だとできない時の不全感は大きい。

わかりやすいトランペットのソロをコピーする

トランペットをオクターブ下げてトランスクライブがオススメです。

理由は…

  • 楽器の構造の類似性:

楽器構造が同じなので一息で吹けるフレーズのレンジ(音域)は似ています。ピアノやサックス・ギターのフレーズはそもそも吹けないことも多い。トランペットだとのスライドポジション的に難しいものもありますが、音列そのものはトロンボーンでも吹けるはず。

  • 音の高さ:

トロンボーンの高速フレーズではスライドの動きを省略できるためか高い音域を使う人が多い。トランペッターには低めでフレージングする人がいます。(勿論ハイノートの方は高いけどね)もちろんこの長所は弱点でもあります。トランペットのピストンなら可能なフレーズも、スライドではできないこともある。

  • わかりやすさ:

トロンボーンの高速フレーズは譜面にしにくいんです。ポジション移動を最小限にしたリップトリルのフレーズは聴いてもよくわからない。音をのんでいる場所も多いし。トランペットのフレーズはデジタルで、譜面に落としやすい。トランペットの方が背景の理論を理解しやすい。

私はジャズ研でアドリブは独習したクチですが、大学一〜二年くらいの私は、トロンボーンのソロをコピーしても、ソロの意図や背景がよくわかりませんでした。むしろコピー元をトランペットにした時に、いろいろ視界がひらけた記憶があります。

コピー4天王:

個人的にソロをコピーしやすいトランペッターを勝手に命名しました。

それぞれにすごいミュージシャンだから、バリバリ吹いているテイクもあります。ゆっくりした曲は必ずある。それを狙ってコピーしてください。

Kenny Dorham


Kenny Dorham - 1959 - Quiet Kenny - 08 Mack The Knife
"Quiet Kenny" という昭和のジャズ喫茶では絶大な人気を誇ったアルバムの中から、コピーしやすさ、コード進行という意味でこれをピックアップしました。ね、これ聴いたらコピーできるかも?と思いません?実際音は低めでトロンボーンだとスライドがかなり不自然。しかし高音でスイスイフレージングするトロンボーンよりはなんとかなる。

Chet Baker

Chet Bakerスキャットのような歌心が特徴。です。なんならスキャットでもいい練習になる。
晩年のChet Bakerはドサ回り旅行を続け、片端から録音し日銭を稼いだので大量に音源があります。巧拙はともかく。また、キャリア初期はアイドル枠だったのでソロは短い。
後期ではSteeplechaseの作品群がドラムレスで聴きやすく、おすすめ。"Chet Baker In Tokyo"もいいですね。
レパートリーは少なめで、同曲の別テイクも多いのも特徴。


Chet Baker-But Not For Me
これは Steeple Chase版のTouch of your lips ですね。これを聴いて「あ、こんなんでいいんや?」と思ってください。
スキャットでソロをしてギターのあとトランペットでもソロをしています。でもフレーズ感はスキャットもトランペットも同じ。僕の音楽キャリアの中間点での大事なお手本でした。

正直にいえばチェットベイカーのソロは深みに欠け構築力は低いです。しかし、瞬間的な美しさ、歌心という点では随一です。
マチュアでこの境地が出せればハッピーなセッションライフを過ごせるでしょう。
小難しいソロは音大勢に任せちゃいましょう笑。

Art Farmer

もっとも好きなプレイヤーですが、地味です。端正に練り上げられた、カラフルで地味なフレーズを吹きます。
絶対にハイノートに逃げたりせず、地道に積み上げてゆく。その点でもコピーに向いている。
サイドメンとしての活動も広範囲で曲のバリエーションも豊富です。


Art Farmer & Ray Brown - In a Sentimental Mood - LIVE HD
Art FarmerのCDの紹介とかすると多分2万字くらい書けちゃうので、晩年のライブ映像あげときます。
これは晩年ですが、若い頃からこんな感じです。ちなみにこの楽器はモネ製のフリューゲルホルンとトランペットを足した「フランペット」というやつです。

みんなArt Farmerのこともっと好きになって!

Miles Davis

ジャズマンなら誰でも知っている帝王マイルス。常に変化し続け振り返らなかった男。
栄光の表街道を歩み続けたためマイルスの足跡はそのままジャズ界の名所観光案内にできちゃうくらいです。
"Cool"と評される彼のスタイルは、音数は少なく間を大事にするもので、初心者でも試しやすいと思います*1
特にテーマのうたい方、バラードの間はとても素晴らしいプレイヤーです。
ピッチはあまりよくありませんね*2


Miles Davis Quintet - Blues By Five

マイルスはいろんな時代をがありますが、まずコピーしやすいのは、1950年代。Kind of Blueが1958ですが、それまでの作品がセッション登場率が高いですね。Cannonball Addreleyの枯葉はいうに及ばず、マラソンセッション4部作も凝ったことせずにスタンダード吹いてますから参考度高いです。ソロもそんなに長くないし。

セカンドクインテットの頃のサウンドが理解できるようになればコンテンポラリージャズへの道が開けるかもしれません。

* * *

以上、この辺りがトロンボニストにとってコピー(トランスクライブ)しやすいかなと思います。

ジャズトランペットは奥が深いものです。すばらしいプレイヤーが数多くいます。
サックスやピアノ、ギターに比べると、トランペットのソロはトロンボーンに引き写しやすいです。
ぜひトライしてみてください。

長いソロの序盤をコピーする

ソロというのは、そのプレイヤーの自己表現です。
難易度の高いテクニック、高い音など、自分を誇示する部分があるものです。それを真似るにはそのプレイヤーと同じ力量がないと吹けない。
ただ、ソロには起承転結があり、構成があります。
逆にいうと、盛り上がりではは難しくても、入り口はおさえ気味だったりします。
アウトサイドの音も少ないし、フレージングもシンプルで真似やすい。
ものすごいテクニシャンの4コーラスのソロのうち、最初の1、2コーラスは80%くらい吹けるけど、3-4コーラス目は半分も吹けない、なんてあるでしょう。そんなことよくあります。まあ、今の自分にわかる1-2コーラス目を丁寧に練習しましょう。できない時は何年か経ってからまたやればよろしい。
人生は長い。
そりゃ優れたプレイヤーが一生をかけて練り上げたソロをやすやすとは完コピできませんよ。

まとめ:

  • トランスクライブは絵描きのスケッチ・デッサンと同じです。基礎力をつけるためにはソロのトランスクライブがきわめて有効です。
  • ソロをトランスクライブする行為はそのミュージシャンを好きになり近づきたい、という気持ちを姿勢で示していることです。
  • 音源を聴いて採譜をし、その譜面をふく行為は、ただ音源を聴くよりも何十倍も深く集中して音源を掘り下げることができます。
  • トランスクライブをすることで、自分の好みとか傾向を知るきっかけになります。自分の音楽スタイルの方向性を得るきっかけになるかもしれません。君が音源を見ている時、音源もまた君を見ているのです。

*1:実際にはけっこう難しいんですけど、それはやってみてから気づいてみてください

*2:クラシックに慣れた人にはこの点で耳が受け付けないリスナーもいます。

トランスクライブのすすめ その2ートロンボーン編

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2020, 庄原

jazz-zammai.hatenablog.jp
の続きです。
これはトロンボーンの人用の解説になります。

アドリブのコピー(トランスクライブ)が大切ということはわかりました。
しかし、コピーするのすごい難しいんですよ…

はい。はーい。
そう!めっちゃそう!わかるよー。

トロンボーンって特に初心者の時には高い音もでないし速いフレーズも吹けないのに、ジャズのアドリブソロはパラパラ吹いて、めちゃ難しい。
こんなん、初学で完コピしようとしても、ムリ。
絶望ですよ、絶望。

なので、トロンボーンに限っていうと「コピー?そんなもん好きなソロなんでもコピーしたらよろしいがな」とよう言わん。心が折れます。

対策は主に 3つあります。

  1. わかりやすいトロンボーンのソロをコピーする
  2. わかりやすいトランペットのソロをコピーする
  3. 長いソロの序盤のソロだけコピーする

わかりやすいトロンボーンのソロ:

私もジャズ歴30年以上のおっさん。色々コピーしてきました。
けど、トロンボーンのソロ、技術的にはすごい難しいのが多いんですよ。*1
探し方にコツがあります。おじさんが、やりやすいソリストをピックアップしますよ。
ポイントは、速すぎず、高すぎず、難しすぎないソロ。

第3位:Bennie Green
ジャズの歴史ではベニーグリーンというとピアノとトロンボーンの二人います。ピアニストのベニーグリーンはかなりスマートなタイプですが、トロンボーンのベニーグリーンはもさっとした中間派といったプレイスタイル。
とにかくトロンボーンらしい伸びのいいフレージングが決め手。
ブルースとかもうワンパターンなんですけれども、いい音してんだよなぁ…

youtu.be
ベニーグリーンのもっさり感の真骨頂はふつーのブルースにあります。
ベニーグリーンのブルースはどれも同じに聞こえてしまいますけどね。
これがベタ、これが定番ということでしょう。

もっさりしていますけれど、これが完コピできたら、これでもういいや!っていう爽快感があります。昔ながらの中華そば感!
あと、テーマのうたい方とかも、好みはありましょうが、ぜひ一度トランスクライブしてみてください。バラードも素晴らしいですよ。


第2位:一部のCurtis Fuller
トロンボ二スト以外にも知られた有名どころですが、時期やバンドによってだいぶテイストが違います。
例えばJohn Coltrane "Blue Train"とかはバリバリ吹き倒していて、これはなかなか難しい。Art Blakey And the Jazzmessengersに参加している作品も、コピーけっこう難しいです。*2
でも、しっとり、ゆっくりしたバラード・ミディアムの曲はコピーしやすい。*3
"Blues-ette"というアルバムと、"South American Coockin"、それからNew Tromboneというあたりはまずまずコピーしやすいかなと思います。

youtu.be
これは表題作ですが、同じリフを6回繰り返すという衝撃のブルース笑。いやまあいいんですけど。一曲目は Five Spot After Darkという有名曲。

Jazztetといわれる Art FarmerBenny Golsonとやっている三管のバンドのやつもまあまあスロウでやりやすいです。
サイドメンで参加しているアルバムはかなり多いので丹念に探してみましょう。
ただ、沢山コピーしていると、Curtis Fuller特有のLicが鼻についてきます。時期によっては手癖感はありますね。

第1位:スタジオ仕事をやっているUrbie Green
これは私の好みなんですが、Urbie Greenオススメします。
ポップスやボサノバのスタジオワークに膨大な仕事を残しています。音の伸びやピッチのよさ、端正なビブラートなど、いかにもトロンボーンらしい演奏を堪能できます。ただ勿論めちゃ速いフレージングもできる人なので、ソロを通しでコピーすると、吹けなかったり。
リーダー作はおおむね難しいです。サイド参加を狙いましょう。
Antonio Carlos Jobim "Wave"とか、Walter Wonderey "Rain Forest"とか聴いてみましょう。

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Waveの中の曲 "Look to the sky "です。いかにもトロンボーンの教科書ですねー、ソロはありませんけど…
割と音が高めなので、高いFからHi-Bb,Hi-Cくらいまで無理なく出せる能力は必要です。

youtu.be
オルガンのイントロは「未来少年コナンの回想シーンか?」と思わせますが、このアルバムではSo Niceとかが有名。Rainという曲は一個も有名ではないですが、Urbie Greenのトロンボーンを堪能ください。

この方の様に、仕事の幅が広く、ソフトで端正の音色で綺麗に奏でる系譜にはJim PughとかNils Landgrenがいます。
日本の方だと佐野聡さんが私は好きです。

あんまり初学に向かない人たち:

トロンボーンプレイヤーみんなうまいんですよね…
特にテクニック的に手がつけられないのは、
Conrad HerwigとかSteve Turre これはコンテンポラリーなので初学には向かない。
Carl Fontana、Bill Watrousとかも、楽器に自信のある人以外は真似しちゃあいけません。

他にもうまいプレイヤーはめちゃめちゃいます。近年レベルが上がったと思いますし。
ただ、まあ、どうせあなたがいっぱしのプレイヤーになるつもりがあるのなら、自分の好みのスタイルを見つけて挑戦することは全く問題がないですね。むしろ、トランスクライブなんて何十曲もしたらいいので、「おっこれかっこいいやん」と思ったら採ってみたらいい。
トランスクライブは、絵描きにとってスケッチとかデッサンみたいなもんですよ。
どんどんやればよろしい。禁止なんかしません。
ただ、どうにもうまいトロンボーンソロって、手がつけられないので、採りやすいかな?というのをピックアップしてみました。

続く。

*1:ちなみにビッグバンドのトロンボーンのソロはめちゃくちゃ難しい上にフレージングも何やっているのかよくわからない。

*2:Curtis Fullerの旬は5-6年しかないんですよね…

*3:カーティス・フラーの真骨頂は吹き伸ばしにあると思っています。ごくふとの音で、しかもビブラートとかかけないやつ。

コピー、トランスクライブのススメ。

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音楽を聴いていて、
「これカッコいい!」
「これ、やりたい!」と思う瞬間というのは、あると思います。

その時の気持ちこそが、演奏をする原動力であるべきです。

それがジャズである必要もありません。
J-popでもいいし、洋楽でもファンクでもロックでもなんでもいいんです。
自分の楽器でそれを表現する。

もちろん、金管楽器木管楽器のような単音楽器では、自分でメロディーラインを吹いただけでは、形にならない。
(逆にギターやピアノのようなコード楽器の場合は、もちろん修練は必要ですが、単独で人に聴かせられる形まで完成させることはできます)
でも、メロディーや、リフを楽器で吹いてやることで、そのサウンドに迫ることはできます。

譜面を書く事:

大事なことを言います。
やりたい曲がある時に「譜面を探す」習慣はやめた方がいいってこと。

もちろん、ミリオンヒットとかで、譜面が容易に手に入るものは、手に入れてもいいでしょう。
今はそういう譜面もずいぶん充実してきたので、探し方さえうまくなれば、大抵のものは見つかる。

ただ、自分の「これ好き!これ吹きたい」という気持ちと、
「譜面があるから吹く」というのは全く別物です。

吹奏楽とかオーケストラ、ビッグバンドなどに慣れた人は、選曲されて与えられた曲に対して、自分の趣味嗜好はともかくその曲に深く没入し繊細な解釈をして曲の深部に入り込むという作業を必ずキャリアの中途の段階で経験しています。

なので、曲の感想は第一印象ではなく、深くつきあうことによって感想もかわるということを知っています。
ですが、自分の第一印象や曲の好き嫌いはとりあえず横に置いておく、という思考が生まれやすいのも事実。

こういう思考になれていると、自分の好き嫌いは抜きにして、与えられたレパートリーの中で好き嫌いを選ぶようになりやすい。
だから「曲何やりましょうかねー」と言って、黒本(Jazz Standard Bilbe)をペラペラめくって探す、みたいになるのです。

「好き」を大事にする:

譜面にない曲を好きになった場合、できれば、その「好き」を大事にして、自分で譜面を書いてみませんか?
ということです。

アドリブソロ、イントロ、エンディングまできっちりと書き込まなくてもいいです。
まずはテーマだけでもいい。
耳で聴いた自分の好きなものを、自分の中に取り入れる行為。
そこに頒布された譜面を介在させない。

好きな曲を自分のものにする。
選択肢の中から選ぶ、ではなく、好きな曲を大事にしましょう。

コピー、トランスクライブはとても大事。

書く力は書く事でしか得られない

それに譜面を書く力は、書くことでしか得られません。
最初は、自分で譜面を書くのはとても難しい。

自分の選んだ曲を、自分のバンドで演奏してみる。やっぱり自分の考えを伝えるために譜面を書く必要があります。
他の人に読みやすい形で譜面を書くのは、もっと難しい。

いずれは自分のオリジナルを演奏することもあるかもしれない。
そんなとき、自分の演奏を記録するには、やっぱり譜面です。
それまでに、コピーとかをしていて譜面に書き慣れていると、譜面を書く事に抵抗がないと思います。

トロンボーンの売り譜面も、最近はぼちぼち出ていますが、昔は全くありませんでした。
昔は手書きで譜面を書いたものです。
今はヘタに便利にはなったので、譜面を書かずに済ますことはある程度可能ですが、あなたが憧れるスキルのプレイヤーになる過程で、どうせ譜面を書く局面にぶちあたります。

譜面を書くことを忌避せず、自分の「好き」に正直でいましょう。

* * *

・書いた譜面を演奏するときには諸問題もあります、それについてはこれを参考に。

jazz-zammai.hatenablog.jp

・記譜にはいろいろなポイントがあります。ご参考までに。
jazz-zammai.hatenablog.jp
jazz-zammai.hatenablog.jp
jazz-zammai.hatenablog.jp

コロナウイルスがジャズシーンに与える影響 その3

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2020年 因島

要旨:

  • ジャズ研はコロナ禍の影響を強くうける。ジャズ愛好の学生の減少は中長期的にみるとマーケットの衰退をまねくだろう
  • 学生の「ビッグバンド勢」と「コンボ勢」の分断という構造的問題が以前からある。分断の原因はアドリブに対するハードル。
  • コロナは間違いなくピンチではあるが、アドリブと向き合うことができれば、同じく集団演奏が禁止され困っている他のジャンルの奏者を取り込むことができるかもしれない。
  • そのためにはジャズ研でアドリブを習得できるための環境作りに、今まで以上に留意する必要があるだろう

その1
その2
の続きです。

学生:

その1でも述べたが、プロミュージシャンは何年もの濃密な音楽歴があるため、外部環境で簡単には音楽をやめたりはしません。

しかし学生の場合は全く話が別。
初学の段階で快適な音楽環境を奪われると音楽から撤退してしまう。
個人の人生に関していえば音楽以外で人生でとりくむべきことはいくらでもあるから、振り返ってみるとコロナ禍も人生の中で数ある蹉跌の一つにすぎないかもしれない。
しかしジャズの世界の側から見ると、参入の機会喪失は新規人口の低下につながる。
そうするとマーケットのパイと多様性のいずれもが低減してゆくだろう。
ジャズ愛好学生の減少は短期的なインパクトはないが、中長期的にマーケットに与える影響は大きいと思う。
学生は、未来へのある種の希望なのだ。

ジャズ研学生:

ジャズ研勢というか、ジャズ活動をしている学生について掘り下げて考えよう。
大まかにビッグバンド勢、コンボ勢に別れると思う*1
ビッグバンド勢はビッグバンド、フルバンを主戦場としている人たち。
コンボ勢はコンボやセッションでやっている人たち。
もちろん両者は交差しているけど、ビッグバンド勢とコンボ勢は互いに断絶しているのは、その中で過ごした人間ならある程度知っていることだ。

断絶、は言い過ぎかもしれない。
フロント楽器についていえば、ビッグバンド→コンボという形で進む人が多い。
逆にコンボから始める人もいる。しかしどこかでビッグバンドを経験することもある。
このあたりの成長過程はどちらでもいいのだ。
どっちもできる人はどっちにも行くことができるのだから。

問題はビッグバンド勢からコンボに行かない人。
一定数いる……というか、むしろビッグバンドのままでジャズ活動を終える人の方が多いくらいだ。

ビッグバンド勢に留まる人も別にコンボをやりたくない、というわけでもないようだ。
ボトルネックになるのは、やはりアドリブソロなんだと思う。

アドリブソロが一定のレベルに達しない場合、コンボはちょっとしんどい。*2その場合はビッグバンドだけにとどまるわけなのだ。

構造的な問題をまとめると、

  • ビッグバンド勢とコンボ勢の分断
  • はっきりいうと「アドリブできない勢」と「アドリブできる勢」の分断
  • アドリブはハードルが高い

ということになる。
これは古くからある問題で、アドリブの問題は我々に重くのしかかっているのだ。

コロナによって何がかわるか?

今回のコロナ禍。
ビッグバンド勢とコンボ勢、いずれもコロナの影響を受けている。
何しろ学校の多くは休校して、構内にも立ち入りできない。
ろくに入学もできていないのに入部はハードルが高いよな。

新入生の問題だけではない。
集合演奏の完成度は、集合人数とかけた時間の掛け算で決まる。
そう考えると、コンボの方が活動再開はしやすいだろう*3と思われる。
学生ビッグバンドにおける「箱根駅伝」のような存在、山野ビッグバンドジャズコンテスト(YBBJC)は今年度延期(ひょっとしたら中止)が決まった。
学生バンドにとっては活動の腰をぼっきり折られた格好になり、損失も計り知れないと思う。
ただ一年空白になっただけではないのだ。大学では活動年が決まっているのだから、今年がバンマスコンマスの学年だった学生にとっては、自分達の活動のほとんどが奪われてしまうことになる。これは酷な話だよ。*4

ただし、従来、学生の時点で早くから店で演奏活動を始めるコンボ勢の様式も、ライブハウスの活動低下により阻まれる可能性が高い。開催しやすいのは、比較的スペースを広くとった(部室とか)でのジャムセッションかもしれない。

* * *

しかしピンチはチャンス、という言葉もある。
ビッグバンド勢の「アドリブは難しいな…」と思う人も、今回のコロナ禍で、ビッグバンドの練習は宙に浮く。
それなら、自分と向き合うまとまった時間は得られる。理論の勉強をしたり、コードワークを勉強したりするには格好な時間でもある。

そう言えば僕もアドリブに取り組んだのは、阪神大震災のあと、留年し、ビッグバンドにも入れず、活動が宙に浮き、くすぶっていた時期だった。アドリブをする、しかなかったのだ。そこから僕のジャズ人生は展開しはじめた、とも思う。

学生諸君の中にも僕と同じ経験で、ふとジャズの迷宮に迷い込む人がいるかもしれない。
そうだったらいいなあと思う。

困っているのは我々だけか?

さらにジャズという枠を外して考えてみよう。
管楽器をやってた人間が大学に入学して、そのまま管楽器を続けるパターンは結構多い。
オーケストラにいったり、吹奏楽にいったりする。その選択肢の中の一つにジャズ研、ビッグバンドがあると思う。

実は、コロナ禍は、ビッグバンドだけではなく、吹奏楽にしろ、オーケストラにも影響は与えている。
現在、集団演奏自体が危機にさらされている。
管楽器の人間で困っているのはジャズだけではないのだ。

結論から言えば、このジャズ以外の勢を取り込めないか、という話である。

管楽器の集団演奏は、基本的には譜面を吹く作業になる。
もちろんオーケストラにはオーケストラの、マーチはマーチの、吹奏楽には吹奏楽の、ビッグバンドにはビッグバンドの大事なエッセンスがあるが、譜面を吹くという意味では大きな違いはない。

コロナ禍は、集団演奏から引き離されることを余儀なくされた。
そうすると、管楽器の独奏、を突き詰めて考える必要がある。
となると、ジャズじゃないか?
 個人の演奏技量でいうとクラシックが最高峰かもしれないが、他のジャンルとの親和性でいうと、ジャズは割に相性がいい。今のポップミュージックのほとんどはコード進行を基礎に置いて演奏を展開するからだ。
この手のフォーマットに圧倒的にジャズは強いのである。

ただ、ジャズ研で、そこまで個人のソロの技量を高められるか。
大学のジャズ研の中には主力がビッグバンド勢で、新人にアドリブを伝授できないところもある。

きちんとコード進行を理解し、グルーブとアドリブについて理解し後輩に伝授できることができること。
もしこの二つがきちんとできるのであれば、ジャズ研は、他のジャンルから個人技を高めたい人材にとって、有用な無視できない存在になるはずだ。
そういう新入生を取り込むことができれば、ジャズ研の未来は明るいかもしれない。

望ましいジャズ研の形とは

ジャズ研の本質的な要素とはなんだろうか。

  1. ジャズという限定されたジャンルを演奏する
  2. アドリブソロのソリストの力をつける
  3. コードフィギュアに沿って音楽を構築する力

そもそも「ジャズ」という定義が難しい。
アフロアメリカンのリズムをルーツとするローカライズドされた音楽と規定することもあるし、インプロヴィゼーションを重視してとらえることもある。

ただ、ジャンルの押し付けは上述した個人技を高めたい人にとっては無用なことだ。
ここは、定義を広くとり、完コピ譜ではなく、コードフィギュアにのっとって演奏するシステム全般を対象とすればいいだろう。
リードシートによる演奏をすべてはジャズ研は包含すべきだ。
もちろん、その中にはベイシーをやるビッグバンドがあり、メッセンジャーズっぽいことをやるバンドや、チックコリア大好き人間がいてもいい。フュージョンも、スカパラもデラルスもPE'ZもCalmera好きな人もいてもいい。

ファンク・ヒップホップ、スカなど今の音楽に対しても親和性が高い方が望ましいだろう。
BimBomBan楽団、Calmeraなどは、吹奏楽勢にも人気が高い。こうしたジャンルに興味がある人たちを取り込むことができれば部員の獲得に成功するかもしれない。

ジャズマン=ソリスト最強、というイメージを利用し、個人技を高めたい意識高い奏者を取り込むしかない。
それはひいては「コンボ勢」の増加につながるだろう。

プロがすべきこと:

残念ながら多くのジャズ研では、アドリブソロがとれる奏者をきちんと内製できる環境は少ない。
地方都市でのジャズ研をみている限り、学生の中だけで閉じている場合、学生のレベルはジャズ研の中のレベル以上にはならないのである。学生のうちはそれでもいいのだが、大人になって社会にでてから、達成度が低い場合は、音楽を続けられないのである。

できれば、プロと学生ミュージシャンはもっと交流した方がいいと思う。
プロも学生に対しては未来への投資と思って、マネタイズはほどほどにして、教育した方がいいと思う。
その分は私らのような、おっさんおばさんのアマチュア勢から搾取すればよろしい(笑)
それが長い目でみれば、マーケットの維持拡大につながると思う。


* * *

*1:最近はコンボ勢の上位属性である音大勢もあるけど、これについてはその2で述べた

*2:逆にアドリブがある程度できるようになった場合、ビッグバンドだけでは物足りない

*3:その1でも述べたが、コロナが完全に抑制できず散発的なクラスター感染が起きるなら、ビッグバンドのような大人数だと、感染が出るたびに本番演奏が危機にさらされる

*4:とはいえ、長い人生の中ではたかが一年であるのも、事実だ。たかが一年、されど一年。今自分が40代になって思うのは、そこで燃焼しきらなくても、どこかで燃焼する機会はあると思う。

コロナウイルスがジャズシーンに与える影響 その2

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2020 因島

要旨:

  • ジャズのライブハウスも壊滅的な影響を受けているが、保護すべきはハコそのものではなく、ハコを運営している経営者だと思う
  • トッププロの活動が、日本のジャズシーンを担保している。ここが細ると衰退に向かう。
  • 音大勢からのプロマーケットの流入はコロナ以前から、構造的なバランスの悪さにつながっていた。コロナはおそらくこの層を直撃すると予想される
  • ライトなファンがマーケットから立ち去っても、マーケットのボリュームが立ち枯れる。
  • 全体の多様性を担保するために、様々な対策を考える必要がある

* * *

その1の続きです。

非常事態宣言がでて、飲食店のほとんどは営業・存続が難しくなった。
すでに4月18日現在、ほとんどのジャズバーは休業を余儀なくされている。
ミュージシャンのほとんども通常の仕事がない状況に追い込まれている。
jazz-zammai.hatenablog.jp
こんなことを書いていた頃が懐かしい。もうこういう甘いことは通用しなくなってしまった。

ハコ:

おそらくだが、非常事態宣言が解除されても、二次三次感染爆発が懸念されるので、ジャズの演奏が再開されるのは結構先のことになるのではないかと思われる。ジャズバーに関して言えば、この長期籠城戦に営業体力が耐えうるかどうかは、ちょっとわからない。

傷口が大きくならないうちに撤退するのも一方策ではないかと思う。
飲食業界全体のリセッション(景気後退)は今後数年は続くし、ひょっとしたらもう戻らないかもしれない。
長期トレンドをみると、人口減による需要減、それに続くテナント過剰は間違いないとは思う。
むしろ不完全ではあるがアベノミクスはこの人口減の状況の中で時計の針を戻す作用はあった。
 コロナ禍がおさまり社会がもとに戻ったとしてもよほどの好立地でない限り地価はさがる。

ゆえにお店を継続するにしてもテナント代の値引きくらいは交渉の余地があるはずだ。
不義理なようだが、閉店して、次が決まるまで設備も置かせてもらってもいいかもしれない。
 賭けてもいいが、次など決まらないからだ。
(固定資産税を払わなければいけないオーナーにも同情するが数年間はそんな感じだと思う。固定資産税も中期的には下がるが、やや遅い)

ジャズ愛好家からすると、馴染んだ店、行ってみたかったお店が閉店するのは悲しいことだ。
だが、真に保護すべきは、お店そのものではなく、ジャズライブハウスの経営者だと僕は思う。

経営者は今のお店を継続してほしいという消費者の期待を背負っているが、その人に余力が残っていたら店は多分再建できる。
大事なのはハコより人。
次にPA装置や楽器を含む什器だ。
ハコそのものはどうにでもなる。
(ただ、防音工事なども含めた設備費は普通の飲食店よりも高額になるので、ライブハウスは逃げ足が遅いのも事実だ)
後述するミュージシャンの新たな形態のような試みも一つだと思う。ニューヨークのSmallsというライブハウスはライブ録画とアーカイブをネット配信してサブスク収入を得ている。これも日本でも可能だと思う。ただし一つか二つまでのハコまでだろう。早いもの勝ちだ。

ミュージシャン:

ミュージシャンについていえば、ジャズにうごめく有象無象を模式化してみた。
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プロフェッショナルミュージシャン:

コロナショックで、現在完全にマーケットは凍結した状況になっている。活動再開の目処もたたない。
勝ち残ってゆくのは、演奏能力に加えて、セルフプロデュース能力や交渉能力、IT、ネットワークへの適応力、月並みな話だが人脈などの総合力を持つ人になるだろうか。レッスン、オンラインレッスン、オンラインサロンなど、インターネット空間での演奏活動でマネタイズできるようになるかどうか、が勝負をわけるかもしれない。
コンテンツの作り込みなどでも明暗をわけるだろう。
(以前にこんなことを書いた)
hanjukudoctor.hatenablog.com

* * *

このカテゴリの人は、いわば日本のジャズシーンを牽引する人たち。
この人たちの音楽活動が、日本のジャズの価値を代表している。
ここがもっとも大事な最終防衛ラインであることは皆認識しておきたい。

しかし残念ながら多様性は社会の余剰資本の大きさに依存するので、不況になるとどうしても淘汰圧が高まるのも事実だとは思う。

音大勢:

実はジャズのマーケットに関しては、過去数十年の大学ジャズ研勢に加え、近年、音大のジャズ科の卒業生が、例年大量にマーケットに参入するという現象がみられていた。そのため、競争圧力も高まっていた。
マーケットそのものは緩やかに下方局面であったように思うが、私は専門家ではないので、これ以上は語る数字をもたない。
このマーケット局面に対し、プロ勢は当然淘汰圧に適応するためにレッスンの拡大、セッション文化の普及によるアマチュア文化の拡大によるマーケット拡大、他ジャンルへの展開、焼畑農業式地方巡業によるマーケット拡大など、各人工夫をこらし、パイの拡充とニッチのマーケット探索を試みていた。
がそもそもここ数年のマーケット状況は、音大→プロフェッショナルミュージシャンへの流入過剰によって導かれていたと思う。*1
完全に需給超過という構造的な問題を抱えていた上に今回のコロナがやってきた。

ポストコロナで最も割を食うのはこの層なのではないかと想像している。
淘汰圧は今まで以上に厳しくなる。淘汰圧が高くなれば若いうちに志を断念するミュージシャンも増えざるを得ない。

最悪のシナリオは、ジャズも他のポップスとかロックとかと同じ「若気の至り」のようなモラトリアム期の音楽に堕してしまうことだ。20代のうちは中央沿線沿いに住みバンド活動して、30代になったら青森帰って実家のりんご農家継ぐ、みたいなやつ。
食えなくてもやっていける若い時期しか音楽との蜜月関係は許されない。

もうすでに今でもそうした傾向は多少あるけれども、不況になるとそれは高まる。
そうした中で音大ジャズ科のありようはいずれ見直されるべきではないかと僕は思っている。*2

セミプロ勢、コンボ、ビッグバンドのアマチュア勢:

この層については数十年間は変化がない。ジャズ研を出た人の中で本気でプロの道に飛び込んでいく人は一定数いるけれど、多くは本業をしっかり持つパートタイムミュージシャン(セミプロ〜ハイアマチュア)の道を歩む。
社会人になってもビッグバンド勢、コンボ勢、いずれかもしくは両方で活動を続ける人も一定数いる。
これはこれでマーケットの多様性を担保している大事な存在だとは思うが、不況には強い(本業が影響を受けるのでどうしても数は減ると思うが)。

今回のコロナでは、もうすでにジャズ愛好家の人は、雌伏して演奏できる時を待つ、ということでいいと思う。
なんなら今のうちに猛烈に練習したっていい。

最も大事なことは、我々自身がジャズの愛好家であり続けるためにはどうしたらいいか?ということだ。

マチュアのビッグバンドも演奏の機会が宙にういている。
セッションに行く人、バンドを組んでいる人も演奏の機会が失われている。
モチベーションも正直上がらない。
問題はちょっとライトなユーザーのジャズ離れかと思う。

大学のジャズ研も、新入生は構内に入ることさえ許されていない状態。
勧誘どころではないし。
もともとそこまでジャズにのめり込んでいない学生にとっては部活動がなくなればジャズに触れなくなる可能性の方が高い。

ライトなファンが一定数ジャズ研などから立ち去ってしまう可能性は十分にあるんじゃないか。
マーケットの力はやはり人数に依存する。
ライトユーザーが減ると、プロミュージシャンのリスナーも減る。
全体のマーケットも細ってしまい、結果的にはジャンルとしての衰退に向かう。


ライトなジャズ愛好家を保ち、マーケットとしてのパイを守るためにはどうしたらいいだろうか?
そして我々がジャズを好きで居続け、楽しい音楽活動(ライブを観るのも、演奏する方も、聴く方も)を続けるにはどうすればいいのだろうか?
多分これをみんなで考えていく時期なのではないかと思っている。

その3に続きます。

*1:マーケットの異常さの一つとして、若い女性プレイヤーの隆盛があげられる。もちろん最近の女性のプレイヤー、むちゃくちゃうまい。きちんとジャズでもあるけれど、淘汰圧の強いマーケットの中で売れるポイントとしての「若い女性」の要素は無視できない。少し歳を召して円熟味がでてくるはずなのに若い女性の新人が次から次へとデビューして押し出されてしまう。しかし男性ミュージシャンは舞台にもあげてもらえない。

*2:そもそも芸大・音大と言われるところはすべての分野において一握りの成功者しか輩出しないのが当たり前の世界だ。医学部のように入学生のほとんどが脱落せず専門職へすすむのが当然な業種からすると、ありえない世界なんだけれども、ま、みんなそれを納得して入学してくるんだよな……