半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

縦か、横か

f:id:hanjukudoctor:20200208160959j:plain:w300
与島。いつだったか…

ソロの時に大事なことはなんですか?

うーん、色々(笑)。


一般的な(大きな)話をしますと、ソロの時に注意をはらう要素としては、

  • リズム
  • コードに即したフレージング(音の使い方)

の二つが、まず考えられます。
もちろん、アタックの綺麗さとか、ピッチのよさとか、音色の綺麗さとか、構成のみごとさとか、他にも要素は山のようにあって、それこそ何に優先度を置くかで、その人のソロの個性になるんじゃないかとは思いますけど。

まあまずは前掲した両方の二つの要素。
これは楽譜をデカルト平面と考えると水平面がx軸で時間を表します。
x軸に刻んだ目盛りはある時点を表す。つまりリズム=縦方向の目盛り。
一方y軸の目盛りは音の高低です。横方向の目盛り。
それでリズム=縦、音の高低=横と称することが多いですね。「縦をそろえて」なんて、よくいいます。

縦か、横か、まずどっちが大事なんでしょうか?

縦の勝ち

結論からいうと、すばらしいソロは縦も横もきちんとしています。
ただ、どちらか一つを優先するなら「縦」つまりリズムだと思います。
究極的なことをいうとリズムが大事。

リズムがばっちりで音がデタラメと、リズムがふにゃふにゃでフレージングは綺麗、を比べたら、リズムがばっちりの方が圧倒的にかっこいい。

* * *

ジャズのリズムは、難しい。
何が難しいって譜面をみても再現できないところ。
八分音符のハネ、スウィング。
よく、2:1みたいに書いてあるけど、それはどうも違うらしい。人や時代によっても違うし、テンポによっても違う。
突き詰めればかなり深淵な話になるのですが、詳しくは最近刊行されたこれを読んでみましょう。
halfboileddoc.hatenablog.com

譜面だけからリズムを再構成できません。
リズムは、音源をきいたり、ライブを観たり、音そのものを聴いてグルーブの勘所を理解する必要があります。
そもそも、本物を聴いて感動しないとリズムを真似ようともなりませんし。

実際、リズムいまいちでフレーズは演奏できているパターンは、例えば、吹奏楽・クラシックの演奏家が「ジャズもいいよねー」と、売っている「ジャズ・アレンジ」みたいな譜面に手を出してみた、って時。
譜面を弾いている分には間違ってはいないけど、ジャズっぽさ、にはならない。
譜面からジャズに入ると、リズム(縦)がおろそかになります。これはいわゆる「お稽古事ジャズ」の典型で、かなりかっこ悪いと僕は思っています。*1

「ジャズ「も」できる」ではなく「ジャズ「が」できる」状態にならなきゃいけない。

だから、初学の段階では、譜面じゃなくて、とにかく音源を聴いて、それをバチっと真似する方がいいと思う。
もちろん、よく知っている人に習ったりアドバイスをもらったりして、真似きれないところはコツを教えてもらったりしながら。

ジャズのかっこよさは、譜面に写しきらないところに隠れているのです。

* * *

もちろん「横」すなわちフレージングが簡単かというと、そういうわけではなくて。
Bop-Idiomなんてめちゃめちゃ数学的で難解だし(逆に理路整然とはしている)コード記号からフレーズを作りだすのも修練が必要だったりします。この辺も、完成形である譜面だけ弾いていても、やはりモノにはならない。
ジャズっていう音楽は、クラシックや吹奏楽の訓練とは全く違う練習が要求されるわけですなあ。

でも、とりあえずは「縦」。
たった一音の連続とかでも、リズムがビシッとハマると、それだけで、スゲーかっこいい。

練習の過程では

というわけで、リズム(縦)に気をつけてアドリブしましょう。
しかしまあフレージング(横)にも気をつけましょう。
最終的には両方がきちっとしているのが理想。

まあしかし、そんな急に全ての要素に注意を払って演奏なんてできないものです。
車の運転でいうと、アクセルワークに注意するとコーナリングがおろそかになり、コーナリングに注意するとアクセルワークがおろそかになる。初学〜中級の段階ではどうしてもそうなる。

なので、最初のうちはリズムに気をつける曲と、コードワークに気をつける曲と、わけて注力してみたらどうかなと思います。
コードワークがシンプルな曲、いわゆる「一発」と言われる曲が代表的ですが、音使いはシンプルに、その分リズムにことさら注意を払って吹いてみる。八分音符のキレとかそういうのに注意を払う。
とにかく、自分のアイドルとも思えるような人のアーティキュレーションを想像しながらニュアンスを合わせるようにして吹いてみてください。なりきりが大事です。

リズム重視の曲コードチェンジ重視の曲
ブルース全般
St. Thomas
Blue Bossa
Work song
Watermelon Man
Doxy
一般に速い曲
All the things you are
Confirmationをはじめとする Be-Bopの曲
Have you met miss Jones?
I Remember You
Girl from Ipanema


反対に、コードワークが複雑な曲をやってみたらわかりますが、不慣れな状態では、ビタッとかっこいいタイミングでフレーズが入りません。なぜなら演算に時間がかかっちゃうから。リズムにも注意を払って複雑なコード進行に沿ってフレーズが繰り出せると、かなりカッコよくなるでしょう。でも最初は転調に沿ってフレーズを繰り出すところからですかね…

もちろん、これは一例にすぎません。
リズム重視の曲もコード重視の曲も、0-100%ではありませんし、その中間の曲も、やまほどあります。
リズムもコードも、両方完成度が高くないとかっこよくない曲もあります。
ファストテンポで、コード進行が複雑な曲は、縦横どちらも両立しないと難しい。
例えば、Invitationとか、Chrokeeとかでしょうか。

もちろん、中級以降の人は、敢えて逆パターンを攻めるのも一つの手法です。
リズム重視の曲で、シンプルなコードワークを、大胆にリハモしたりアウト・フレーズを繰り出したり、横の複雑さを追求する。
逆にコード重視の曲で、リズムに注力したフレーズで攻めるとか。
最終的には、リズム(縦)でも、コードワーク(横)でも縦横無尽に遊べるのが理想だと思います。

ただ、初学の段階では、リズム練習に向いている曲、コードワークの練習に向いている曲は、ちょっと頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。

*1:ただ、そのかっこ悪さは、当人にはわかってもらえないですね…もどかしいです

コロナウイルスがジャズシーンに与える影響

f:id:hanjukudoctor:20120506130352j:plain:w300
2012年 広島県、神石高原町

当初予想していたよりもコロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV-2)はおおごとになった。
最低でも半年くらいは閉鎖空間での演奏に対して下方圧力が働くのは間違いないようだ。

* * *

冷戦が終わり、21世紀になって、世の中は進歩した。
世界は一つに繋がり、国や人種の壁を超えて、富や文化を享受する時代になっていた。
しかし今回のコロナウイルス禍は、そういうグローバルな社会の在り方そのものに冷や水を浴びせる出来事のように思われる。

ジャズというジャンルにとって衝撃が大きかったのは、ジャズそのものが、出自はアフロアメリカンのリズムというローカル音楽なのに、様々な音楽と融合し進化を遂げ、コスモポリタンな要素を備えた普遍性の大きい音楽になっているからだと思う。
すこし大げさかもしれないが、グローバル社会の、そしてグローバル人材(コスモポリタン)における知的貨幣として、ジャズは膾炙していた。
コロナはそのコスモポリタニズムを、決定的に傷つけた。
我々の精神的動揺はそのせいもあると思う。

* * *

リーマンショックの時に、ミュージシャンをやめた人が多かったのと同じく、専業ミュージシャンが、収入を演奏のみに頼ることは難しくなってくる。
収入の複線化は避けられないだろう。*1
私は団塊ジュニア世代なわけで、僕らの学生卒業時には、いわゆる「就職氷河期」があった。
そのためか、この年代のミュージシャンは人口の割に数が少ない印象がある。*2

ものすごく楽観的に言えば、ジャズミュージシャンはもともとニッチで予算枠の少ないマーケットであるから、大勢に影響ないかもしれない(笑)。
いやそんなことはない。収入の絶対的下げ幅は低くても、生存可能年収のボトムラインを割り込むリスクはやはり高いだろうから。
ここ最近、国内の閉塞的な状況を打開すべく、中国や東南アジアへ進出している目端の利いたミュージシャンにとってこそ、今回のウイルス禍は打撃が大きいだろう。グローバル人材こそ、コロナの影響は大きいのだから。

しかし、実はもっとも懸念しているのが、学生のジャズミュージシャンだ。
ビッグバンドも、コンボもだ。
ミュージシャンとしては揺籃期の大事な時期にこういうショックが襲ってくると影響は大きい。
見通しが明るいなら頑張れても、見通しが不透明だったり暗い場合、頑張れる人はそう多くはない。

学生ビッグバンド

まず、学生ビッグバンドについていうと、逆風の条件が揃っている。

  • ビッグバンドはバンドの参加人数が多い。なおかつ管楽器なので、不顕性感染のエアロゾル感染のリスクが無視できない。観客動員数も多い。必然的に、ハコの人口密度は増える。

私も学生時代ジャズ研に所属し、ビッグバンドもやっていたが、一年の活動の中で、コンサートホールや野外もあるけれども、数度は少し大きめのジャズクラブとかで演奏する。そういうのは、もし感染流行地域であれば、難しいだろう。ビッグバンドの多くは地方の中核都市や大都市圏に存在しているので、そういう意味では流行地域の警告を受けやすいと思う。もっともこれは、吹奏楽部も状況は変わらない。ロックバンドなどはさらにライブハウス内の人口密度が高くなるわけだし。

  • ビッグバンドは参加人数が多いわりに、メンバーの替えが効かない。

数ヶ月間濃厚なパート練習、セクション練習、合奏を繰り返して一つのサウンドを作っていくわけだが、もし感染、感冒症状があったりした時に、そのパートが抜けるとバンドサウンドが成立しないのである。
結果として、例えば症状を隠してステージに立つという事象は、構造的に生じやすいことは認識しておいた方がよい。
山野ジャズバンドコンテストのシード校などは、今年に限っては、各パートにリザーバー(補欠)をしっかり用意しておいて、ある程度の感染にも対応できるようにしておいた方がいいと思われる。リザーバーも含めてパート練習をしておき、保険をかけておいた方がいい。

国内イベントなので、オリンピックが中止になっても国内が収束していれば可能かもしれないが、感染フェーズが遷延していると厳しいかもしれない。
学生ビッグバンドの精神的支柱である山野が開催されない場合、しかもそれが複数年に渡って、ということになると、ジャズシーンもかなり盛り下がってしまうような気もする。地方のジャズフェスも3月4月は軒並み中止になりつつある。これが5月以降どうなるかはちょっとわからない。

マチュアのビッグバンド活動の活性度は多分落ちる。
プロのビッグバンドも、Player's Musician的な意味合いも大きいので、必然的にマーケットは細ることが危惧される。

コンボ

大規模動員を必要とするビッグバンドに比べると、都会の片隅でひっそりと演奏を行うようなコンボ・セッションなどは、それほど影響がないように思える。
ただ、こちらに関しては、マーケットのパイは確実に狭まる。
消費増税不況で弱っていたところに、コロナで、インバウンドの激減、外出の自粛。
 さらにいうと、リーマンショック級の不況で、都市住民の可処分所得の減少は避けられない。
飲食業界すべてが厳しい中、ジャズクラブも例外ではない(もともと厳しいのだ)。

今すでにあるパイの奪い合いになると、ミュージシャンとして確立している、特に専業プロミュージシャンたちが、優先されるべきであるしまた、優位なのである。
今後予想される環境の中では、新規参入障壁は相当高くなる。
もちろん、トップ層のおそるべき新人たちは、そんな環境など関係ない。
ただ、100人が食えていた状況が、30人しか食えなくなるのなら、別の時代ならプロになれた人がプロを断念する、ことも大いにありうる。
特にお店でセッションホストを任されるくらいのセミプロくらいのクラス、に影響が大きいと思う。

まとめ

  • マーケットそのものがシュリンクすることはおそらく規定路線。
  • プロミュージシャンのマネタイズはよほど知恵をしぼらなければいけない。
  • 近年の動向を踏まえてグローバルマーケット開拓に舵を向けていた方々は、より影響が大きいかもしれない。
  • 私も含めてセミプロのミュージシャンは、仕事の方の厳しい下方圧力と、厳しい淘汰圧にさらされる。

個人的には、本業で食えているアマ〜セミプロのミュージシャンは進んで専業プロミュージシャンの養分にならねばいけないような気がする。
ゲストとしてプロに参加してもらうようなライブを増やすとか、レッスンを受けたりするのを増やすとか。
我々にとっては「すげえ人と一緒に演奏する」もしくは「すげえ人の演奏を目の当たりにする」喜びが、何より勝ることだ。
すげえ人が、音楽の道を折らないようにする方法を考えなければいけないだろう。
そうじゃないと我々が楽しめなくなるのだから。

ジャズの向学心に燃えている諸君について言えば、残念ながら時期が悪すぎ、楽観的な状況ではないことは認識しないといけない。
 プロを目指すには相当ハードルが高い時代になるだろう。

 しかし、それは音楽を捨てるということではないのだよ。
 世の中0か100か、ではなく、その中間の段階はいくらでもある。
 どうせ、どの時代だって、ジャズですごくお金を稼ぐなんてことは難しいという事実を受け入れよう。
 お金のためにやる音楽じゃないんだ。
 真面目に自分の音楽を練っていれば、上手い人と共演するチャンスはいくらでもある。
 その時に、自分に失望しないように練習をしておくことだ。

あとは、お店での演奏=ライブ以外の媒体とか、演奏形態の複線化も考えなければいけないようには思う。
今回のコロナ禍はYoutubeとか動画発信する人を爆発的に増やしそうな気がする。
僕もやってみようかなーなんて思う。
あとは、ストリート演奏ね。ストリートやりたいな。
 

*1:かといってこれまたグローバル社会の象徴であった投資にもしばらくは逃げられそうにない

*2:プロミュージシャンもそうだが、セッションにくるミュージシャンという観点でも、我々の世代は「生存比率」が有意に低いのである。可処分所得あっての音楽活動なのだろう。

感染の流行期におけるライブハウスにいく方法

f:id:hanjukudoctor:20200312134401j:plain:w300
ある日のジャズライブハウス。お互いに2mくらいの距離が余裕で取れちゃうのである。

コロナウイルス(COVID-19)によるイベント自粛が続いている。

学校は休校となり、ライブハウスやスポーツジムなどを介したクラスター感染が報告され、
ライブハウスは感染のリスクが高い危険な場所であるとアナウンスされ一般的に受け取られている。

ところが、ジャズのライブハウスの多くは、どちらかというと、ライブハウスというよりはバー営業に近い。

ロックは500人の観客の前で3つのコードを演奏するが、
ジャズは3人の観客の前で500のコードを演奏する

というジョークがあるけれども、そんな感じだ。
もちろん日によってライブハウスの混雑状況も違うので、いちがいには言えないのである。

ライブハウスに行っても、感染リスクを最小限に抑える方法はないものか、を考えてみた。

ちなみに、この考え方は冬季の風邪の流行期、インフルエンザやノロウイルスの流行期にも同様な、普遍的なものではある。

1.行かない

身も蓋もないが、リスクをできるだけゼロにするならば、最良の方法は、やはり行かないことだ。
うまい話というものは、ない。

どんなに注意していたって、例えば道でコロナウイルス感染患者とすれ違いざまにくしゃみの飛沫を浴びたりすれば、感染はしてしまう。家に居たって、家族が持ち込むリスクもある。
そういう意味では、ポツンと一軒家とか昭和基地とかの特殊な状況をのぞいて、都市生活者はウイルス感染のリスクを完全に防ぐことはできないのである。
しかしライブハウスに行かなければ「ライブハウスに行くという能動的な行為の結果、感染してしまう」という不見識に対して非難されることは避けられるだろう。

2020年の3月現在、医療従事者でもある僕は、活況なライブハウスに足を踏み入れることは、なかなかできないのが実情だ。コロナウイルスにかかった場合のデメリットが大きすぎる。
少なくとも現状の社会のコンテクストでは、ライブハウスに頻繁に出入りするという行動は推奨されないだろう。
hanjukudoctor.hatenablog.com

* * *

ただ、この状況はずっと続かない、というか続けられない。
ジャズ系のライブハウスの経営は脆弱であるし二週間ならともかく数ヶ月に渡る休業に対応はできないだろう。
どこかで「ゼロリスク」を脱するフェイズに移行する。せざるを得ないのである。
経済は止まると死ぬのだから。

なのでこのフェイズではリスクを相応に認識しつつライブハウスに行くことになる。
誰かが「もう大丈夫、解禁ですよ」とアナウンスしてくれる可能性は、低い。

ライブハウスに行く・行かないという二分法ではなく、行くならできるだけリスクを減らす努力がその過程でば必要になる。
ライブハウスには行く。次善の策で感染リスクはできるだけ下げる工夫を考えてみよう。

* * *

話はかわるが「オギノ式避妊法」はご存知だろうか。
排卵日前後の性交は妊娠の確率が高いというやつだ。
これは、しかし本来は避妊のための方法論ではなく妊娠の方法なのである*1
避妊の方法としては
排卵日の前後にはゴムをつけて、そうでない日(安全日)にはゴムをつけずに性交する」ではなく、
「安全日にはゴムをつけて性交をし、排卵日の前後には性交しない」。避妊するならこれくらい慎重である必要がある。

感染リスクの話もこれと同じ。
絶対にライブハウスでコロナウイルスに感染したくなければ、ライブハウスに行かないという策以上のものはない。
しかしいくなら最上の努力はしよう。

2.感染リスクの低いハコの条件

まずは物理的な条件である。

  • 手指衛生消毒が入り口付近に設置されている
  • 感冒症状のある人をお断りするようにしてある(健康チェックをしてあればなおよいが、これはそうもいかないだろう)。

その意味で、感染をおしてさえも参加したくなるようなプレミアムチケットは、リスクが多少あがるかもしれない。いいミュージシャンのライブは、ややリスクが高い。参加者のモラル障壁がさがるから。

  • 店内禁煙である

空調管理の問題であったり、喫煙による副流煙コロナウイルス以前に健康を害する。喫煙OKは店側の健康意識の低さを反映している可能性もある。*2

  • 店の床面積がそれなりに広い(人口密度が低いと、飛沫感染のリスクは低くなる)
  • 外気の取り込みが容易で、休憩時間ごとに換気をしている

エアロゾル感染を防ぐためには、こうした工夫が必要だ。防音の関係上都市部のライブハウスは気密性が高い。これがエアロゾル感染の温床になる。
一セットごとに換気すればエアロゾル感染のリスクは減少する。ただし、テーブルや椅子、服に付着したウイルスは換気では除去できない。
人口密度が上がるようなライブ=つまり集客が見込めるような有名なアーティストによるライブは、残念ながらリスクが高くなる。また、そういうライブは、遠距離から多様な観客が集まり、地域の人口流動も招くため、量だけでなく質的にもリスクを押し上げるだろう

以上のことは観客に感染者が混じっている場合の対策と言える。環境のリスク。ということになるだろうか。

3. 演奏者が感染者であるリスクを考察する。

次に演奏者が感染者である場合を考察してみよう。
演奏者が感染していたら…という疑惑は完全に払拭することはできない。不顕性感染(スプレッダー)は、本人の自覚症状は全くないのだから。それにフリーランスの演奏者は少々の体調不良でもステージに上がるのではないか?という懸念もある。

ただ、ジャズミュージシャンに限れば、バンド単位ではなく個人で活動をしている。ジャズという音楽形態はフレキシブルなので、体調が悪い場合にトラを頼みやすい形態だ。その分リスクは下がるかもしれない。*3
実入りの多い舞台、バンド単位の活動(特にビッグバンドなど参加人数が多い形態)などは少しリスクが高くなるかもしれない。

また、ステージと観客席の間に距離がある方が安全かもしれない。
それから、管楽器、ボーカルのライブよりは、ギター、ピアノなど息をつかわない楽器の方がエアロゾル感染のリスクは低いとは思われる。もちろん、管楽器奏者、ボーカルが感染していなければ全く問題はないのだが。逆に、観客の感染を、彼らはもらうリスクが高いという面もある。

3.ライブハウスにおける観客の望ましい行動

環境については完全に自分の裁量では決められないかもしれないが、ライブハウスでの行動は、ある程度個人でコントロール可能だ。

  • 飲食を避ける

エアロゾル感染はある種避けられないが、接触感染、飛沫感染はライブハウスでの飲食を避けるとかなり回避できる。
飲食の際手洗いしていても、観劇しながら長時間テーブルに晒されている食物を摂取することは、かなりリスクを押し上げる。食べ物にウイルスが付着するかもしれないからだ。
食べ物は、例えばつまみや乾き物やお菓子のような、指でつまんで食べるようなタイプの食材が一番いけない。手指に付着したウイルスを体内に入れることになるからだ。*4
考えたくないが、お店のスタッフに感染者がいる可能性というものも念頭においておく必要がある。その場合は調理された物ごと汚染されている可能性もある*5

飲み物に関しては、カクテルや水割りのような手間を介するものよりも、開栓して瓶から直接飲む形式のものの方が安全である。
瓶ビール、ジンジャーエール、コーラ、ZIMAなどのようなものでもよい。
グラスよりも瓶は開口部も狭い。ウイルスが液面に落ちたり、飲み口の縁に付着するリスクもかなり下がる。
例えば、こうしたドリンクに、切ったライムを入れてサーブするお店もあるが、感染流行期にはそうした一手間は感染を招くので断る方がいいだろう。

" Thank you, But I'm Ninja " の精神。
忍者は毒物の混入を避けるために他所で飲食はしないのである。
はなから口をつける気がないのなら、高い酒でも頼みたまえ。お店の売り上げに貢献しよう。

  • ボーカルもしくは管楽器の正面に席をとるのは避ける。

もっともエアロゾル感染であれば、多少避けたところで店が狭ければ無駄かもしれないが、ある程度広いのであれば、距離をとるべきだ。

  • マスクはつける

可能であれば観ている間も、マスクはつけておいた方がいいかもしれない。直接予防効果はないかもしれないが、飛沫感染を多少は防げるかもしれない(ただ、エアロゾル感染には無効)
かなり近接距離での会話、ボディータッチ、ハイタッチなど(ジャズではみたことないけれども)はしない。
モッシュダイブもしない。ジャズではもちろんしないけど。

  • 滞在時間を減らす。

時間依存性にリスクは減るだろう。長居は無用。

 コロナウイルスなりノロウイルスなりインフルエンザなり、口の中にウイルスが直接入るリスクは避けられても、手指にウイルスがつき(飛沫感染を受けたものに手があたると、手指にウイルスが付着する)、手洗いせずに食事をすれば、口の中にウイルスが入ってしまう。手洗いはすごく重要だ。*6
 ただ、20年前にはなかったデバイススマホについては、あまり注意が払われていない。
 例えば、家に帰る途中で、スマホを触る。
 帰宅する。
 手を洗う。
 手を洗ったあとで、食事をする。

 さて、食事する時に、先ほどのスマホを触りましたか?
 もし触ったのであれば、帰宅する前についていたウイルスが、もう一度手についた可能性は大いにある。
 帰宅する時、手洗い・うがいをすると思うが、この時に、スマホも丸洗いすることを強くオススメする。

 これはノロウイルスなどでも同じだ。スマホってトイレに持ち込んだりすることもあるじゃないですか。
 スマホは定期的にクリーンナップする習慣をつけよう(エビデンスは今の所ありませんけどね)
 帰宅したあと、着替えるのも有効だと思う。

まとめ:

  • 基本的にはライブに行かなければ、ライブハウスで感染することはない
  • 行く場合は、小さな工夫を積み重ねて、リスクをできるだけ少なくする努力はしよう

私は感染症の専門家ではないが、一般医家の立場で、そしてアマチュアミュージシャンの立場でこれを書きました。異論反論は受け付けますが、私の愛する(金銭的に苦戦している)ジャズコミュニティが救われますように、祈るばかりだ。
個人的には、エアロゾル感染がどれくらいのリスクがあるかデータがないのが、難しいところだ。おそらく人口密度に累乗してリスクは上がって行くものだとは思うけれど。

*1:荻野博士がこれを提唱し、オーストリア人のヘルマン・クナウスが原理を逆転させて避妊法として発表したらしい

*2:逆説的だが、喫煙を許容するためには空調の性能をあげているがためにウイルス感染を防ぐ、なんてことがあるかもしれない。しかしエビデンスはないので、一応この項目はこうしておこう。4月の新法導入によって店内喫煙OKはかなり少なくなるはずだ。

*3:ただジャズミュージシャンの平均収入の少なさは、リスクを押し上げているかもしれない、と補足はしておく

*4:その意味では、スナックという類の場所は相応に危険だと思う

*5:もっともこれは一般飲食店も全く同じだ

*6:ジャズクラブの水回りは投資が後回しになっているために貧弱なところもある。きっちりした洗面スペースのあるところを推奨したい。ちなみにペーパータオルではない備え付けのタオルは絶対に使わない方がいい。その意味でハンカチを持ち歩いた方がいいかもしれない。一度使ったハンカチはすぐ洗濯に回すようにする。何日間も同じハンカチを使い回すならウイルスを手に塗りつけているのと同じだ。もっとも、流水でしっかり流し、濡れた手を拭き取るだけであればリスクは極小までさがるとは思うが

セッションのロードマップ その3ー演奏していない時

f:id:hanjukudoctor:20190913105734j:plain:w300
なんて清らかな目なんでしょう…たべられちゃうのに。息子撮影。

セッションに参加しています。
今日はかなり人が多いようですね…あんまり出番はなさそうです。
吹いていない時間には何をしているべきでしょうか?

はい。これすごい大事。
中級者の「なんでもやりたい病」の時は、参加していない時間は負けだと思いがちです。
そんな時は誰でもあります。
それは仕方がありません。
だが、そういう「若気の至り」的な時期は早めに卒業しましょう。*1

例えば、オープニングにホストの人が演奏するなんてパターンあるじゃないですか。
僕も初級者・中級者の時には、「いいから、早く吹かせろよ!」とか思っていました。
やりたい盛りの男子中学生、みたいな感じでした。
でも、実はこの吹いていない時間に、できることはたくさんあります。

セッションは場末のカラオケスナックとは違います。
自分が弾いていない(吹いていない)時も音楽を聴くようにしましょう。
そこで、スイッチを切ってしまうのは、とってももったいないことです。*2

ホストによる演奏:

ホストメンバーの演奏は、その日の演奏の基調を決める大事なデモンストレーションです。*3
・それぞれのリズム、ハーモニーなどのスタイル、ソロのスタイル、ノリ。
・八分音符の裏の位置。
・ベースとドラムが、どちらが前にでているか。
リズムセクションとのアイコンタクトなどで、リズムセクションとしての相互了解の様子。

ラーメン屋さんでいうと、まずスープだけ味わう、みたいなもんです。
これをきちんと聴かない参加者は、所詮はリズムセクションをカラオケの伴奏くらいにしか思っていない人です。
しっかりと本日のスープの具合を味わいましょう。

それぞれの曲について:

理想的なセッションでは、リズムセクションもフロントも色々な組み合わせで、曲をこなします。
したがって、参加者同士のスタイルが噛み合っている場合も、噛み合っていない場合もあります。

噛み合っている場合は、その完成度の高さを堪能しましょう。
噛み合っていない場合は、そういうすれ違いもまた、セッションの一つの姿として楽しみましょう。
 不思議なことにみんなうまい人なのに、あまり噛み合わない、みたいなことはあります。

演奏しているそれぞれのプレイヤーの演奏を言語化してみましょう。
可能なら、立ち会ったセッションの曲とメンバーの印象や、曲の進行などを素描というか、メモしたりしても面白いですね。

プレイヤーの印象を探る場合、出来るだけいいところを探すようにしましょう。
もし悪いところも探すにしても、いいところ3に対して悪いところ1くらいに留めておきましょうね。
鋭い批評眼は、自分の演奏にだけ向けていればいいのです。*4

イントロ、エンディング、それからバースなどの進行も、自分の予想と実際の結果に乖離があれば、なぜそうなったかを考えてみたりしましょう。特に、エンディングはうまいミュージシャンのうまさが出ます。

基本的な態度:

アウェイのセッションで演奏する時には特にですが、自己紹介と挨拶は欠かさないようにしましょう。
曲の合間で、一緒に演奏した人に、お礼がてら話しかけるようにしましょう。
セッションはコミュニケーションです。
*5
もし可能でありましたら、FacebookなどのSNSで繋がるようにしましょう。
「この人と2度と会うことはないかもしれないな」なんて思っていても、数年後、他の人とFacebookで繋がったりした時に、友達の友達という形で話の糸口になったりすることはよくあります。狭い世界ですから、お互いの交友関係って結構重なるもんです。

Facebookでメッセージをやり取りする時は、

「先ほどは XX(地名)のXX(お店の名前)でお世話になりました!」

とか、メッセージに店の名前とか出会うきっかけを書いておいた方がいいです。
私はいろんなところでセッションに出没していたりするのですが、忘れちゃうんですよね。
なので、こうやって書いておいたりすると、忘れません(日付はメッセージに付いてきます)。

自己紹介になるようなSNSのトップページが望ましいですね。
また、名刺のようなものを作るのも一つです。
私は、仕事の名刺に加えて、こういうセッションとかライブ用の遊びの名刺も作っています。

* * *

また、メッセージのやりとりのきっかけになりうるのは、写真でしょうか。
みな、自分が演奏している時の写真は撮れない。
なので、演奏していない時に、写真をとっておき*6、あとでメッセージとともに写真を送るとよいでしょう。
これ、結構ありがたいものです。
メッセージなら問題ないと思いますが、オープンなSNSに写真を載せる際には、写真を載せていいかどうか訊くようにしましょう。
*7

まとめ:

自分が参加していない演奏でも、きちんと聴くことができれば、自分が参加する曲の2〜3倍も経験を積むことができます。
自分よりもうまい人たちの演奏は、すごく勉強になりますが、うまい人とちょっと初心者の人が混じっているようなセッションも、それはそれで、試合運びとかそういうやつの参考になります。*8
他の人の演奏も「わがこと」として吸収することが、ジャムセッションを楽しむコツだと思います。

*1:ま、しかし正直にいうと若い参加者達は総じて紳士的です。こういうSelfishな行動は私の近しい年代のオジサンプレイヤーに実に多いので、けしからんことですよ。

*2:多分、そういう人って、ライブには行かなくてセッションだけに来るタイプね。

*3:ホストのレベルが参加するミュージシャンのレベルを規定します。たまにホストよりも随分格上のミュージシャンが遊びにきたりもしますが、そういう場合はホストの態度がそういう感じに変わるので、すぐわかるでしょう。

*4:別にいいとこ1、悪いところ3書いたノートとってもいいけど、他の人に絶対みられちゃいけない「デスノート」になっちゃいますからね……

*5:もちろん、絶対的な美を求める領域に近づくためにセッションに参加する人がいてもいいです。"Blue Giant"みたいな、ね。私もそういう演奏を目指したいものですが……

*6:写真とっていいかどうかはなんとなくホストか店の人に訊いてみてください。まああまり有効な返事は帰ってきませんが

*7:中には家族には「仕事だ」なんつってセッションに参加している人や、不適切な男女関係でセッションに参加している人もいたりしますので。僕もこれしばしば忘れがちですが。

*8:私は、セッションの中で「本日のベストテイク」のような、汚泥に咲く一輪の蓮の花、みたいな演奏に立ち会うのが好きです。私自身はそこに入ってなくても全然いいです。もし自分が入っているテイクがそれなら、とても嬉しいことですけれども、まあ僕そんな実力はないですわ……

セッションのロードマップ その2(破)

f:id:hanjukudoctor:20120219125013j:plain:w300
象って体が痒そうに見える。

その2:「破」

jazz-zammai.hatenablog.jp

初学の段階では、ジャムセッションの演奏を壊さないように、うまくバンドの一員として参加することが求められました。
まずは参加し、自分の「仕事」をきっちりこなすこと。

セッションに慣れてくると、その段階を超えてバンドにコミットすることが求められます。
一曲一曲をなんとかこなす段階からレパートリーも増えて、演奏できる曲が30-40曲くらいに増えてきたら、次の段階です。
(どの曲を手がけるべきか、については下記を参考にしてください)
jazz-zammai.hatenablog.jp


バンド全体を見渡すことができること。
曲の起承転結をコントロールできること。
要するに、少し広い視点をもって演奏する技術ですね。
結果的にはホストにとって、安心感・安定感を期待できるプレイヤー、と言えるでしょうか。

セッションホストが塾頭だとすれば、塾生筆頭を目指してください。
魁!男塾における、ホスト=江田島平八に対して、剣桃太郎を目指すわけですね。
例えば適塾においては、緒方洪庵に対する福沢諭吉の立場を目指すわけです。

セッションホストにしてみれば、こういう人がいると、ジャムセッションのメンバーを組みやすい。
ホストにとって都合のいい人、になることを目指しましょう。
与えられた状況の中でいい演奏をしたり、他のプレイヤーを支援するような行動ができれば、セッションが非常に円滑に、楽しく回ります。

人の出してきた曲に乗っかる

初心者の場合「僕Autumn Leavesしかできません」てな感じで自分のできる曲を指定して演奏に参加していました。
できる曲が増え、ジャムセッションの参加者の中で「最も未熟な人」から脱すると、他の人が指定した曲の二番手、三番手として参加することが増えると思います。
誰かが曲をコールして、それに乗っかる、というパターンですね。
「後の先」という感じでしょうか。
初心者では、これはなかなか難しいですから、他の人がもってきた曲に無理なく参加できるようになってくると、中級者の一つの証であるといえます。

この段階を無理なくこなすためには

  • レパートリーを増やす
  • レパートリーにない曲もその場でリードシートをみてざっと概要を掴むことができる

能力が必要になります。

インストに関しては、よほどジャズオリジナルの難解な曲でなければ、Standard Bilbleの1&2をすべてさらってしまえば、大方の曲には対応できるかな、と思います。
え?途方もない?
途方もない作業に思えるかもしれませんが、家でピアノを触ったりしながら、曲の大まかを掴むという感じだったら、結構できますよね。*1ま、すべて暗記は現実的ではありませんが、一度くらい総なめにしてもいいと思う。

ところが、歌伴は、それをしていても対応が難しいことがあります。
歌伴は、キーも違っていたり、進行も違うこともよくあるから。*2
やはり全く手探りの状況で即時対応することが求められる。
その辺が歌伴の妙味だとは思いますね。*3

* * *

フロント楽器を想定しています。インストの話に戻しましょうか。
「人に乗っかる」パターンであれば、主役のリーディングソロのあとに、二番手・三番手のソロを引き継ぐ役です。
全体の進行を考えた上で、ソロをとりましょう。
サイズや展開に少し注意を払ってみてください。
たとえコンパクトなサイズであったとしても、起承転結を盛り込みまとまったソロを取ることは可能です。
そういうのを目指しましょう。

ソロの完成度で、リーディングソロを上回る感じで吹ければ、テニスで言えば、相手がサーブ権をもっているゲームで勝ったような気分になります(サービスブレイク)。
もちろん、ある曲では、John Coltraneのようにどっかり腰を据えて重厚なソロを展開するのもありだと思います。ただ、それをケースバイケースで判断してください。リードソロの人の構想を大きく裏切らないように。*4
jazz-zammai.hatenablog.jp

リズム楽器については、よほどのレベル差がない限り、フロントがコールした曲を演奏することが求められることが多い。
なので、リズム楽器は、フロント楽器よりも早い段階でこうした「なんでも弾けないと」という状況に直面しますね。
そういう意味で、リズム楽器の方が、早く中級者に至ることが多いと思います。

バンドサウンドを円滑に導き、盛り上げる部分を演出し、破綻を未然に防ぐ。

初心者のフロント奏者の場合、テーマの部分と自分のソロに興味は限定されていることが多い。
リズムセクションにしても、初学の段階では自分のソロとバッキングに興味は限定されるものです。

しかし、ジャズも他の音楽と同じで、全体での調和が大事なわけです。
すこし慣れてくると、楽曲全体のサウンド、バランスなどを視界に入れることを心がけましょう。

  • ある瞬間における、バンドサウンド全体のバランス。
  • 曲の最初から最後までの起承転結・構成。

の二つを意識しておきましょう。
プレーヤー間のバランス、曲の始まりから終わりまでのバランスの二つです。

これがわかっていたら、空いたスペースや、自分が頑張るべき部分と、あえて頑張らない部分とが見分けられるかもしれません。

リズムセクションが初心者だけだと、サウンド全体を見渡せていない演奏になることがあります。
そういう演奏では、不確定要素に対応できないし、お互いがお互いの音を聴いていません。ソリストの音も聴いていないので、盛り上がりに追随するできません。
でも、こういう状態に上級者もしくは中級者が一人混ざるだけで、サウンドの堅牢性がかなり高まります。

全員がお互いをきちんとみれているリズムセクションでは、様々なアイデア創発される、非常に心地よいサウンドを期待できます。
こういう人たちが参加していると、もしフロントプレイヤーが迷っていたら、わかりやすいきっかけを出したり、迷わないようなサウンドにできます。わかりやすくするも、わかりにくくするも、自由自在です。

残念ながらフロントプレイヤーは、演奏に参加する時間が限られているので、サウンドが迷走した時に整えられるチャンスは少ない。
しかし、例えばリズムセクションの拍子が裏返ったりしている場合には、ハンドサインを出したり、例えば白玉のわかりやすいオブリガードを出すなどによって、正しい道を示すこともできます。

次のレベルに行くために:

中級者になったばかりで、大抵の曲ができるようになった人たちは、言ってみれば「やりたい盛り」です。
初心者の時は、この曲はできる、だから参加。
この曲はできないから参加しない。こんな感じです。

しかし、実力がつけば、できる曲が増える。
「できる曲に参加する」という考えだと、すべての曲に参加するようになってしまう。
この辺のことを、セッションのバランシング、に書きました。
jazz-zammai.hatenablog.jp

つまり、自信をもって、「この曲はやらない」という引き算を取れるのが、中級者としての完成、と言えそうです。
実際、この中級〜上級レベルでは、フレージングでも、押せ押せ一辺倒ではなく、うまく引き算をして、余白を活かしたフレージングが求められます。

複数のスタイルを身につけ、ソロによってスタイリングを選べる。
複数の道を選べるためには、色々なスタイルであったり、いろいろなパターンを知悉していく必要がある。
何通りのカラーを出せるか、そして、それを自分のソロの進行に展開できるか。

これは初心者に限らずなんですが、自分一人でサウンドやソロのフレージングを考える。
そのことは全然いいし、そういうインサイドワークをしないとよきソリストにはなれません。
しかし、セッションのような複数のプレイヤーの思惑が錯綜するような場では、かならずサウンドは自分の思っている方向には行きません。
時には、強引に自分のエゴを通すこともあるかもしれない。
しかし、時には他の人のエゴをいなしたり、時にはお互いに歩み寄って、ちょうどいい落とし所を設定するような行動ができれば、そういう選択肢を常にちらつかせながら、カードを切っていくことができれば、セッションの予測不能性をよい演奏の材料にすることができる資質を身につけられるのだと思います。

*1:個人的には 2はまあまあ難解な曲を含んでいるので1だけでいいかな、とは思う。

*2:verseの部分はリズム楽器とのルバートだったりするので、フロントはあまり関係ないのが救いですが…

*3:テイクゼロで演奏をこなせる勘の良さが、すぐれた歌伴奏者の資質です。もっともこの能力はミュージシャンの能力の一つにすぎません。→曲をこなせるようになる、というのはどういうことか考えてみた。 - 半熟ドクターのジャズブログ

*4:あえて裏切るのもまた一つの選択肢ですけどね。

セッションのロードマップ その1(守)

f:id:hanjukudoctor:20120219130822j:plain:w300
キリンの舌は長い

ジャムセッションは楽しい。

ジャムセッションにはいろいろな形態も、いろいろなレベルもあります。
もちろんそこに参加する我々にも、慣れや習熟度の点である程度の段階があります。

初級・中級・上級、という言い方はなんですが、守破離、の三段階にわけて
それぞれの段階におけるガイダンスをしてみましょう。

その1:「守」

セッションの参加者の経験の浅い人。ジャズの初学者の人。
ジャムセッション行ってみようかなー…でも怖いなー」という感じだと思います。
具体的にはこんな方々ではないでしょうか。
どんな曲でも参加できるわけではなく、限定した曲のみ参加できる状態。
この状態が出発点です。

  • ジャズは聴いたことがあるけど、実際に演奏するのはあまり経験がない。
  • 先生について、習っている。発表会では吹いたりしたことあるけど…
  • ピアノは昔から弾いているけど、ジャズいいなと思って、ジャズの譜面とか家で弾いてます
  • 大学・高校のジャズ研でセッションみたいなやつはやってるけど、外のセッションは行ったことない…

みたいな感じですかね。

ちなみに、行くのに物怖じする場合は、まずは楽器持たずに下見にいってみましょう。
(まあボーカルやピアノやドラムの場合は、楽器がなくても弾かされちゃったりすることもありますけど…)

  1. まずはできる曲を1曲か2曲決めていきましょう。曲はまあジャムセッションでやりそうなベタな曲がよろしい。
  2. テーマとアドリブができる状態まで仕上げましょう。
  3. セッションホストには「初心者なのでこれしかできません」的な感じで伝えておきましょう。*1
  4. アドリブソロは、別に書き譜でもいいし、前もって先生と一緒に作った譜面でも構いません。可能であれば、譜面なしで吹けるところまでやってください。
  5. 始めるときには「よろしくお願いします」。演奏が終わったら「ありがとうございました」というようにしましょう。
  6. 今、どの部分を演奏しているのかをわかるようにしましょう(特にボーカルの方!楽器の人がソロをしている時間は「休憩」ではありません。)
  7. 自分が指向している構成に持っていくためのハンドサインやメロディーを理解しましょう。
  8. 自分の思惑から音楽が逸れた時のリカバリーを学習しましょう(Plan Bへの切り替え)


4.ソロを書いた譜面を置かない。
この辺りは見解がわかれるところです。
どうしても置きたければ置いて見ながら吹いてもいいとは思いますけど…
もしあなたが成長したら、かならず譜面なしでアドリブをする時期はきます。
で、書いてある譜面を読みながら演奏するのと、たとえ前もって決めたソロでも、譜面なしで演奏するのは、使っている脳の場所が全然違うんです。どうせすぐ譜面なしの状態に移行しますから…
ソロを譜面にしてそれを読みながら吹くのは、自転車で言えば「補助輪」つきのようなものです。どんなに上手く吹けていても、補助輪なしの状態とは異なります。拙くてもいいから、補助輪を外す努力をしましょう。アクセルを踏むのはそこからです。

5. 挨拶について。
これは初学者だけでなく、中級者になっても上級者になっても同じです。
挨拶はコミュニケーションの入り口として大事だと、僕は思います。です。

6-8.この辺りは曲の進行に対する話ですね。
セッションにて、一曲をやるときには、テーマ、アドリブ、アドリブの交替のタイミング、4 barsもしくは8bars、終わりのテーマからエンディング……なんとなく自分の中に、前もって予想した展開があると思います。(CDとか、音源と同じで構いませんがね)

しかし、ジャムセッションでは、すべてが自分の予想していた形で進むかどうかはわかりません。
特に他の人がいる場合、他の人のソロが入ることによって、サイズが変わってくる。
その場で構成が動的に変化するというのが、ジャズの即興性であったり、面白さだと思います。
ジャムセッションにおいてもっとも面白い部分だと私は思いますが、同時に一部の人には最も容認しがたい部分なのではないでしょうか。

クラシックや吹奏楽の形が決まった演奏というのが当たり前でそのコンセプトの延長線上でジャズを練習した方や、ボーカルの方は特にこういう事態には対応が苦手です。*2

でも、ジャムセッションには、この言語化されにくい部分に醍醐味がある。

こうしたことを踏まえて、他の人の演奏を聴いてみましょう。
他の人がどのように進行をコントロールしているか、そもそも曲をコントロールしている人は誰かを、探ってみましょう。
最初は全然わからないかもしれませんが、だんだん見えてくるものがあると思います

次の段階にいくために:

前述した通り、音楽の構成が、出たとこ勝負でどうなるかわからない所にジャムセッションの妙はあります。
他の人のやり方を見ながら、自分でも試行錯誤してください。
初心者であろうが、曲をもってきて、テーマを吹くのであれば、その人に曲をコントロールする権限があります。
(もちろん上手くコントロールできない状況であれば、誰かがコントロールすることになるでしょう)
おそるおそるだとは思いますが、やってみましょう。

確かに、最初は参加できる曲は少ないかもしれません。
しかし自分が持ってきた曲以外の曲に関しては、黒本やiReal Proでコード進行をみながら、どうやってアドリブするか、とか考えながら聴いてみましょう。
ジャムセッションに習熟するコツは、どれだけこうした無形の演奏者同士のコミュニケーションをキャッチできるかにあります。
そしてそれは、自分が参加している時はむしろ見えてこないですが、参加していない時にわかりやすいこともあります。
ほら、「岡目八目」って言葉があるじゃないですか。ね?

あとは、演奏技術的な話をしますと、

  • レパートリーを増やしましょう
  • いろいろなリズムパターン(4 beat, Swing, Bossa Nova, Latin, Waltz, Funk)に対応できるようにしましょう
  • 4 bars, 8 bars, chaseなどのジャズにおいていろいろある構成のパターンの選択肢を増やしましょう
  • リズムセクションはイントロを適切に導入し、フロントはそれにうまくのっかって、テーマに入れるようにしましょう。
  • 逆循・カデンツァなどの定番ネタを仕込んでおきましょう。

私の思うに、スタンダードブック(青本・黒本)というものは、ジャムセッションにもっていくためにあるのではなく、家でベタなスタンダードを片っ端から弾いてレパートリーを増やすためにあります。どんどん曲に親しんでください。
あと、個人的にはこの段階ではバラードを本番に持ち込むのは賛成しません。たまに「バラードはテンポがゆっくりだから簡単」とか思って、バラードをコールする初心者の方がいますが、バラードは一番難しいんです。
個人的な美学をいいますと、バラードはジャムセッション 90-120分ごとに一曲ずつくらいでいいと思いますし、その場にいるミュージシャンの中で最も上手い人の演奏を聴くコーナー、くらいに思ってください。「いつかはやりたいな、バラード」くらいに目標にしましょう。

*1:初心者対応してくれるセッションだったら、普通にウェルカムだと思います。一方、初心者お断り的なセッションであれば、この時点で邪険にされてしまうかも。それは結構つらいことですけれども、RPGでいうと、そのセッションは踏み込めば瞬殺されるダンジョンみたいなものです。親切な村人の忠告くらいに思って、その日はリスナーに徹しましょう。

*2:ボーカルの方の中には、歌以外のパートをカラオケ音源のように考えている人もいて、自分の思っていた形にならない場合に激怒される人も中にはいます。

セッションのバランシングとマネジメント:

f:id:hanjukudoctor:20191228100409j:plain:w300
2019年、遥照山

ジャムセッションの進行にはいろいろな形態がある。

  1. マスター(ホスト)が管理して、メンバーをコールして参加するパターン。
  2. 参加表に名前・パート・やりたい曲とかを記入するパターン
  3. やりたいやつはステージに上がり、誰が決定権を持つわけではなく適当にセッションが続くパターン。

1.がもっとも秩序立っており、2.3.にいくにつれて混沌の度合いが増すことになる。

3.は例えば、軽音、ジャズ研の部活などで自然発生するセッションとか、特に形式を決めないセッションの原初状態だ。
 また、参加人数が少ない場合も、そんな感じになる。
対照的に1.はプロミュージシャンが仕切っていたり、有名なライブハウスの主催など。
 参加人数が多い場合、参加者の満足度を均てん化するためには、なんらかの管理をした方がよい。
 (やったもん勝ちになりがちだからだ)
特に、リズムセクションが同一楽器に複数いる場合は、組み合わせが偏らないよう、ある人だけ回数が多くなったりしないようマスターが腐心してメンバーの組み合わせを調整し、セッションに参加曲数をカウントしたりしている。

 曲の選択については、様々だ。
 参加者のレベルが高く、だいたいどんな曲でもできる場合は集まったあとでなんとなく決める。
 初心者でレパートリーが少ない方がいる場合は、その曲で優先的に加配する場合もある。
 曲が先に立つような場合もある。「Ipanemaやるんだけど、やりたい人!」みたいな形で募るような場合。

* * *

1.のようなしっかり管理されている場合は、リズムセクションも均等に順番がまわり、組み合わせも多彩で、結果的にバリエーションの豊かなサウンドを楽しむことができる。*1
まあしかし、1であろうが2であろうが3であろうが、リズムセクションに関していえば、各パート一人ずつしか参加できない。
だから絵面としてはそんなにかわらない。
きっちり管理すれば、公平で、満足度の均てん化が期待できるが、その程度だ。

一方、管理をきっちりするかしないかで、アウトカムが変わってくるのがフロントだ。

* * *

1. きっちり管理するセッションの場合は、大抵はフロント(ボーカル・ギターも含めて)は1〜3人まで。平均すると2人くらいだ。
逆に3.の管理しない状況では、フロント楽器が4,5人いれば、すべての曲で全員参加する、みたいな状況も起こりうるわけだ。
フロント楽器も、初心者でやる曲が限られていて2,3曲しか参加できないなら実害はない。
しかし、中級者で演りたいさかり。「あオレこれできるかも?」症候群で、できる曲はすべて参加する。
一歩も退かない、みたいな場合は、非常に暑苦しいサウンドになってしまう。
この「中級者、やりすぎ」パターン、しばしば出くわす。*2

* * *

フロントが四人いて、それぞれがソロをとって、ピアノ、ベースもソロをして、挙げ句の果てにはお定まりの4 barsもやって…みたいな構成の楽曲は、ダラダラ長いだけで、曲全体の起承転結を作りにくい。

公平にソロをとる、という観点では間違いないかもしれない。
リズムセクションの人間にしてみれば、楽曲単位での盛り上がりができないので、あまり面白くない。
また、聴き手目線で考えても、どの演奏も金太郎飴のようになるし、楽曲を通しての緊張感もなくなる。

リズムセクションはカラオケじゃないんだ」という苦言がリズムセクションから発せられる場合、
ただたんにフロント楽器が自分のソロしか考えていないようなソロがダラダラ続いたり、想定範囲以外のことをリズムがやるとフリーズしたり怒ったりするボーカルの演奏に付き合わされた時だ。

ある程度経験を積んで、ソロの中だけじゃなくて楽曲全体の構成を考える奏者には、こういうフロントソロが多い場合は、苦痛でしかない。
三人から五人くらいが、お互いの考えを汲み取って一つのサウンドに仕上げ、楽曲として完成度を高められる限界人数なのではないかと思う。

* * *

ただ、Bop黎明期には、ジャズクラブでの客向け演奏が終わったあと、深夜から明け方までプレイヤー同士がソロを対決していた(カッティング・エッジコンテスト)。
こういうシチュエーションでは5-6人、もしくはもっとたくさんのフロントプレイヤーが、次々とソロを演奏し、お互いの技を磨く。
一曲は数十分にもなったりした。
J.A.T.Pとかのレコードに往時の雰囲気は残っていたりもする。
だから、フロントが続々とソロを取るような形態はジャズの歴史にあるのだ。
不正解と断じることもできないのは、そういうことだ。
しかしBe-Bopはそういった構成美のなさが弱点で、Hard-Bopの台頭につれて、駆逐されることになったことを忘れてはいけない。

* * *

ジャムセッションのもう一つ大きな側面は、共演することによるコミュニケーションだ。
「同じ釜の飯」もしくは、インディアンのタバコのまわし吸いのように、同じ場を共有することによって打ち解ける。
そういう目的のためには、この「カッティング・エッジ形式」は有用だ。
なので、セッションの最後の曲は、
1.の管理されたセッションでも、最後は「大団円」って感じで、全員が参加し、構成美にはこだわらず「みんなで演奏」するセッションは多い。

セッション全体をアレンジする

聴き手も、プレイヤーも飽きがこないようにするためには、一曲一曲プレイヤーを変えつつ、楽曲のテンポ・長調短調、リズムパターンなども変えて、できるだけ与えられたカードで、可能な限りの多様性を生み出すことができれば、よいセッションであると言える*3
ライブと違って、セッションが唯一優れているところは、プレイヤーのカードの多様性がさらに多いことだ。
素材がいい=優れたプレイヤーが集まっている場合は、あまり考えなくてもいいかもしれない。多くのジャズプレイヤーは複数のスタイルを使いこなせるし、どんな曲だってこなせる。
曲の選択肢やプレイスタイルが限定される中級者の場合は、得意なジャンルを見極めてうまくマッチングしないといけない。
いずれにしろ、セッションに参加するプレイヤーの満足度を均てん化することが必要だ。
同時に聴き手の満足度も高めないといけない。
聴き手〜プレイヤー(上級者〜中級者〜初心者)すべてを満足させることは難しく、いくつかはトレードオフの関係にある。
そして、店の要求する優先度も、方針によって異なる*4
その辺りのバランスを取るのが、セッションのマネジメントの醍醐味と言えるだろう。

自然発生的に生まれた、3.のセッションにおいても、そういう視点で取り組んでみると、また違った気づきが得られるかもしれない。

*1:もちろんそこには功罪両方あって、リズムセクションには技量とは別に相性のようなものもあり、ピタッと噛み合う場合もあるし、惨憺たる結果に終わることもある

*2:私も昔そうだった。一歩も退かない状態だった。ある程度出来るようになってから、引き算を覚える。

*3:もちろんこれはライブでも言えることだ

*4:例えば初心者向けセッションであれば、初心者にはかなり配慮されることが要求されるが、逆に聴き手にとってはつまらないサウンドになる可能性はある。また中級者以上の方にとっての満足度もかなり下がるかもしれない。反対にIntroの様な店であれば、聴き手の満足度にも配慮されバランシングすることになる。来店している人がほとんどプレイヤーというスタジオセッションのような形態であれば聴き手の満足度は考慮しなくてよい。また仄聞するNYの本気のセッションは、公平に満足を分かち合うためではなく、勝ち残るためのセッションなので、初級者・中級者に満足度は分配されない。Winner Takes All。