半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

コードの理解 その4:ドミナント・モーション

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前回の続きです。
jazz-zammai.hatenablog.jp
はい。前回のおさらいですね。

  • Bop-Idiomでは、フレーズのとっかかりを作るために、コード・チェンジを増やします
  • 結果的にはコード進行が細かく複雑になります
  • Bop-Idiomにおいてはコード進行が細かく変化するほうがソロをとりやすい
  • 複雑に進行するコード進行を「コーナリング」するようにソロをとります

では、そのコーナリングというのが何かというと、これが、ジャズでよく言われる「ツー・ファイブ」とか、ドミナント・モーションというやつです。

ドミナント・モーションに関しては多くを説明しません。

セブンスコードは、増四度成分を含んでいるために不安定であり、それを解決させようという推進力があります。
あるセブンスコードに対して5度下のコードに落ち着こうとします。
つまり V7→I という進行が自然に生まれる。

この考え方を利用してやります。
曲の中にあるコード"X"(十じゃないですよ、エックスですよ)があるとして、それを無理矢理先ほどのⅠと考えてやりますと、そこから逆算してⅤ7というコードが浮かびます。このⅤ7のコードをコードXの前に持ってこれるんじゃねえか、と考えるわけですね。オチから逆算してボケを考える。

で、ツーファイブのツーことⅡm7ですが、これはドミナントモーションの延長です。Ⅱm7 - Ⅴ7 - Ⅰ のⅡm7はⅤ7に対しては5度の関係を有します。もちろん完全なドミナントほど強い力ではありませんが、Ⅱm7 - Ⅴ7 - Ⅰと自然に流れるわけですね。

Ⅱm7もⅤ7もⅠ(ルート)の調のダイアトニックコードであります。そういう意味でもⅡm7-Ⅴ7-Ⅰというのは非常にいろいろと都合がいいんです。多分、単純なⅤ7-Ⅰの流れよりもこのⅡm7を付けた方がいろいろなコード進行の処理としてもはるかに馴染みやすいんですね。
誰の仕業か知りませんが、うまいこと考えたものだと僕などはいつも思います。

で、このⅡm7 - Ⅴ7を、コードXの前に持ってくればいいんじゃねえの?ということで、ツーファイブという形になりました。

ちなみに着地点 Xのコードにもメジャー、マイナーがあります。結論だけ示しますが、着地がメジャーの場合には、Ⅱm7 - Ⅴ7 - Ⅰを、マイナーの場合にはⅡm7-5 - Ⅴ7 - Ⅰmを使う、と、とりあえずは記憶しておいて下さい(もちろんバリエーション、抜け道はいくつもあります)。

いずれにせよ、この

Ⅱm7 - Ⅴ7 - Ⅰ   (X) 
Ⅱm7-5 - Ⅴ7 - Ⅰm (X)

を、ある任意のコードXに対して、任意に使うことが出来る。
出来る……というか、使うわけです。

実例—ブルースの場合

ブルースに於いて、実例を示しましょう。

コードの理解 その2ではブルースのコードの「大きな流れ」を例として示しました。
jazz-zammai.hatenablog.jp


コードを単純化しても残っているコードの変わり目には大きな意味があります。
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ドミナント部である9,10小節目は、ジャズでは習慣的にⅡm7 - Ⅴ7を置くことになっています。
ここでは、Fを着地点とするⅡm7 - Ⅴ7ですからGm7-C7です。
まあ、これはいわゆる「ブルース」のコード進行では V7-IV7-I7(C7→Bb7→F7)となってますが、このへんはジャズっぽい癖くらいに思ってください。本質的には同じです*1

ドミナントの部位を、もとのものから変え、それでも残っているコードの重大な変わり目を緑の線で表しました。
4-5小節目、6-7小節目、8-9小節目、10-11小節目ですね。
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ところで、12-1小節目にも緑の線が入っています。これはなぜでしょう?
ワンコーラス終わり、頭に戻るわけですが、そうなると、11小節目~4小節目までトニックのFが6小節連続することになります。
あまり同じコードが続くのはソロしにくいので、ここでコーラスの頭にもどりますよ、というしるしを作ります。
頭のコードのきっかけを出すんですが、これをTurnbackといいます。

で、この緑の線の部分=コードの繋ぎ目をいじってみましょうか。

まずは5小節目。
4小節目はもともとFで、5小節目でSDのBbへ変化します。
この変化をうまく使うため、5小節目のBbを着地点として、Ⅱm7 - Ⅴ7を作ります。
Cm7-F7-Bbとなり、これを4小節目に置いてやるわけ。むにゅっと。

次に8小節目です。
DominantのGm7へ行く直前ですが、ここを、強引に、9小節目のGm7をルート=着地点となるツーファイブを考えてやります。
マイナーなので、Ⅱm7(-5) - Ⅴ7 - Ⅰmとなり、これをむにゅっとあてはめてやる。
いわば、ツーファイブを二階建てで重ねてやるわけですね。ちなみにこの二階建てはよく使う手法で「3-6-2-5」(さんろくにいごと、そのまま読みます)と呼んだりもします。

そして、最後に12-1のTurnback。
ここは、単純にFに帰ってくるII-Vということなので、Gm7-C7を置いてやります。
先ほどの3-6-2-5を中途半端に適用して、F-D7-Gm7-C7という進行で書かれることが多いです。
(実際に演奏する場合は相当のバリエーションがある)。

さて、ここで、最初にもどって、原型である単純なコード進行と、ジャズのコード進行とを比較してみましょう。

劇的ビフォアーアフター

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fib 1b-単純なコード進行
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fib 1a-ジャズでよくやるコード進行例

コードの圧縮/展開のかなりの部分がツーファイブ一つで説明できる事がわかりますでしょうか。

ま、もちろん現実にはツーファイブですべてのことが説明できるわけではありません。
若干の補足をしますと、
・2小節目のBb7:同じコードが続くのを回避するためにSDなどの弱いコード進行を入れて軽く変化を付けている(逆にいうと、バップではたかが3小節くらいの同一コードも耐えられないということです)
・6小節目のBdim:パッシングディミニッシュ。コードをスムーズに繋ぐために用いられるバリエーションの一つ。
 も付け加えて、完成*2ということになります。

しかし、ツーファイブをあたかも「万能調味料」のように使うだけで、ここまでコードを複雑にすることが出来る。
逆にツーファイブで装飾されているコード進行をはぎ取ってやれば、原曲の単純な楽曲構造を推測することができるわけです。

コードの変化の緩衝材

前回コード進行を車のコーナリングに例えました。

直線→コーナー→直線というのがあったら、直線は直線、コーナーはコーナーと走るわけではありませんね。
手前の直線の終わりでは、十分に減速して、コーナリングのラインをとります。
クリッピングポイントについて、ベストのラインを取り、コーナーの出口が見えたらアクセルを開けます。
これら一連の動作は、すべて、コーナーの出口を抜けた直線の為の予備動作と考えていいはずです。
一連の動作は、すべてコーナーの出口、そしてその次に待っている直線のために逆算されて行われる。

ツーファイブも、そんなもんだと思って下さい。
ツー、ファイブ、ワン、すべてが独立したパーツと考えるのではなく、直線と直線の間のコーナーのようなものであると。
すべては一連のものとして繋がっています。
ツーファイブ・ワンというのは単独で存在しているのではなく、コードとコードの変わり目を「ならす」ためにあると思えばいい。
コードとコードをそのまま並べたら鋭角的な「角」があらわれるわけですが、そういう鋭角に、丸みをつけるというか、そんなイメージ。

*1:ま、これを本質的に同じと考えられるのにも経験は必要にはなってきます

*2:念のためにいいますと、これはあくまで一例にすぎない。その意味で「完成」というと語弊があります。スタンダードブックには数々のブルースが収載されていますが、それぞれコード進行は千差万別ですし、記載されているコードが「正解」というわけでもありません。