半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

ビッグバンド勢一年生管楽器への「努力しないアドリブ法」その2

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2021, 広島

前回の続きです。

指分を書き出してみる

もともとのその曲の調(右下の方で「F長調」とか書かれているのがそれです)のドレミファソラシドはわかりますか?
わからなかったら、このJust Friendsだったら F△7とかかれているところで表れるスケールがそうです。

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fig. 4 トニックコード

これがその曲における基準と考えてください。トニックコードといったりもします。
図では二段目のF△7を示しましたが。たいてい曲の最後の最後らへんにトニックコードはでてきます。
*1

転調が少なく、調性がシンプルな曲については、「つかえる音」は、トニックコードとの指分(さしわけ)を考えると楽です。

例えば、fig. 3の「Bb-7」とかかれた部分ででてくるスケール、
fig.4 の「F△7」のスケールを比較してください。

違うところがありますね?
並んでいるスケールは出発点が違うのでちょっとわかりにくいですが、並べてみればわかります。

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fig.5 2つのコードから導かれるスケールの比較

ソロを作る時に、その場所では「おいしい音」をできるだけ入れてソロを作ると、それっぽくなります!
答えを書いてしまうと、Ab・Db・Ebの音ですね。この場所では、この音を吹いたほうが適合しているように聞こえがちだし、逆にいえば、F△7の、AとかDとかEの音を吹くと、ちょっと調子外れに聴こえるわけです。
最初はこの iReal proをみながら、おいしい音だけを抜き出してみて、メモしてみてもいいかもしれないですね。

以上説明終わり!
さあ!皆さんやってみましょう。
 最初は、ブルース( Bille's Bounceとか Cool Struttinとか Now's the Timeとか)や、比較的簡単な曲で、こういうことをやってみたらいかがでしょうか?
 ・Just Friends
 ・Blue Bossa
 ・Autumn Leaves
 ・Bye Bye Blackbird
 ・My Little Suede Shoes
 ・Work song
 あたりをまず見てみてください。
 なんかできそうな気がしてきませんか?
 最初は短めの曲の方がわかりやすいですよね。ブルースからはじめたらいいと思います。

理屈の前にやってみたほうが楽しいかもしんない

 従来のジャズの理論学習では「なぜこの場所でこういう音が「おいしいのか」」ということを説明してから実際に演奏する、としていたように思います。
 昔は僕もそう思ってた。
 だけど、最近の僕は「まずはやってみたらええやん」と思ってます。

 それがある程度馴染んだあとで、理屈を考えたほうが、しっくり理解できるような気がする。

 ジャズなんて実用のもんです。学問的に考えてもぴんと来ません。
 手を動かしてなんぼです。やってみないとわからない。

 ちょっとくらい間違ってもいいから、どんどんやってみたらええやん、と思う。
 iReal proは機械ですから、いらだちもしませんし、根気強く待ってくれます。
 試行錯誤ができるというのはいいことです。

 間違ってもいいからどんどんこなしていって、うまく行ったり行かなかったりしながら知識身につけた方が、楽しい。

 絵とかでもそうじゃないですか?
 最初下手くそでも毎日描いていたら、うまくなる。
 でも最初からうまくやろうと思ってやってても、うまくはならないのです。
 うまくなるには数こなすのが大事。

これは出発点

 もちろん、この付け焼き刃の知識で乗り切れるほどジャズは甘くはないのです。
 ここの書かれているスケール「だけ」では、巨匠の音源の三分の一も理解できないでしょう。

 このi Real Proの初期画面では一つのコードに対し一つのスケールしか表示されませんが、実際のソロでは、一つのコードに対してTPOにあわせて様々なスケールを選んでいます。
 もうちょっというと、そこに書かれているコードだけが正しいわけでもない。
 確信をもってコードを書き換えたりもします。

 フレージングには様々なアプローチがある。
 それは実に奥深く楽しいものなのですよ。

 ですが、実は上に書いてあるやり方だけで、五里霧中だったソロはある程度コード感のあるソロにすることができます。
 実際、ビッグバンド勢の30-40%くらいの人は、ここで止まっちゃっているんですよ。
 逆に言えば「出来る子」はジャズ研一年生の夏休みくらいまでにはこういうことをやっちゃっている。
 だから、もしこれがクリアできれば、2020年時点でのフルバン勢のアドリブ力で上位25%くらいに進むことができる。

 そこからの辛くも楽しい道は、また機会があればお伝えいたしましょう。
 でもとりあえず「何をやればいいか」というのが少し見えてきましたか?
 がんばってください!

*1:ちなみにみんなが最初に取り上げるブルースってやつは、トニックがI△7ではなくてI7なので、最初はとまどうかもしれません。