半熟ドクターのジャズブログ

流浪のセッショントロンボニストが日々感じたこと

記譜について その3

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島根の病院に赴任していた時の官舎の庭です。2000年撮影。

問い:私はトロンボーンなんですが、アドリブのコピーの時の記譜のコツ、ありますか?

楽譜を書く必要に迫られるのは次のような場合です。

  • レコード・テープ、CD/MDなどから耳に聴いたテーマやアドリブ譜を採譜する場合(一般にアドリブの「耳コピー」と呼称したりします。)
  • テーマ、コードを(本番用に)記譜する場合=リードシート
  • アレンジ(編曲)を行う場合

リードシートを書く場合の注意はすでに その1,その2で述べました。
記譜について: - 半熟ドクターのジャズブログ
記譜について その2 - 半熟ドクターのジャズブログ

では、コピーとか(いわゆるTranscribeですね)アドリブソロは、どう書くのが望ましいでしょうか?
すべての楽器の人達に語る言葉は、僕にはありませんので、一応トロンボーン限定の話とさせてください。

なにに書くか?(用紙の問題)

よく使うのは、

  1. B6版カード式リングノート
  2. B5版ルーズリーフ
  3. B5版ノート
  4. A4もしくはA3変形の譜面(正調)

B5ルーズリーフもしくはB5ノートの良いところはなんと言っても安いこと。
下書きやコピー譜などに大活躍です。
しかし、致命的な弱点もいくつかあります。

  • 視認性が悪い。5線のサイズがちいさいので本番で演奏する場合に譜面が読めないということがまま起こります。
  • 線と5線の間が狭すぎるので上にコードを書き入れるスペースに苦労します。Jazzというジャンルではコードを併記する機会が圧倒的に多い。その点ではこの楽譜は向いていません。音符の羅列なら別に問題ありませんが。
  • 音域の問題。トロンボーンの場合ソロは高音が多い。ヘ音記号で書く場合コピー譜は音符が5線よりも突き出ていることが殆どです。つまり、音符、コード共に「線と線の間のスペース」に書き込みするわけで、非常に読みづらいものになってしまいます。

ちなみにリングノートにしろノートにしろ、並べなおしたりできないものは結構不便ではあります。ルーズリーフみたいに単体で使えるもののほうがいい。

A4変形版は良質紙で、大きくて、読みやすい楽譜です。
いろいろな段数が発売されていますが、Jazzでは前述したようにコードを併記する必要性がありますので、6-10段のものがよいでしょう。
コスト面では非常に分が悪いです。(5枚入りで400-500円くらいしただろうか。)

このA4変形版の譜面(売り譜とか)の欠点は、コピー機にかけて複写しづらいことです。
どうしても少しはみ出してしまう。
これはむしろコピーしにくいようにこの規格が未だに流通しているのだとか。
写譜屋というか、音楽業界の既得権益保護なんでしょうかね。

なので、僕はPDFファイルで白紙五線紙をプリントアウトして使っています。Googleで「五線紙」で探せばあります。
テーマの長さにしたがって6段〜12段まで使い分けています。

この方式の唯一の弱点は、裏がないこと。
両面印刷すればいいのかもしれませんが、どうしてもこの点でルーズリーフには劣ります。

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こういうやつですね
B6式のリングノート式譜面は、譜面の京大式カードのようなものです。ベースの方が、自前のリードシートをこれで持ち歩くのをよく目にしますね。多分メロディーとコードネームまで併記する場合、このスペースには収まらないからかもしれません。
これはフロント楽器としては特にオススメはしません。
また、多分40歳以降にはキツイ。老眼で。

結論:

  • 基本的にはB5の安いやつでいい。(コピー譜、もしくはアレンジ)
  • 外で吹く、お店で吹く場合のリードシートはA4版を使った方が楽チン。

しかし、これを併用する場合二つのファイルを持ち運びすることになって面倒です*1
スタンダードのリードシートをせっせとB5版のルーズリーフに書き写す努力は報われないことが多いので推奨しません。

どのように書くか?(記譜法の問題:ただしトロンボーン限定)

もし、B5版の5線紙に記入するならば、前述した様に、トロンボーンの譜面はヘ音記号で高音部が上にはみ出します。その結果
・書きにくいし、読みにくい。
・コードを併記する場合も音符とぶつかってますます読みにくい
という問題点があります。この解決にはどうすればよいでしょうか?
一段あけて書く。一ページ6段しか書けませんが、まずまず実践的なやり方です。こうするとソロ譜、コード両方とも見やすく書けますし、高い音も無理がありません。しかし、歌もの32小節でさえ1コーラスが一ページに収まらないのは少し不便でしょう。ちょっと間延びしすぎる印象です。
全部[...8vaとつけて一オクターブ下に記譜する。こうすれば音符が丁度いい位置に沈むでしょう。一般的なト音記号の譜面に近い形で読むことが出来ます。
しかし、僕はこれをしたことがありません。理由はヘ音記号の下の方の音を読む訓練をしていないからです。(笑)
いっそト音で書く(この場合見やすさ、書きやすさを考えると実音よりも一オクターブ高い記譜が妥当と思います)。Tpのコピーは僕もト音で書いてます。
ハ音で書く。これは一部の人間にしか読めないのであまりすすめられません。
2番目、3番目の方法が比較的よさそうですが、いずれも実音からオクターブずれてしまう、というのが少し不満なんです。
他の楽器の人、またアレンジャーにわかりにくいですから。普遍性を失ってしまうのはやはりあまり良くない。

僕はトランペットのコピーはト音で(in C)、トロンボーンのコピーは上にいっぱい線が出た音符で仕方なく書いています。ま、これだとぱっと見たときにどっちの譜面だかすぐに区別がつきますし。

調について

幸い、トロンボーンはin Cの楽譜を読むようになっているので、この点では考えなくて済みます。
サックス、トランペットなどではこれに関して非常に議論の余地があると思います。

ピアノに合わせてin Cにするか、自分の楽器なりの記譜を続けるか。
理論の習得なども変化してくる重要な問題だと思います。
 一般的に、吹奏楽/オーケストラ等で楽器の基礎訓練を十全にしている経験者は、今までの遺産を引きずって楽器の原調で考えることが多いですね。
初心者で始める場合、(しかもピアノの経験はあったりする場合)、あっさりとin Cをメインにした方がいいかもしれませんね。
そうなるとビッグバンドの譜面が吹きづらくて、それはそれで困るのですが。

なおかつ困るのがコードネームの併記です。
知人のトランペッターで、楽譜はin Bbで読み書きし、しかしコードネームはin Bbに移調せず、in Cのコードを記入している人がいました。これはおそらくスタンダードブックがin Cであるが故にこのような発達をしたんだと思うけれども、実際頭の中はかなり大変なことになっているような気もします。

しかし、出版譜によくある、コードネームを移調するスタイルも、あれはあれで疑問が残ります。ルート音である実音が変わってしまうのは、ちょっといいのかと思うところもある。実音は絶対的なもんですからね。例えば、in CでCはドで、in Bbではレです。しかし、Cm7は、in BbではDm7……にしていいものかどうかと思ったりもします。ローマ字表記ならいいと思うんですけれども。

2019年現在:

上記の内容は、10年前にまとめたテキストでした。
実は2019年現在、譜面のほとんどは、A4版で管理しています。
ほとんどがリードシートなんですけれども、手書きで書いた譜面もスキャンしてEvernoteに保存しています。
今度iPad Air 2から、iPad proに買い換えようと思っていますが、トランスクライブの譜面なども、Apple Pencilで書いたらいいんじゃないかな?と思っています。これは試してみてよければまたレポートしますね。

アレンジに関しては、iPadおよびMac版のNotionを使って管理するようになりました。サックス・トランペットの人に対して転調ができるのが大きいですね。また、アレンジものは繰り返しや転調で、書き写しなおすというのが多いので、コンピュータ化はかなり省力化できると思います。

*1:社会人になりセッションやライブに行くだけになりますと、A4のファイルを持ち歩くだけになってしまいました