半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

どの曲からはじめる? その3:調性

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その1:どの曲から始める? その1 初学者の場合 - 半熟ドクターのジャズブログ
その2:どの曲を始めるべきか? その2 レパートリーを増やす - 半熟ドクターのジャズブログ
の続きです。

トーナリティ−(調性)

大多数の人は、アドリブを習得する際に、

  1. 大まかにトーナリティー(調性)に沿ったフレーズを吹くレベル。
  2. コードチェンジを意識した、Bop-idiomに沿ってフレーズを吹くレベル。
  3. Modal interchange、Diatonic/non-diatonicを含むAvailable note scale、Upper structure triadなどを意識してフレーズを吹くレベル。
  4. InsideとOutsideを自由に切り替えて自由度の高いフレージングを行うレベル。

 という段階をふんで発展してゆくのではないかと思います。

 もちろんこの上達の過程にはいろいろなバリエーションがありえます。
 楽器の特性、個人の特性によってもかなり違います。

 たとえばギター・ベースについては演奏において調性の制限が少ない、つまり調性の切り替えに対する耐性が強い楽器です。
 それ以外の楽器は調性が変わる毎にかなり練習を必要とする。ピアノもしかり。ただしピアノは可視化しやすい点で有利です。
 一般に管楽器は、調性の変化に弱く、トーナリティーの呪縛から離れるのは容易ではありません。

 また、相対音感に優れている人は、ほとんど何の苦労もなく1.がこなせることもあります。

 ジャンルによる傾向もあります。ファンクやフュージョンを主戦場にする場合は2はあまり意識しないでしょう(そもそもバップじゃないし)。
 3.と4.にはいくつかの先鋭的なプレイスタイルが含まれますが、理論化されていないものもあり、様式美として定式化されていない部分を含みます。非常におもしろい領域。そう守破離でいえば離に属する領域と思ってもらってもいいでしょう。

キーを拡大する。

 調性の呪縛の大きい楽器の場合、初学者の方は別のキーの曲をやるのは大変です。
 (この項に関してはギターの方にはあてはまらない部分が多いかもしれません。金管を想定して書いています。)

 初期の段階では、管楽器の方はたとえばFのキーとか吹きやすいと思いますね。サックスはわかりませんが、
 金管楽器ではFは非常に吹きやすい。ドレミファソラシドも、ちょうど吹きやすい音域に存在しています。

 Fのキーでアドリブを練習して、十分できるようになったら、その後他のキーに進むというのもあるけど、ある程度吹けたら、そんなに完成度が高くなくても、他のキーへ積極的に進出することを考えた方がいいです。
 やりづらいものはやりたくないものですから、無理矢理にでも拡張していった方がいいですね。
 F、C、Bbあたりをこなした後、Eb、G、Abまではレパートリーに入れておくのが無難です*1

 アマチュアだったらこの段階で止まっている人も多くて、Db、Gb、Dまでやればもう上等な部類です。
 残るB, E, Aはジャズでは苦手とする人結構多いですよね。

 本当は全部のキーをなめらかに、こともなさげに吹けるのが理想です。ですが、それに支払う代償は大きく、利はあまり大きくはありません。
 Any keyでフレーズが繰り出せることには、大きな意味があるのですが、
 実際錬成していくのはかなり大変ではあります。

 あ、マイナーは F→Dmとか、読み替えてくださいね。

*1:ジャズ研の2回生・3回生レベルで、Fの曲はなんとなくなんとかできているけど他のキーだと嘘ばっかり、みたいな人はたまにいます。そういう若者をみていると、好き嫌いなく人参やピーマンも食べてくださいね…とお母さんのような気持ちになる。