半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

トロンボーンのテクニック水準:

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ついこの間、2019年の時点のジャズトロンボーンの地平を改めて見渡してみた。

テクニック路線の人たちのテクニック、僕が以前に思っていたよりも著しく向上しているように思う。

* * *

昔は、スラスラ系といえば古くはUrbie Green、その後 Bill WatrousとかCarl Fontanaという人たちがレジェンドだったように思う。
(もちろんジャズのレジェンドといえば、Jay Jay Johnsonであり、Curtis Fullerであるのだが、この二人もテクニックは申し分ないのだが、テクニック自慢というと、どうしても上記の人たちが思い浮かぶ。)

Carl Fontana - "If I only had a Brain"
(いわゆるリスナー視点での評価はともかく、現代ジャズの前世代の中ではこの人がもっともわかりやすいテクニシャン、ということになります。ジェイジェイジョンソンのハードパンチャーぶりに比べると、音の重さはないけれども、華麗なジャブで敵を翻弄するイメージ)

僕が学生だったころ(1993~2000) Conrad Herwigがでてきた時は衝撃だった。
コンテンポラリーなジャズを主戦場としていたこともあるが、ソロを追いかけることさえも難しいのは彼が初めてだった。
トランスクライブさえ…できない。
新しい時代なんだよな…と思いながら、僕は一度社会人になり、トロンボーンから離れ、ピアノトリオとかを好んで聴くジャズリスナーになった。

Conrad Herwig 'I MeanYou' Trombone Solo Transcription


* * *

再びプレイヤーとしてトロンボーンを吹くようになったのは2008年ごろ。
見渡すと、ジャズトロンボニストの要求水準が上がっていることに気づいた。

スムース派の人たちの進化系、本当にうまい。
Marshall Gilkes, Michel Davis, Micheal Dease, Bob McChesney、Bart van Lier (オランダのトロンボニスト。私、この人モデルのK&H使ってます)など、べらぼうに上手い人がアホほどいる。


Bob McChesney "Look At Me"

youtubeでさがしてみると、Harry Watters、Nils Wogram...テクニック上手がボロボロでてくる。

Giant Steps | Harry Watters Performance
(もー…Giant Stepsとかって、やはりJohn Coltraneの時代にはテクニックの金字塔だったわけですが、それをTromboneで無理なくできちゃう時代なんだ…と思いました)

国内の若手ミュージシャンも軒並みテクニックの基本レベルが上がったように思う(うまくない人は淘汰されたのだろうか?。しかしもともとプロはうまかったのも事実)
今やレジェンドではある向井滋春氏は別格として、オールジャンルに顔が効く存在としては中川英二郎が君臨しているし、村田陽一、片岡雄三、中路英明…それにつぐ存在としては和田充明、駒野逸美、Voltzの人たち(まとめた笑)、それ以外にも沢山のプレイヤーがひしめいているが、昔の常識から比べて、テクニックのレベルは明らかに上がった。

もちろん、楽器の精度やテクニックの方法論の蓄積などもあるわけで、テクニックのレベルが上がるのは、ある種当然のことではある。
みんなレジェンドの演奏に憧れて練習するわけだし。

結果として、Carl Fontanaの時代は、あれがその時代のほぼ最高峰だったのに、今では、フレーズの速さ・細かさのレベルでいえば、日本でもプロとして身を立てるための必要条件、くらいのもんだ。

学生の時に、大体こんなもんでOKだろう、と思っていた技術レベルよりもはるか上のところでやりあっているのを見ると、まあ単純にくやしいよね。
自分としても何らかのテクニックの向上とフレージングの進化を頑張らんとなー、と思う。

自分など所詮アマチュアで、技術を磨いたところで、どこに行き着くわけでもないのだけれど、自己満足にすぎないけど。
だからこそ、自分のテクニックをもう一度練り直したいものです。