成長のロードマップ
アドリブフレーズの習得に際して:
ジャズのフレージングの勉強なんて、どの段階から自由に始めてもいいと思います。
しかし初学でおさえておくべきことを積み残して次の段階に進むと、遡ってもう一度やったり、効率がよくないのも確か。
成長の階段を順番に登ると、効率よく上達できるでしょう。
私が一番大事だと思うのは、好きなミュージシャンの演奏を聴いて、コピー(トランスクライブ)すること。
そのコピーした譜面をアナライズ=解析を行うこと。
それを練習し、自分のフレーズにする作業です。
そして、その背景にある方法論がわかれば「何をやっているのか」理解しやすい。
「理論」はそのためにある。
ある特定のフレーズの底流にある普遍性を説明するために理論は存在する。
* * *
「音楽理論」に関しては、大学や専門学校のジャズ専科にのカリキュラムが用意されていますね。
あれがもっとも効率よくGeneral Jazz Musicianになれる道だと思います。*1
ただジャズの理論体系って圧倒される量です。
これで食っていくんだ!という気概がなければ気圧される。
飛び込んでいくのに躊躇してしまう。
だから、軽い気持ちでアクセスできるものが必要かなーと思います。
僕がこんなBlog書いてるのも、それが理由です。
*2
僕はレッスンに通うことなく、本読んだりCDを聴いたりしてだんだんと上達していったクチです。
なので、音大生ではなく草の根ジャズマンの役に立つことを語りたいと思う。
* * *
まずは、わかっていた方がいいことをチェックリストのように列挙してみます。
学習の前提
コード(1):コードの構成音がわかる(Cm7と書いてあれば、C、Eb、G、Bbと構成音がすぐでてくる)
スケール(1):12のキーのドレミファソラシドを吹くことができる(できればメジャー・マイナーだが、メジャーだけでも構わない)
まずは出発点。
これができていない場合はさすがに武器が足りなさすぎる。
ここはちゃんと理解し、ドレミファは練習しましょう。
ま、トロンボーンの場合はこれさえも2ー3年かかっちゃう場合もある。
どうしても全てのキーがダメな場合はD-G-C-F-Bb-Eb-Abくらいのドレミファソラシドでもいい。
でもそれくらいはやっておこう。
関連:
Any Key… どこまで? - 半熟ドクターのジャズブログ
次のステップ:
コード(2):コード進行を追うことができる。
できれば、スタンダードの何曲かは、スタンダードブックなしで追えるようにしておく必要がある。
自分の「持ち曲」にしたいスタンダード曲は、紙にサラサラっとコード進行を書けるくらいは繰り返してください。
コード(3):コード進行の簡単な理解。
トーナリティー(調性)と、トニック・ドミナント・サブドミナントの関係性。ダイアトニック・コード、
ツーファイブ進行。
これだけわかっていれば、とりあえずよろしい。
コード進行の圧縮と展開については、以下のエントリーを参考にしてください。
コードの理解 その1:アベイラブル・ノートスケールの陥穽 - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その2:圧縮・展開について - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その3:コードを複雑にする理由 - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その4:ドミナント・モーション - 半熟ドクターのジャズブログ
コードの理解 その5:まとめ - 半熟ドクターのジャズブログ
スケール(2):該当するコード進行の部分で、メジャーマイナーのスケール(ドレミファソラシド)を選択することができる。
厳密には、これはスケールというよりはトーナリティーを示すことができる、ということだと思います。
これは私感ですが、スケール(アベイラブル・ノート・スケール)の理論体系は膨大すぎて、フロント楽器奏者の初学にはむかない。
特に金管楽器では。
メロディー(1):テーマのメロディーを吹くことができる。
テーマのメロディーをきちんと歌うことは、実はとても難しい、本質的なことなんですが、とりあえず、リードシートに書いてあるメロディーを吹くことができる、くらいの達成目標で考えてください。
実に簡単なことですが、これで、ジャズ初心者は卒業です。
ダイアトニックスケールが自由自在に出せたら、かなりのことは自前でできるようになるはず。
しかも、それなりに楽しくアドリブはできます。
中級者以降への道:
初級者にある項目、中級者以降の項目は別に、順を追う必要はありません。
大体、男の子はこっちの「必殺技」的な部分を先に覚えたがりますものですけれども。
ブルーノートスケールは、ステップアップというよりは、独立した特殊スケールです。
初期段階で習得することも多いのですが、一応ここに書いておきます。
ブルーノートについては、いまだに理論化が難しい領域です。
僕はお笑いにおける「一発ギャグ」みたいなもんだと思っています。
構築性などとは無縁な反面、破壊力も大きい。
発展はさせづらいのですが、しかし要所要所に入れると盛り上がるものでもある。
スケール(4):3大イキリスケールの習得:
3つのノンダイアトニック・スケール、すなわち1:オルタード、2:コンディミ、3:ホールトーンを理解し、使うことができる
「3大イキリスケール」という言葉、勝手に造語しました。が、これがもっとも伝わるとおもっています。
伸び盛りのジャズ狂い少年が必ず通る道です。
ダイアトニックのフレーズから脱出して、カラフルなフレージングをするには必須の部分ではないかと思う。
もっともBe-Bopっぽいエッセンスが得られる部分でもある。きっちりとやればいわゆるハードバップっぽい感じになるでしょう。
この部分がハードバップ中級者の一つの山場であると思います。
しかし逆にさらに後代のジャズを追求するのであれば、これでよしとせず、さらにフレージングを追求してゆく覚悟が必要だと思います。この段階で留まっているジャズオヤジは全国に結構いますけど、ここから抜け出せたらかっこいいなあ……
あとオルタードについてはあくまでオルタードスケールとして学習するパターンもありますが、僕は代理コードに変換してLyd 7thを吹くという考え方でやっています。
コンディミ事始 - 半熟ドクターのジャズブログ
スケール(5):メジャー・マイナーのペンタトニックスケールを自由自在に用いることができる
Jazz以外の音楽ではとても重要なアプローチです。大きなトーナリティーの中で大きなメロディーを作る。
ゆったりと、うっとりするようなメロディラインを作ること。
ビバップにあるようなコードの細分化だけやっていると、大きなメロディーメイクを忘れてしまいがちです。
しかし、コンテンポラリージャズでも、トライアドの瞬間的な移り変わりをフレーズに置き換えるには、ペンタは欠かせません。
細かい転調の繰り返しの中でペンタトニックをつなげば、例えばブレッカーブラザーズのような演奏になります。
コード(4):初歩のリハーモニゼーションを理解し、アドリブのフレージングの際に、リハモに基づいたアドリブを吹くことができる。
これも、応用していくと際限ありませんが、バークリーメソッドで、コードを大胆につけかえてゆくようなアプローチはともかく、まずは、半音上、のアプローチとか、ラインクリシェとか、セカンダリードミナントとかそういうレベルの書き換えから始めてみましょう。
私見ですが、フロント楽器のアドリブは、コードフィギュアから離れてフレージングをする必要性が高いと思っています。
リズム(1):リズムテンション(ポリリズミック・アプローチ)
楽器の能力が習熟していくにつれ、四分音符・八分音符、十六分音符とフレーズは細かく割れますが、それだけではだいたいかっこよくならない。三連符をうまくつかって、より多彩な表現が可能となります。すみません3拍5連とか、7連とかそういうの僕わかりませんけど。
コード(5)パッシング・ディミニッシュの処理を行うことができる、書いていないディミニッシュコードを挿入できる。
これもコード(4)に含まれることかもしれませんね。Dimishを上手に挟むことにより滑らかなフレージングもできます。
コード(6):Sus4コードに対し適切に演奏することができる。
メロディー(3):モチーフの展開(motivating)を理解し、フレージングができる。
* * *
まとめ
切り分けはあくまで恣意的なものです。
緩やかに非連続的に上達するものを無理やりインデックス化しました。
これが正解でもないし、この順番でやるべきでもない。
また、アンサンブルとか、楽曲に対する知識であるとか、ジャズの理論的な部分とか、もう少し追加するべき部分もあるように思います。
あと、コンテンポラリーなジャズには対応できていません。ピアノ・ギターのコード楽器にも対応していません。
結局これは、自分の考えの整理のようなものです。
多くのジャズの教則本に書いてあるインデックスは概ね似たようなものです。
自分なりに吹き方の話をする中で、一応俯瞰できるものとして、書いてみました。